行動障害の原因とは?適切な対応や支援について紹介

行動障害の原因とは?適切な対応や支援について紹介

家族などの介護者や医療者は、自分や他人を傷つけたり、物を壊したりといった行動障害のある方への対応で、日頃から悩み疲弊しているのではないでしょうか。
また、家族などの介護者や医療者だけではなく、物理的な環境や支援者が合わないことにより、本人も苦痛を感じています。
行動障害は、コミュニケーションが苦手な特性がある知的障害や自閉スペクトラム症の方がなりやすいと言われています。
この記事では、行動障害による悩みがある方向けに、行動障害の原因や対応で大切にすべきポイント、支援サービスについて解説します。
ぜひ、最後まで読んで障害特性に合わせた対応や支援サービスの導入に繋げてみてください。

行動障害とは?


行動障害とは、精神科的な診断ではなく、直接的他害(噛みつき、頭突きなど)や間接的他害(睡眠の乱れや同一性の保持)、自傷行為等が出現している状態のことです。
そして本人や周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要な状態のことを強度行動障害と言います。

行動障害の原因

行動障害は、重度・最重度の知的障害や自閉スペクトラム症が背景にある人に発生することが多いです。
コミュニケーションの苦手さや社会的スキルの乏しさ、行動や思考への強いこだわり、感覚刺激に対する過敏さなどの障害特性を持つ人が、適切でない物理的環境や支援に直面すると、行動障害の症状が強く現れてしまいます。
原因となる障害特性について解説していきます。

1.コミュニケーションの苦手さ

相手の言葉の理解や相手に自分の意思をうまく伝えることが苦手という特性があります。また、身振りや顔の表情などの非言語的コミュニケーションの理解が難しいという特性もあります。
コミュニケーションが苦手なことで「分からない」や「伝わらない」の積み重ねが生じ、人や場に対する嫌悪感や不信感が高まってしまうのです。

2.社会的スキルの乏しさ

様々な社会的状況に合った行動に調節させることが困難です。他者への共感性や考えの理解が低く、相手の心情を推察することが苦手という特性があります。
このように周囲の環境にうまく合わせられないことがストレスの増大に繋がります。

3.行動や思考への強いこだわり

一般的ではない対象への強い愛着や固執した興味により、関心事が限定的な傾向にあります。
一つのことに強く執着すると、他のことに興味を向けられないケースや、好ましくない行動でも辞められない場合が多いです。
興味や関心の限定や強いこだわりが環境とうまく合わないことで、嫌悪感や不信感につながります。

4.感覚刺激に対する過敏さ

周囲の刺激に反応しやすく、それを避けられない特性があります。
周りの刺激を感じやすいことがストレスとなりやすく、行動障害につながる場合があります。

行動障害の対応で大切にすべきこと


知的障害や自閉スペクトラム症の方は、障害特性により、不安や緊張から逃れたいと思っていてもそれを伝える方法が分からず、気持ちを激しい行動で表現してしまうことがあります。
行動障害はもともとの障害ではなく、適切な行動を教えられていない場合や周囲が誤った対応を繰り返すことで発生するため、介護者や医療者の適切な対応が重要です。
厚生労働省は「強度行動障害のある人を支えるための5つの原則」を提示しています。
5つの原則について解説していきます。

1.安心して通える日中活動

行動障害のある方は、すべきことに集中しやすい環境で安全、快適に過ごせることが重要です。
日中活動は、週5日程度で1日4時間をコンスタントに決まった日課で過ごせるようにします。
その際には、個別のスペースを確保する必要があります。
本人にとって、健康や安全に配慮が行き届く場であることが重要です。

2.居住内の物理的構造化

行動障害のある方には、空間を分かりやすく、安全で快適にすることが重要です。
物理的構造化とは、「やること」と「場所」の関係性を明示することです。
休む場所や一人で勉強する場所など活動エリアを分かりやすく明示し、構造を整理します。
本人の不安が軽減できるように、周囲を物理的に整理していくことが重要です。

3.ひとりで過ごせる活動

支援者は、見守りなしで一定時間過ごせる時間を設け、集中できる課題を用意することが重要です。活動には、終わりのルールを作ります。
行動障害のある方が、楽しみながら気持ちを整えられる活動となるよう、配慮することがポイントです。

4.確固したスケジュール

行動障害のある方にとって時間の流れを分かりやすくして、見通しを持てるようなスケジュールの確立が重要です。
繰り返しの日課を家族などの同居人が理解し、サポートすることで本人にとって安心感が生まれます。
スケジュールに変化がある際は、あらかじめどのように変わるのか伝えることで見通しを持て、不安の軽減に繋がります。
今すべきことやその後すべきことが分かるようにしていくことが重要です。

5.移動手段の確保

日中活動などの移動も刺激が少ない交通手段を選ぶことが重要です。
行動障害のある方は、感覚刺激に対して過敏さがあるため、外的な刺激が多い状況を避けられるように事前に準備しておきます。
本人にとって安心できる日々の送迎体制の確保が重要です。

行動障害のある方への支援サービス


行動障害を有する方への福祉サービスは、経済的支援、証明・各種割引、福祉サービスの主に3つがあります。

1.経済的支援

経済的支援には、障害年金の受給があります。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる年金です。
知的障害では、障害の状態が定められた基準に該当しているのかどうかで、障害年金の支給や等級が決められます。
日常生活が困難で、常時援助が必要な状態である1級と、日常生活にあたって援助が必要な2級の場合が対象です。
発達障害では、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とする1級、日常生活への適応にあたって援助が必要な2級、労働が著しい制限を受ける3級に該当する場合に支給されます。
障害によって収入を得ることが困難な場合に障害年金を申請することで、経済的な不安への解消に繋がります。

2.証明・各種割引

精神障害者福祉手帳と療育手帳は、精神疾患及び発達障害、知的障害など特定の障がいがあり、生活に支障がある人に対して発行される証明書です。手帳を持っていることにより、自治体や事業者が独自に提供するサービスを受けられます。

3.福祉サービス

介護を必要とする人が使う福祉サービスには、重度訪問介護や行動援護などの障害者総合支援法が規定するサービスがあります。
重度訪問介護は、重度の知的障害・精神障害により、行動上著しい困難を有し、常に介助を必要とする人に、自宅で入浴、排せつなどの日常生活の介護を行うサービスです。
行動援護は、行動面で特別な見守りを必要とする人が、家の中や外出する際にヘルパーが付き添うサービスです。
また在宅で受ける支援以外も、家族などの介護者が不在となる場合に、一次的に施設へ入所できる短期入所サービスなど施設で受ける支援もあります。

まとめ

本記事では、行動障害の原因や対応で大切にすべきこと、支援サービスについて解説しました。
行動障害が通常考えられない頻度と形式で出現している状態のことを強度行動障害と言い、適切な支援が必要です。
行動障害の原因に繋がりやすい障害特性は以下の4つです。

  • コミュニケーションの苦手さ
  • 社会的スキルの乏しさ
  • 行動や思考への強いこだわり
  • 感覚刺激に対する過敏さ

そして行動障害への対応で大切な原則は以下の5つです。

  • 安心して通える日中活動
  • 住居内の物理的構造化
  • ひとりで過ごせる活動
  • 確固したスケジュール
  • 移動手段の確保

行動障害は、周囲の介護者だけでなく、本人にとっても嫌悪感や不信感が強く、困っている状況であるため、特性にあった対応をとることが重要です。支援サービスを導入しながら本人と周囲の人にとってより良い環境を作っていきましょう。

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