
重度の障害により常時特別な介護が必要な状態にある20歳以上の方にとって、特別障害者手当は生活を支える重要な経済的支援制度です。令和7年4月から月額29,590円(消費者物価指数に応じて変動)に改定されたこの国の制度は、障害者手帳の有無にかかわらず申請が可能で、障害年金との併給もできます。
しかし、申請方法や認定基準、所得制限などの詳細を正しく理解していなければ、受給できる可能性を逃してしまうかもしれません。本記事では、特別障害者手当の対象となる条件から、具体的な申請手続きの流れ、必要書類の準備方法、審査のポイントまで、制度を利用するために必要な情報を分かりやすく解説します。
※2026年1月時点での内容となります。
こちらの記事も参考にしてください:特別障害者とは?一般障害者や特定障害者との違いを解説
特別障害者手当とは
重度の障害により日常生活において常時特別な介護を必要とする方への経済的支援について、制度の概要と基本的な仕組みを説明します。
制度の目的と基本概要
特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別な介護を必要とする方に対して、重度の障害のために必要となる精神的、物質的な特別の負担を軽減するために国が支給する手当です。昭和61年4月に厚生労働省による制度として創設されて以来、現在まで継続しています。
この手当は在宅で生活する方の福祉向上を図ることを目的としており、施設入所者や長期入院者は対象外となっている点が特徴です。ただし、グループホームや有料老人ホームに入居している方は在宅扱いとなり、申請が可能となっています。
令和7年度の支給額
特別障害者手当の月額は29,590円で、令和7年4月から適用されています。この金額は物価上昇に合わせて約2.67%引き上げられたもので、障害者手帳の級数など障害の重さによる金額の差はなく、一律となっているのが特徴です。
年間で約35万5千円という金額は、介護用品の購入や医療費の補助など、日常生活における経済的負担を軽減する役割を果たしているといえるでしょう。手当の額は物価変動等により毎年見直されます。
受給条件と対象者
特別障害者手当を受給するための基本的な条件について、年齢要件、在宅要件、入院期間の制限など、押さえておくべきポイントを解説します。
年齢と障害の程度
特別障害者手当の支給を受けるためには、まず20歳以上であることが必要です。20歳未満の方は対象とならず、代わりに障害児福祉手当という別の制度が用意されています。
障害の程度については、身体または精神に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別な介護を必要とする状態であることが求められます。具体的には、おおむね身体障害者手帳1、2級程度、愛の手帳1、2度程度、療育手帳A程度の重度の障害がある状態、またはこれらの障害が重複している状態が目安となっているようです。
※あくまで目安であり、実際の認定は日常生活における介護の必要性を総合的に判断して行われます。
重要なのは、障害者手帳を所持していなくても、医師の診断書により認定請求が可能である点です。手帳の取得を待たずに申請できるため、早期の経済的支援につながるといえるでしょう。
在宅要件と施設入所の取扱い
特別障害者手当の受給には、在宅で生活していることが条件となります。具体的には、障害者支援施設や特別養護老人ホームなど、厚生労働省令に定められた施設に入所していないことが必要です。
ただし、すべての施設が対象外となるわけではありません。グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などは在宅扱いとなり、これらの施設に入居している方も申請が可能となっています。この在宅扱いの範囲については、各自治体の担当窓口で詳しく確認することをおすすめします。
認定基準と診断書の要件
特別障害者手当の認定には医師の診断書が必要となります。認定基準の概要と、診断書の種類や作成時のポイントについて説明します。
厚生労働省の認定基準
特別障害者手当の認定基準は、厚生労働省により「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準について」という通知で定められています。この基準に準じて、医師の診断書など申請書類にもとづき、各自治体が認定を行う仕組みとなっているのが特徴です。
認定診断書は、身体障害者福祉法に規定する指定医師等、該当する障害または病状に係る専門医の作成したものとするよう指導されています。精神障害その他の疾患で診断書のみでは認定が困難な場合は、必要に応じて療養の経過、日常生活の状況の調査、検診等を実施した結果に基づき認定されます。
障害別の診断書様式
特別障害者手当の診断書には、障害の種類に応じた複数の様式が用意されています。肢体不自由用、視覚障害用、聴覚・平衡機能・そしゃく・嚥下・言語機能障害用、呼吸器・心臓機能障害用、腎臓機能障害用、肝臓・血液造血器機能障害用、精神障害用など、それぞれの障害特性に応じた診断書が準備されているのが特徴です。
肢体不自由についての診断書を記載する際には、専門医の資格など特別な資格は必要ありません。これは障害者手帳申請時の診断書とは異なる点であり、かかりつけの医師に記載を依頼できる可能性があるといえるでしょう。
申請手続きの流れ

特別障害者手当を申請する際の具体的な手順と、準備すべき書類について解説します。
申請窓口と事前準備
特別障害者手当の申請は、お住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口で行います。申請を検討する場合は、まず窓口に電話で問い合わせを行い、必要書類や診断書の様式を確認することをおすすめします。多くの自治体では、電話などで依頼すれば自宅に所定様式を送付してくれるサービスも提供されています。
診断書は所定の用紙が必要なことがあるため、事前に窓口から入手しておく必要があります。かかりつけの医師に診断書の作成を依頼する際は、特別障害者手当の診断書であることを明確に伝え、必要な様式を渡すことが大切です。
必要書類の準備
特別障害者手当の申請には、以下の書類が必要となります。
- 特別障害者手当認定請求書
- 特別障害者手当所得状況届
- 特別障害者手当認定診断書
- 本人名義の預金通帳
- マイナンバーカードもしくは個人番号が記載された住民票の写し
- 身元確認書類
- 障害者手帳を所持している場合はその写し
- 年金を受けている場合は、公的年金証書の写しおよび年金振込通知書
- 戸籍謄本または戸籍抄本(自治体によってはマイナンバーカードで省略可能)
まず、特別障害者手当認定請求書と特別障害者手当所得状況届は、自治体が用意している所定の様式に必要事項を記入します。特別障害者手当認定診断書は、障害の種類に応じた指定様式を使用し、該当する障害に係る医師に作成してもらう必要があります。
本人名義の預金通帳は、手当の振込先口座を確認するために必要です。個人番号カード(マイナンバーカード)、もしくは個人番号が記載された住民票の写しを用意します。本人確認書類として、運転免許証やパスポートなどの身元確認書類も必要です。
障害者手帳を所持している場合は、その写しも提出します。年金を受けている場合は、公的年金証書の写しおよび年金振込通知書が必要となります。戸籍謄本または戸籍抄本も準備しますが、自治体によってはマイナンバー制度により省略できる場合もあるため、事前に確認するとよいでしょう。
申請から認定までの期間
必要書類をそろえて窓口に提出した後、自治体による審査が行われます。審査結果が通知されるまでの期間は場合によって異なりますが、一般的には2~3ヶ月程度が目安とされています。この期間中、自治体の担当者が診断書の内容を確認し、必要に応じて追加の調査や検診を実施する場合もあります。
認定された場合、認定請求が受理された月の翌月分から手当が支給される仕組みとなっています。たとえば4月に申請して7月に認定された場合、5月分から支給対象となり、最初の支払い時にまとめて受け取ることができるといえるでしょう。
支給方法と受給後の手続き
手当の支給スケジュールと、受給後に必要となる定期的な手続きについて説明します。
支給日と振込スケジュール
特別障害者手当は、原則として毎年2月、5月、8月、11月の年4回、それぞれの前月までの3ヶ月分がまとめて振り込まれます。たとえば5月の支給では、2月・3月・4月分の3ヶ月分、合計88,770円が支給される仕組みです。
支給日は自治体によって異なりますが、多くの自治体では支給月の10日頃に設定されています。支給日が土曜日、日曜日、祝日の場合は、直前の金融機関営業日に振り込まれます。
現況届の提出義務
特別障害者手当の受給中は、毎年8月に「現況届」の提出が義務付けられています。この現況届では、施設への入所や入院の有無、前年の所得、養育状況などを報告する必要があり、8月以降も手当を受給するために必要不可欠な手続きとなっています。
現況届の提出を忘れると、手当が支給されなくなる可能性があるため注意が必要です。自治体から提出の案内が届いたら、期限内に必ず提出するよう心がけることが大切といえるでしょう。
再認定の手続き
障害の程度が変わる可能性がある場合は、通常1~5年の範囲の「有期認定」となります。有期認定の場合、再認定期月の約1ヶ月前に診断書などを再度提出する必要があり、提出期限前に市区町村から案内が届く仕組みとなっています。
再認定の診断書も、初回申請時と同様に所定の様式を使用し、該当する障害に係る医師に作成してもらいます。この手続きを怠ると手当の支給が停止される可能性があるため、案内が届いたら早めに医療機関を受診し、診断書の作成を依頼することをおすすめします。
認定されなかった場合の対応

申請が認定されなかった場合に取ることができる手続きと、相談先について説明します。
審査請求の権利
特別障害者手当の認定が受けられなかった場合、審査請求で不服を申し立てることができる制度が用意されています。審査請求を行う際は、自治体の窓口に審査請求書を提出する必要があります。
審査請求には期限が設けられており、認定されなかったことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると審査請求ができなくなるため、不認定の通知を受け取ったら速やかに検討することが重要といえるでしょう。
再申請の検討
審査請求をしても認定が受けられない場合もあるため、状況によっては時期を改めて再申請することも選択肢の一つです。障害の状態が変化した場合や、新たな診断書を取得できる場合などは、再申請により認定される可能性があります。
再申請を検討する際は、前回の不認定理由を確認し、どの点が基準を満たしていなかったのかを把握することが大切です。
まとめ
特別障害者手当は、20歳以上で重度の障害により常時特別な介護が必要な在宅の方に対して、月額29,590円が支給される国の重要な経済的支援制度です。障害者手帳を持っていなくても医師の診断書により申請が可能で、障害年金との併給もできる点が大きな特徴となっています。
申請にあたっては、市区町村の障害福祉課窓口で認定請求書や所定の診断書などの必要書類を準備し、審査を受ける必要があります。認定までには2~3ヶ月程度かかりますが、認定されれば申請月の翌月分から年4回に分けて手当が支給される仕組みです。
所得制限があるため、本人や配偶者、扶養義務者の前年所得が限度額を超えると支給停止となる点には注意が必要です。また、受給中は毎年8月の現況届提出が義務付けられており、有期認定の場合は定期的な再認定手続きも必要となります。
※詳細な所得制限額は自治体・世帯構成により異なるため窓口確認が必要です。
執筆者プロフィール

ウェブ・コピーライターとしてクライアントワークを中心に活動中。