社員が障害者になった場合の助成金は?金額や申請方法について解説

社員が障害者になった場合の助成金は?金額や申請方法について解説


障害者雇用促進法では、企業に対し、雇用する障害者の仕事上の支障を改善するための措置を取ることを義務(合理的配慮の提供義務)づけています。

もし社員が障害者になった場合、企業は障害に配慮した施設の整備や障害者を援助する人員の配置などが求められます。

障害者が働きやすい職場環境をつくるには費用がかかりますが、国からの助成金で費用の一部を賄うことができます。

この記事では、社員が障害者になった場合に使える助成金や助成金額、申請方法について詳しく解説します。

障害者雇用で活用できる助成金

社員が障害者になった場合、企業が実施する「施設の整備」「援助者の設置」「労働条件の配慮」「職業能力開発」などの措置に応じて下記の助成金を活用できます。

・障害者雇用納付金制度に基づく助成金
・障害者雇用安定助成金「障害者職場適応援助コース」
・障害者雇用安定助成金「障害者職場定着支援コース」
・人材開発支援助成金「障害者職業能力開発コース」

障害者雇用納付金制度に基づく助成金

障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、職場の作業施設・福祉施設を設置するなどの措置を講じた場合、その費用の一部を助成するもので、下記の5種類が設けられています。

・障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
・障害者介助等助成金
・重度障害者等通勤対策助成金
・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
・障害者職場実習支援事業

障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金とは、事業主が障害者のために下記の施設・設備を設置・整備する場合に、その費用の一部を助成するものです。

・障害者が作業を容易に行えるよう配慮された施設・設備など(※)
・保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設
(※)施設・設備を購入する場合を第1種、賃貸する場合を第2種といいます。

障害者作業施設設置等助成金の第1種の場合、対象施設と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・作業施設(障害者が作業を行う場所)
・附帯施設(作業施設に附帯する廊下・階段・トイレなど)
・作業設備(視覚障障害者用読書器・作業用車椅子など)

【助成金額】
支給対象費用(設備費用など)× 助成率(2/3)
※1人当たり450万円以内など限度額あり

障害者介助等助成金

障害者介助等助成金とは、障害者の適切な雇用管理に必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。職場介助者(職場内で重度視覚障害者などの介助を行う者)、健康相談医師、職業コンサルタント、在宅勤務コーディネーターなど介助者ごとに助成金が設けられています。職場介助者を配置する場合の支給対象障害者と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・重度視覚障害者(2級以上)
・重度四肢機能障害者(原則、2級以上)

【助成金額】
支給対象費用(介助者の人件費)× 助成率(3/4)
※1人当たり月15万円限度、支給期間10年

重度障害者等通勤対策助成金

重度障害者等通勤対策助成金とは、通勤が特に困難と認められる身体障害者に対し通勤を容易にするための措置を行う場合にその費用の一部を助成するものです。支給対象となる措置(通勤を容易にするための措置)と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・重度障害者のための特別な設備のある住宅の賃貸
・重度障害者が5人以上入居する住宅に指導員を配置
・重度障害者が住宅を賃貸する場合、通常より多い住宅手当を支給
・通勤する5人以上の重度障害者のために通勤用バスを購入
など

【助成金額】
支給対象費用(地域の賃料等で計算)× 助成率(3/4)
※特別な設備のある住宅の賃貸」の場合。世帯用月10万円、単身者用月6万円限度、支給期間10年

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金とは、重度身体障害者、知的障害者などを多数継続して雇用する事業主が、障害者のために事業施設等の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。支給対象事業主と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・支給対象障害者を10人以上継続して雇用している事業所
・全労働者のうち支給対象障害者が2割以上の事業所
・支給対象事業施設等の設置・整備を行う事業所

【助成金額】
支給対象費用(建築単価等で計算) × 助成率(2/3)
※上限は5,000万円(特例に該当すると助成率3/4で上限1億円)

障害者職場実習支援事業

障害者職場実習支援事業とは、障害者を雇用したことがない事業主が、ハローワークと協力し職場実習を計画し実習生を受け入れた場合に謝金等で企業を支援するものです。対象となる職場実習の要件と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
期間・日数:期間は1週間~1か月、日数は5日~20日
実習時間:1日当たり3時間~法定労働時間
内容:OJTによる技能習得、労働習慣等の習得を目的とするもの
など

【助成金額】
・実習対象者1人1日5,000円(1年間で50万円限度)
・実習対象者のケガに備え傷害保険に加入した場合は実費支給。

障害者雇用安定助成金「障害者職場適応援助コース」

障害者雇用安定助成金「障害者職場適応援助コース」とは、職場適応・定着に特に課題を抱える障害者に対し「職場適応援助者」による支援を行う事業主に対して助成するものです。支給対象となる支援と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・訪問型職場適応援助者による支援(事業主からの要請で障害者の職場適応を図るため、支援計画に記載された支援)
・支援計画書の策定
・支援総合記録票の策定
・支援対象労働者に対する支援
・支援対象事業主に対する支援
・企業在籍型職場適応援助者による支援(支援計画に基づく障害者の職場適応を図るための支援)
・対象労働者および家族に対する支援
・事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
・関係機関との調整
・その他の支援(地域センターが特に必要と認めて支援計画に含めた支援)

【助成金額】
・1日の支援時間4時間以上の日16,000円(4時間未満は8,000円)
・訪問型職場適応援助者養成研修の受講料の1/2の額(一定要件あり)
※訪問型職場適応援助者による支援の場合

障害者雇用安定助成金「障害者職場定着支援コース」

障害者雇用安定助成金「障害者職場定着支援コース」とは、障害者の雇用促進と職場定着を目的に、障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等の措置を講じる事業主に対して助成するものです。支給対象となる措置と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・柔軟な時間管理・休暇取得(通院・治療のための労働時間調整など)
・短時間労働者の勤務時間延長
・有期契約労働者を正規雇用・無期雇用に転換
・援助・支援を行う職場支援員の配置
・障害による休職者の職場復帰支援
・中高年障害者の雇用継続支援
・社内理解の促進(障害者の就労支援に関する講習の実施など)

【助成金額】
支給対象者1人あたり8万円(6万円)
※柔軟な時間管理・休暇取得」の場合。()内は中小企業以外の事業主への支給金額

人材開発支援助成金「障害者職業能力開発コース」

人材開発支援助成金「障害者職業能力開発コース」とは、障害者の職業能力を開発、向上させるため教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う事業主に対してその費用を一部助成するものです。助成金の対象は「訓練施設の設置・整備など」と「職業能力開発訓練事業」です。対象となる訓練施設と助成金額は下記の通りです。

【支給対象】
・能力開発施設
・管理施設
・福祉施設
・能力開発訓練施設用設備

【助成金額】
施設・設備の設置・整備(更新)費用 × 3/4
※新設の場合は上限5,000万円、更新の場合は上限1,000万円。

助成金の申請方法

障害者雇用納付金制度に基づく助成金

「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」の申請は、下記手順で支部経由「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」に行います。

1. 事前に受給資格等の認定申請
2. 認定後に施設の設置など実施、費用支払い
3. 助成金の支給申請

【出典】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「助成金受給資格等認定申請・支給請求の手続」

申請手続詳細や申請書の取出し、記入見本は下記ページをご参照ください。

【参考】
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「助成金受給資格等認定申請・支給請求の手続」
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「各種助成金等様式ダウンロード」

雇用関係助成金の申請方法

「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」以外の雇用関係助成金は、各都道府県労働局内に設置されているハローワークなどに対して申請を行います。申請手順は「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」と同様で、事前に企業が行う措置について「受給資格等の認定申請」を行ったうえで、措置実施後に支給申請を行います。申請手続詳細や申請書の取出し、申請先は下記リンクを参照してください。

【参考】
厚生労働省「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」
厚生労働省「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」
厚生労働省「雇用関係各種給付金申請等受付窓口一覧」

まとめ

社員が障害者になった場合に活用できる助成金は、大きく3つに分かれます。

・障害者雇用納付金制度に基づく助成金
・障害者雇用安定助成金の「障害者職場適応援助コース」「障害者職場定着支援コース」
・人材開発支援助成金「障害者職業能力開発コース」

雇用関係助成金は多くのコースが設けられ内容も複雑であるため、各都道府県に設置されている地域障害者職業センターに相談することをおすすめします。

また、ご紹介した助成金は原則、事前に認定を受けた取り組み対し事後的に助成金が支払われるので、認定前の支出は対象外、取り組みの費用は先に企業が支払う必要があるので注意しましょう。

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