業界特性を活かした障がい者雇用の革新!3社の先進事例を紹介

業界特性を活かした障がい者雇用の革新!3社の先進事例を紹介


障がい者雇用は多くの企業にとって重要な経営課題となっていますが、業界の特性を活かしながら独自の取り組みを展開し、成果を上げている企業があります。
本記事では、物流業界から株式会社シーエックスカーゴ、製造業から株式会社エフピコ、エンターテインメント業界からエイベックス株式会社の3社を取り上げ、それぞれの特徴的な取り組みと成果を紹介します。

物流業界の先進事例:株式会社シーエックスカーゴ

物流業界において、障がい者雇用を積極的に推進し、独自の支援体制を構築している企業が、日本生活協同組合連合会の物流子会社であるシーエックスカーゴです。
全国の物流センターの運営や商品の発注・在庫管理、輸配送などの物流機能をトータルで担う企業として知られています。それと同時に、障がい者雇用においても先進的な取り組みを展開しています。

1.高い雇用率の達成

シーエックスカーゴは平成17年頃から「共に働く、共に育む」という社是の下で障がい者雇用に取り組み始めました。令和4年6月時点で152名(身体障がい23名・知的障がい81名・精神障がい48名)の障がいのある社員が在籍しています。
障がい者実雇用率5.93%という高水準を示しており、法定雇用率を大きく上回っています。特筆すべきは、勤続5年以上の社員が83名いることです。長期的な雇用の定着にも成功しています。
この実績は、平成29年の「障がい者雇用優良事業所等表彰」における厚生労働大臣表彰の受賞や、埼玉県からの「障がい者雇用優良事業所認定」など、多くの評価にもつながっています。特に桶川流通センターは令和元年に「障がい者雇用職場改善好事例」の最優秀賞を受賞するなど、その取り組みは全国的にも高い評価を得ている企業です。

2.小売業界における障害者雇用

シーエックスカーゴは障がい者の採用において、職場定着を重視する観点から必ずトライアル雇用または職場実習を実施しています。この取り組みの特徴は以下の点です。

  • 障がい者就業・生活支援センター、障がい者就労移行支援事業所、特別支援学校などの外部支援機関との密接な連携
  • 実習期間中に本人の職務適性や能力を見極め、最適な業務のマッチングを実施
  • 実際の職場環境での経験を通じて、本人と企業双方が適性を確認できる機会の提供

段階的なアプローチにより、採用後のミスマッチを防ぎ、長期的な雇用継続につながっています。

3.障がい者職業生活相談員やジョブコーチの配置

シーエックスカーゴは充実した支援体制を構築しています。

  • 本社と全国の物流センター、営業所に計15名の障がい者職業生活相談員を配置
  • 企業在籍型ジョブコーチを設置し、専門的なサポートを提供
  • 年1回の「フェイスシート」作成による個別情報の一元管理
  • 相談員に対する年2回の集合研修の実施

特に注目すべき点は、相談員研修におけるケーススタディや事例共有の実施です。これにより、以下を実現しています。

  • 実践的な面談スキルの向上
  • 全国の事例から学ぶ機会の創出
  • 相談員同士のネットワーク構築
  • 各拠点における課題解決力の向上

令和4年度からは「チャレンジプログラム」を導入し、障がいのある社員の育成にも注力しています。これらの総合的な取り組みにより、同社は障がい者雇用における先進的なモデルケースとなっています。

製造業における取り組み:株式会社エフピコ

食品容器業界のトップメーカーであるエフピコは、障がい者雇用において先進的な取り組みを展開し、グループ全体で約400名の障がい者が活躍する企業へと発展してきました。エフピコの特徴的な取り組みを詳しく解説します。

1.特例子会社の設立と就労継続支援A型事業所の展開

エフピコの障がい者雇用は、1986年に知的障がいのある子どもを持つ親の会「あひるの会」とのつながりから特例子会社ダックス(現エフピコダックス株式会社千葉工場)を設立したことに始まります。
2007年には民間の営利法人として初となる就労継続支援A型事業所(現エフピコ愛パック株式会社)を設立し、全国的に拠点整備を進めてきました。この結果、2024年3月時点でエフピコグループの障がい者雇用率は12.6%(雇用人数393名、雇用率換算数662名)という高水準を達成しています。

2.知的障がい者の基幹業務での活用

エフピコでは、障がいのある従業員を補助的な業務ではなく、企業の基幹業務である「食品トレー容器の製造」と「リサイクル」の事業で積極的に活用しています。具体的には、食品トレー容器の成形加工、組立加工、検品、包装といった製造工程全般、および使用済みトレー(発泡トレー・透明容器)の選別業務を担当しています。
特徴的なのが、これらの業務が同社の事業展開に欠かすことのできない重要な位置づけとなっている点です。グループ内での一般就労へのステップアップも積極的に推進しており、エフピコダックスやエフピコ愛パックから株式会社エフピコ本体への移籍事例も生まれています。
このように、グループの総合力を活かしたキャリア形成支援にも注力しています。

3.「もにす認定」の取得による評価

エフピコダックス株式会社は、2022年6月に厚生労働大臣による「障がい者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定(もにす認定)」を取得しました。もにす認定は、障がい者の雇用促進および雇用の安定に関する取り組みが優良な中小事業主に与えられるものです。
特に、エフピコダックス株式会社における障がいのある社員の高い定着率、10年以上勤続者の割合の高さ、作業施設・設備の整備、キャリアアップへの取り組みなどが高く評価されました。
これらの総合的な取り組みにより、エフピコグループは製造業における障がい者雇用のモデルケースとして、社員一人ひとりが個々の能力や特性を最大限に発揮できる職場環境づくりを実現しています。

エンターテインメント業界の挑戦:エイベックス株式会社

総合エンターテインメント企業のエイベックスは、障がい者雇用において革新的なアプローチを展開し、特にスポーツを通じた社会貢献で注目を集めています。エイベックスの特徴的な取り組みについて、詳しく解説します。

1.障がい者アスリートの正社員登用

エイベックスは2008年から、障がいを持つトップアスリートを正社員として積極的に雇用・支援する取り組みを開始しました。現在では車いすテニスや視覚障がい者柔道など、7名のパラアスリートが「エイベックス・チャレンジド・アスリート」として所属しています。
特に注目なのが、競技に専念できる環境を整備し、練習時間の確保や体調管理に配慮した働き方を実現している点です。この取り組みの成果は2016年のリオパラリンピックで証明され、6名の所属選手が出場を果たしました。この実績により、多数の選手を支援した団体として初めて「文部科学大臣特別表彰」を受章しています。
車いす陸上の木山由加選手は、入社前は仕事と練習の両立に苦心していましたが、エイベックス入社後は競技に専念できる環境を得て、パフォーマンスの向上につながっています。

2.アスリートが活躍できる職場環境の整備

エイベックスは、障がい者アスリートが働きやすい職場環境の整備に注力しています。特に、競技と仕事の両立をサポートする体制として、柔軟な勤務形態の導入や、トレーニング設備の整った施設の利用支援などを行っています。
障がい特性や競技スケジュールに応じた個別の配慮を行い、選手一人ひとりのニーズに合わせた支援を提供しているのも見逃せません。「障がい者」という括りではなく、個性・特性という捉え方で採用・支援を行うという同社の基本方針に基づいています。

3.障がい者スポーツの認知拡大への貢献

エイベックスは2015年度より、障がい者スポーツの啓発活動に積極的に取り組んでいます。アイススレッジホッケー、車いすフェンシング、車いすバスケットボールなど、さまざまな競技の体験会やトップアスリートとの交流会を主催しています。
特に、東京、大阪、愛知、福岡などの主要都市で開催される体験会では存在官を発揮してきました。エイベックスのアーティストや著名人も参加し、若い世代からご年配の方まで幅広い層に障がい者スポーツの魅力を伝えています。
また、複数の企業と協力して社内外に向けたイベントを企画・制作するなど、業界の枠を超えた活動を展開しています。
これらの取り組みは、エンターテインメントを通じた社会貢献という同社の理念を体現するものです。障がい者スポーツの認知度向上と共生社会の実現に向けた先進的な事例として評価されています。

まとめ

3社の事例から、成功する障がい者雇用には以下の共通点があることがわかります。
第一に、各社の事業特性を活かした雇用形態の確立です。シーエックスカーゴは物流業務における段階的な教育システム、エフピコは製造工程での基幹業務での活用、エイベックスはアスリートの競技活動支援など、それぞれの強みを活かした取り組みを展開しています。
第二に、きめ細かな支援体制の構築です。職業生活相談員やジョブコーチの配置、特例子会社の設立、専門的な職場環境の整備など、障がい特性に応じた多様なサポート体制を整えています。
第三に、長期的な視点での人材育成です。トライアル雇用や実習制度の活用、キャリア形成支援、スキルアップ機会の提供など、継続的な成長をサポートする仕組みを確立しています。
これらの取り組みは、障がい者雇用を単なる法定雇用率達成の手段としてではなく、企業の持続的な成長と社会貢献を両立させる戦略として位置づけている点で共通しています。各社の事例は、今後の障がい者雇用のあり方を考える上で、重要な示唆を提供しているといえるでしょう。

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