近年、障害者が地域で暮らす選択肢のひとつとして、グループホームが注目されています。
障害者が自立して暮らすためのステップとなるグループホーム。
しかし、グループホームの実態がなかなかわからず、どんな場所なのか、入居するとどんな生活になるのか、疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
本記事では、2つのグループホームのタイプ、「集団生活型」と「マンション型」の生活と実態、入居までの流れについて解説していきます。
グループホームとは?
グループホームとは、障害のある方が地域の中で支援を受けながら、自立した生活を送るための住まいのことです。
完全な一人暮らしはまだ不安だけれど、少しずつ自立して生活してみたいという人が対象になります。
「集団生活型」と「マンション型」のグループホームがありますが、どちらにも福祉の職員がいて、障害のある方が生活するうえで必要なことをサポートしてくれます。
グループホームは、住宅街にある一軒家やアパートを使って運営されることが多いので、外から見ると一般の家と変わらない雰囲気です。
グループホームを利用して地域での自立した生活に自信をつけていく、といったイメージを持っていただけると良いでしょう。
グループホームへの入居までの流れ
グル-プホームの入居の流れは、
「①相談→②見学・体験入所→③計画案作り→④契約→⑤入居」
となります。
具体的には、以下のようになります。
①相談
グループホームに入居したいと思ったら、まず市区町村の障害福祉課や相談支援事業所に相談します。
地域にどのようなグループホームがあるのか知りたいと伝えれば、あなたの希望や状況に合いそうなグループホームの案内をしてもらえます。
②見学・体験利用
候補のグループホームがあれば、ぜひ見学・体験利用をしてみましょう。
ホームページやパンフレットだけでは伝わりにくいような
・建物や部屋の雰囲気
・職員や利用者の雰囲気
・食事や生活の流れ
などが実際にわかります。
見学の段階で、各グループホームで費用なども異なる場合があるため、質問があれば聞いておきましょう。
③利用計画案作り
あなたがグループホームの入居を希望する場合は、相談支援専門員に「サービス等利用計画」という書類を作ってもらい、市区町村の役所に出してもらう必要があります。
相談支援専門員に「あなたがどんなサポートを受けたいか」「どんな生活を送りたいか」などを整理してもらい、それを役所に伝えてもらいます。
④契約・入居準備
入居が決まったら、グループホーム側とあなたが契約を結びます。
契約書、利用の規則、家賃や食費などの費用について、グループホーム側の説明を受け、あなたが納得した上で署名をします。
⑤入居
契約が終われば、グループホームに入居できます。
あなたは部屋を借り、職員のサポートを受けられます。
①から⑤までの期間は人によります。
1~2ヶ月程度の人もいれば、半年以上かけてじっくり入居まで準備する人もいます。
日常生活の実態-集団生活型グループホームの場合-

集団生活型のグループホームは、個室はありますが、食堂やリビング、洗面所、お風呂、トイレは共同で使います。
一軒家の各部屋に利用者が住み、それ以外は共有スペースになっているイメージです。
①食事・日常生活について
朝起きる時間は利用者によって多少ずれることはありますが、食事は食堂などで一緒にとることが多いです。
食事は職員が作ることもあれば、利用者と一緒に作ることもあります。
食事の後はそれぞれ利用者が自室で過ごしたり、リビングで過ごしたり、作業所などに出かけたりします。
帰宅後は交代で入浴や洗濯をし、ルールを守りながら生活しています。
晩ご飯を食べ、服薬をし、リビングで過ごしたり自室に戻ったりし、決められた時間までは活動することができます。
②職員のサポート
職員は日勤・夜勤と交代で常駐しています。
服薬管理、金銭管理、健康チェックも職員が行い、体調不良やトラブルがあるときも対応してくれます。
③利用者同士の交流
利用者は集団生活をしているので、利用者同士のかかわりは多いです。
中にはイベントを行うグループホームもあり、家族的な雰囲気があります。
④集団生活型の良い点と難しい点
集団生活型の良い点は、いつでも利用者がいるので孤独にならない点、いざというときに仲間と助け合える点が挙げられます。
ほかの人たちがそばにいたり、職員が常駐していることで、生活リズムが安定しやすい点も挙げられます。
一方、集団生活型の難しい点は、人づきあいが苦手な人や他人の様子に過敏な人だとストレスに感じることもある点、ルールや集団行動が苦手な人には窮屈さを感じる点が挙げられます。
日常生活の実態-マンション型グループホームの場合-

マンション型のグループホームでは、利用者はワンルームやアパートの一室で生活します。
それぞれの部屋は区切られており、職員も常駐していません。
①食事・日常生活について
食事は各自で自炊したり、配食サービスを利用したりしています。
洗濯、入浴、トイレは各部屋にあり、自室で過ごすことが多いです。
集団生活型に比べると比較的自立度の高い人が多く、食事を済ませて作業所や職場に通っている人が多いです。
②職員のサポート
職員は別室にいたり、巡回したりして、必要なときに利用者をサポートします。
緊急時には利用者から職員に連絡し、必要に応じて職員が対応するというしくみです。
③利用者の交流
利用者同士のかかわりは少なめで、プライバシーは守られやすいです。
自分のペースで生活したい人、人づきあいが苦手な人には向いている環境と言えます。
④マンション型グループホームの良い点と難しい点
マンション型グループホームの良い点は、自由度が高く、プライバシーが比較的守られ、自分のライフスタイルを保てる点が挙げられます。
難しい点としては、ある程度自分で生活管理を行う必要があるため、金銭、食事、衛生面などの自己管理が苦手な人には負担に感じることがある点が挙げられます。
また、孤独を感じやすい人もマンション型グループホームは難しいかもしれません。
グループホームで暮らすための費用
それでは、グループホームに入居すると、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
地域や築年数、各グループホームによって差がありますが、目安としてお伝えします。
①家賃
月2~4万円程度
建物の立地や築年数によっても変わります。
また、生活保護の人、「特別障害者手当」「公的な家賃補助」などが利用できる人は、実際の自己負担がさらに軽くなります。
②光熱費
月5千円~1万円程度
集団生活型グループホームでは「定額制」でまとめて請求されることもあります。
③食費
月1万5千円~3万円程度
朝夕2食出してくれるグループホームもあれば、3食つきのところもあります。
マンション型では、自炊のしかたによってはこれより食費が安くおさまる人もいます。
④日用品費、共益費
月数千円~1万円程度
トイレットペーパーや洗剤など、共用部分で使うものは利用者で分担して負担します。
⑤その他
原則敷金・礼金はありませんが、入居準備金(数千円~数万円)や、布団・家具を買うお金が必要なこともあります。
費用内訳はグループホームによって異なる部分があるので、見学時に必ず確認しましょう。
また、障害基礎年金(1・2級)をもらっている人、生活保護を受けている人は、制度を利用して自己負担をおさえられることが多いです。
反対に、利用者自身が課税対象になっていると、これより費用が高くなる場合もあります。
まとめ
障害者が地域のグループホームで暮らすことは、自立への第一歩として大きな意味を持ちます。
親御さんも、今後のことを考えたときに子どもが自立できる道があると安心ですよね。
今回はグループホームの生活と実態と、入居までの流れを解説させていただきました。
ぜひ障害者自身の性格や特性に合わせて、より過ごしやすいグループホームを検討してみてください。
執筆者プロフィール

臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士。医療・保健、教育、福祉の現場を経て、現在は就労継続支援B型事業所のサービス管理責任者として勤務。同時に「あいオンラインカウンセリングルーム」を立ち上げる(https://www.eye1234.com/)。
商業出版「手を抜いたって、休んだって、大丈夫。」(大和出版)のほか、kindle16冊(いずれもeye(あい)名義)など著書多数。また様々なメディアにてWebライティングを多数行う。発達障害のある夫と、子ども2人の4人家庭。