ガイドヘルパー(移動介護従事者)という仕事 〜社会参加を支える重要な役割〜

ガイドヘルパー(移動介護従事者)という仕事 〜社会参加を支える重要な役割〜


高齢化社会が加速する現代において、介護・福祉サービスへのニーズはますます高まっています。その中でガイドヘルパーは、障害のある方の社会参加を支える重要な役割を担い、人々の自立と社会参加を促進する力強い存在です。
本記事では、ガイドヘルパーの仕事内容、資格取得、現状と課題、そして将来展望について詳しく解説していきます。
ガイドヘルパーは、他の支援サービスとは異なります。利用者のニーズに合わせて柔軟に対応できる点、利用者とコミュニケーションを図りながら移動をサポートできる点で、独自の価値を提供している仕事です。

ガイドヘルパーとは?

ガイドヘルパーとは、正式には移動介護従事者と呼ばれ、障害のある方が安全に外出できるよう支援する専門職です。視覚障害知的障害精神障害全身性障害など、さまざまな障害のある方が利用対象です。
移動のサポートだけでなく、外出先での代読や代筆、食事や排泄の介助など、利用者のニーズに合わせて幅広い支援を行います。時には利用者の話し相手となり、心の支えとなる場合もあります。
ガイドヘルパーの必要性は、障害のある方の社会参加を促進し、生活の質(QOL)を向上させる上でとても重要です。障害のある方が、1人では難しい外出をサポートすることで、社会との繋がりを維持し、豊かな生活を送る手助けとなります。

ガイドヘルパーの仕事内容

ガイドヘルパーの仕事内容は、利用者の障害特性やニーズによって大きく異なります。主な仕事内容は以下の通りです。

  • 同行援護従業者:視覚障害のある方の外出を支援。移動のサポート、情報提供、代読・代筆などを行う。
  • 行動援護従業者:知的障害や精神障害のある方の外出を支援。移動のサポートに加え、コミュニケーション支援や行動の安全確保などを行う。
  • 全身性障害者ガイドヘルパー:主に車椅子を利用する方の外出を支援。車椅子の操作、移乗介助、移動のサポートなどを行う。

それぞれの仕事内容において、ガイドヘルパーは以下の業務を行います。

  • 移動のサポート:歩行の介助、車椅子の操作、公共交通機関の利用など、安全な移動を支援。
  • 外出先での支援:代読、代筆、食事やトイレの介助、金銭の管理、必要な情報の提供などを行う。
  • コミュニケーション:利用者の気持ちに寄り添い、安心感を与えるコミュニケーションを図る。
  • 状況判断と対応:天候の変化や突発的な出来事など、状況に応じて臨機応変に対応。

ガイドヘルパーは利用者の自立を支援し、社会参加を促進するために、それぞれの状況に合わせてきめ細やかなサポートを提供することが求められます。

ガイドヘルパーになるには?

ガイドヘルパーになるには、以下のステップを踏む必要があります。

1.必要な資格の取得

ガイドヘルパーとして働くためには、都道府県が実施する移動支援従事者養成研修を修了する必要があります。

2.研修プログラムを受講

研修内容は、障害の理解、移動介助の基礎知識、コミュニケーション技術、実習などから構成されています。研修は介護の専門学校や社会福祉協議会などで受講可能です。また、研修によっては、費用の一部または全額が助成される場合もあります。

研修名 対象者 概要
同行援護従業者養成研修 視覚障害者 視覚障害者福祉の制度とサービス、同行援護の基礎知識、情報支援と情報提供、移動支援技術などを学ぶ。
行動援護従業者養成研修 知的障害者・精神障害者 障害の理解、障害者(児)の心理、移動介助の基礎知識、コミュニケーション実習、外出介助実習などを行う。
全身性障害者ガイドヘルパー養成研修 全身性障害者 障害の理解、車いすの介助方法、移動支援、外出時の更衣介助などを学ぶ。

3.就職

研修修了後、ガイドヘルパーとして働くためには、訪問介護事業所や障害者支援施設などに就職する、または市区町村のガイドヘルパー登録名簿に登録する方法があります。登録ヘルパーとして働く場合は、自分の都合に合わせて、パートタイムで働くこともできます。
ガイドヘルパーは、介護福祉士などの資格を取得すれば、サービス提供責任者など、キャリアアップを目指すことも可能です。

ガイドヘルパーの現状と課題


ガイドヘルパーの需要は、高齢化社会の進展とともに増加しています。しかし、現状ではガイドヘルパー不足が深刻化しており、利用者のニーズに十分に対応できないケースも少なくありません。
必要な時にサービスを受けられなかったり、希望の地域に事業所がなかったりする場合は深刻です。家族に頼ったり、タクシーを利用したり、場合によっては外出自体を諦めざるを得ない状況も生まれています。
ガイドヘルパー不足の要因としては、以下の点が挙げられます。

低賃金・不安定な収入

ガイドヘルパーの多くは非常勤で、時給も低い傾向にあります。事業所の収入が少ないため時給が安く、拘束時間に対して報酬が支払われないケースや、利用者側の事情でサービス提供時間が短縮されるケースもあります。
また外出というサービスの特性上、利用は不定期になりがちで、急なキャンセルも多いです。そのため、ガイドヘルパーにとって安定した収入を得ることが難しく、生活していく上での不安定要素となっています。

資格取得の費用負担

研修受講料が、経済的な負担となる場合があります。研修費用は、運営主体によって異なりますが、1万円から6万円程度の講座が一般的です。副業や余暇の時間に働くための資格としては、費用面でハードルが高いと感じてしまう人もいるかもしれません。

仕事の負担感

精神的・肉体的負担が大きく、責任も重い仕事であるため、離職率が高いという現状があります。利用者の方によって業務量が変わることもあり、長時間労働になる場合もあります。
移動中や外出先では、常に周囲に気を配り、利用者の安全確保が必要です。また、利用者の状況や要望に合わせて臨機応変に対応しなければならず、時には過剰な要求をされる場合もあります。
利用者と1対1で長時間関わるため、精神的な負担も大きくなりやすいです。これらの負担感の高さが、ガイドヘルパー不足の一因となっています。

認知度の低さ

ガイドヘルパーという仕事内容や、重要性が広く知られていないことも、人材不足につながっています。
ガイドヘルパーの仕事は移動のサポートだけでなく、利用者の社会参加を促進し、QOLを向上させるという重要な役割を担っています。しかし、多くの人にとって、ガイドヘルパーの仕事内容は具体的にイメージしにくく、その重要性も十分に理解されていないのが現状です。
認知度が低いことで、ガイドヘルパーという仕事に興味を持つ人が少なくなり、人材不足に拍車をかけています。

高齢化社会におけるガイドヘルパーの役割

高齢化社会が進むにつれて、高齢者の利用も増加しています。高齢者は身体機能の低下や病気などにより外出が困難になるケースが増加するため、ガイドヘルパーのサポートは高齢者の社会参加や健康寿命の延伸に大きく貢献すると考えられます。
ガイドヘルパーの仕事は、高齢者の方々にとっても、単なる移動の支援だけではありません。ガイドヘルパーとの会話や交流を通して、高齢者の方々は孤独感を解消し、心身の健康を維持することができます。
また、認知症の方への支援も重要な役割です。認知症の方は判断力や記憶力などが低下するため、外出時に迷子になったり、危険な目に遭ったりする可能性があります。ガイドヘルパーは、認知症の方の安全を確保しながら、外出を支援することで、生活の質の維持や認知症の進行抑制にもつながると期待されています。

まとめ

ガイドヘルパーは、障害のある方の社会参加を支える、やりがいのある仕事です。高齢化社会が進む中で、その重要性はますます高まっています。
ガイドヘルパー不足という課題を克服し、より質の高いサービスを提供できるよう、待遇改善や人材育成などの取り組みが求められています。ガイドヘルパーの活躍は、障害のある方が地域で安心して暮らし、社会に積極的に参加できるインクルーシブな社会の実現に不可欠です。

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