「WISC検査ってどんな検査?」
「WISC検査をすると何がわかるの?」
「費用はどれくらいかかる?」
と、疑問や不安に思っている方は多いでしょう。
WISC検査は、児童を対象とした「ウェクスラー式知能検査」の1つです。WISC検査を受けると、子どもの得意・不得意が分かり発達の凸凹を知ることができます。そのため、子どもの特性に応じた支援につなげられます。
この記事では、WISCの検査方法や費用、WISC検査で把握できることについて解説していきます。WISC検査を検討している方は参考にしてみてください。
WISCとは?
WISC(ウィスク)検査は、「ウェクスラー式知能検査」の1つで、5歳〜16歳11か月の児童を対象とした知能検査です。アメリカの心理学者ウェクスラーが開発した検査で70年以上の歴史があり、世界中で広く使用されています。
・WPPSI(ウィプシ):幼児が対象(2歳6か月~7歳3か月)
・WISC(ウィスク):児童が対象(5歳0ヶ月~16歳11か月)
・WAIS(ウェイス):成人が対象(16歳~90歳11ヶ月)
WISC検査は、発達障害が疑われる児童生徒の教育的判定や診断において重要な検査の1つとして広く使われています。ただし、WISC検査はあくまで知能検査であり、発達障害かどうかを診断できる検査ではありません。発達障害があるかどうかは医師が総合的に見て判断します。
検査は、公認心理師などの資格を持つ専門家と検査者の1対1で行われます。所要時間は60~90分程度です。
WISCの検査方法

WISC検査は、2022年2月に最新版のWISC-Ⅴに改訂されました。従来のWISC-Ⅳとの大きな違いは、主要指標が4つから5つに変更されたことです。WISC-Ⅳにあった知覚推理がなくなり、WISC-Ⅴでは視空間と流動性推理に細かく分けられています。改訂によりWISC-V検査では、より具体的なデータがとれるようになりました。
WISC-Ⅴ検査の主要指標は以下の5つです。
・言語理解
・流動性推理
・視空間
・ワーキングメモリ
・処理速度
全検査IQと5つの主要指標について見ていきましょう。
全検査IQ
子どもの全般的な認知能力を示します。全検査IQ(FSIQ)は、WISC検査の主要指標である言語理解、流動性推理、視空間、ワーキングメモリ、処理速度の検査の合計によって計算されます。
全検査IQは、子どもの知的水準を把握するための指標として広く使われています。
言語理解(VCI)
言語理解では、語彙力や習得した知識の他に、言葉で推理する能力など言語による理解や推理、思考力を測定します。
| 評価する能力 | 主要検査項目 |
|---|---|
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言語理解では、言葉を用いてのコミュニケーションや推論する能力がどれくらいあるかがわかります
流動性推理(FRI)
流動性推理では、抽象的思考や柔軟な問題解決能力を評価します。
| 評価する能力 | 主要検査項目 |
|---|---|
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流動性推理は、学習においての応用力や創造的思考力がわかります。流動性推理が低い場合は、抽象的な文章問題など推論が苦手な傾向が見られます。
視空間(VSI)
視空間では、視覚情報を正しく解釈し、頭の中でイメージして操作する能力を評価します。
| 評価する能力 | 主要検査項目 |
|---|---|
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視覚情報を正しく処理する力が低いと、板書が上手く書けなかったり、図形問題が苦手であったりする傾向があります。
ワーキングメモリ(WMI)
ワーキングメモリでは、情報を一時的に保持しながら処理する能力を測定します。
| 評価する能力 | 主要検査項目 |
|---|---|
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ワーキングメモリは、学習や会話など日常生活で必要な能力の基盤となります。この能力が低いと、失くし物が多い、指示が覚えられないなどさまざまな困りごとにつながりやすいです。
処理速度(PSI)
処理速度領域では、シンプルな課題をどれだけ迅速に処理できるかを評価します。
| 評価する能力 | 主要検査項目 |
|---|---|
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どれだけ単純作業を素早く正しく処理できるかを見る指標です。のんびりしていて切り替えが苦手な子どもは、処理速度が苦手な傾向にあります。
WISC検査を受けるとわかること
WISC検査を受けると子どもが持っている特性や得意・不得意を明確に把握できます。そのため、以下のようなメリットがあります。
・困りごとの背景を理解する手がかりになる
・子どもの特性に合った適切なサポートにつなげられる
指示が理解できない、集中力が続かないなどの学習や生活面での困りごとが、どんな特性からきているのか理解するための手がかりを得られます。検査結果をもとに子どもに合った学習方法や環境の調整を行えるため、子どもにとって過ごしやすい環境を用意してあげられるでしょう。
また、本人にとってもなぜ苦手なのか分からないと不安やストレスを感じてしまいがちです。しかし、検査を受けることで自分の特性を知る機会が得られます。自己理解が深まると、自己肯定感を高める手助けにもなるでしょう。
このように、保護者や教員などが子どもの特性を把握することで、適切なサポートにつなげられます。
WISCを受けるために知っておきたいこと
WISCは、専門的な知識のある検査者が検査を行います。WISC検査を受けたい場合は、専門の施設を探さなければなりません。ここでは、WISC検査が受けられる施設や必要な費用について紹介します
WISC検査が受けられる施設と費用は?
WISC検査が受けられる施設は大きく分けて以下の3つです。
医療機関:病院の児童精神科、小児科
公的機関:児童発達支援センター・教育委員会の機関
民間機関:民間の心理相談室・大学の心理相談室
WISCの費用の有無は、受ける場所によって異なります。
医療機関で発達障害等の診断を目的として検査を受ける場合は保険適用が可能です。保険が適用されると3割負担となり、およそ1,500円で検査を受けられます。
公立の児童発達支援センターなど公的機関で受ける場合では、費用はかからない場合が多いです。
大学や民間の心理相談室で検査を受ける場合は、各施設が設定する料金がかかります。民間の心理相談室や放課後等デイサービスの場合は大体10,000円~20,000円、大学の心理相談室で受ける場合は、2,000円~4,000円程度で検査を実施しています。
WISCで子どもの特性を把握して適切な支援につなげよう

WISC検査は、「ウェクスラー式知能検査」のひとつで、児童を対象とした知能検査です。WISC-Vは、全般的な知的発達水準を示す全検査IQ(FSIQ)のほか、特定の認知領域の知的機能を評価するために5つの主要指標から測定します。
WISC検査を受けられる場所は、児童精神科などの医療機関、発達支援センターなどの教育機関、民間や大学などの心理相談室などの民間機関です。費用は施設によって異なります。
WISC検査を受けると、子どもの特性や得意・不得意を把握できるため、子どもに合った適切なサポートにつなげられます。子どもの発達について不安がある場合には、WISC検査を受けてみると子どもの特性がわかり適切な支援につなげられるでしょう。
【参考】WISC-V(児童向けウェクスラー式知能検査)とは?わかりやすく解説!|日本心理検査センタ
執筆者プロフィール

特別支援学校や小学校の特別支援学級に教員として勤務。さまざまな障害のある子どもとの関わりを経て、現在は、ライターとして福祉・教育を中心に執筆している。教員免許の他、保育士、社会福祉主事、手話検定2級の資格を保有。