日本では13人に1人が性的マイノリティがいます。
年代としては20代~30代が最も多く7割を占めている中、残りの3割は60代や70代の方も含まれており、幅広い年代に当事者がいることが分かります。
昔と比べて現在は認知度が広がっていますが、「男性は女性・女性は男性を愛する事が当たり前」の先入観を未だに持っている方が少なくないのも現状です。
性的マイノリティに配慮した意識改革や設備の発展が進んでいる中、性的マイノリティの人達が日常生活において困る点はまだ多くある事をご存じでしょうか?
異性愛者の人だと当たり前でも、性的マイノリティだと当たり前ではない日々の生活のストレスが存在します。
この記事では、性的マイノリティの人達が日常生活で困っている事について大きく3点ピックアップしました。
次で詳しく説明していきます。
トイレに気軽に入れない
性的マイノリティの人達にとって、トイレの問題は根強く残っています。
出生時に割り当てられる体の性別と心の性別が一致しない「トランスジェンダー」の方達は特に外出時でのトイレで困っています。
体は男性(女性)なのに心は女性(男性)である方が、男女別のトイレでどっちに入ればいいのかを迷ってしまう場面が多くあります。
多目的トイレ等の気軽に入れるような設備は増えてきてはいますが、地方や過疎地域等には未だ導入されていない所もあります。
すぐにトイレに駆け込みたいのに、周りの目が気になってどっちのトイレに入ればいいのか迷ってしまうのは嫌ですよね。
また、トイレを利用する際に周りの人に見られる事で、性的マイノリティである事が知られてしまうパターンもあります。
また、「性自認は女性」だと嘘をついて女性用トイレに入った男性が通報された事件もあることから、ますます性的マイノリティに対しての偏見が広がってしまう事が危惧されています。
当事者達は常に周りに配慮して生活しているのに、こういった悪意に利用されてしまうのはとても悲しい事だと思います。
【参考】https://www.asahi.com/articles/ASQ163TGKQ15PTIL010.html
今は目に見えて多目的トイレやジェンダーレスに配慮されたオールジェンダートイレの設置数が日本でも確実に増えてきています。
いずれはそのようなトイレが全国各地に設置されて、誰でも気兼ねなく使えるトイレが増えるといいですね。
性別に服装や髪型が左右される
近年、ファッションのジャンルにも「ジェンダーレス」や「ユニセックス」等が増えてきて、性的マイノリティに関わらず好きな服を選べる時代になってきました。
しかし、学校や会社では戸籍上の性別に服装や髪型が指定されてしまうところがまだまだ多くあります。
1.制服
かつては女性はセーラー服、男子は詰襟が一般的ではありましたが、性的マイノリティの認知が広がり、男女兼用のブレザータイプの制服や、女子制服にスラックスを導入する動きが増加しています。
「ジェンダーレス制服」の導入背景に関する調査によると、学校による生徒・児童への制服の配慮は進んでいる傾向にあります。
状況 | 割合 |
---|---|
服装による配慮をしている | 39.3% |
今は服装による配慮をしていないが、今後予定している | 20.3% |
配慮していない | 40.4% |
【参考】https://kanko-gakuseifuku.co.jp/company/press/6lgbtq-vol189
しかし、現状導入されていない学校が約6割で、性自認とは異なる性別の制服を着ざるを得ない性的マイノリティの児童が大半であることが分かります。
また、今までスカートのみだった女子の制服にスラックスを導入する中学・高校は増えており、約7割の学校がスラックス制服を採用しています。
一方で男子の制服にスカートの導入・着用の許可が出ている学校は約3割と少なく、スカート着用が許可されている学校であったとしても、実際にスカートを着用している男子生徒は1割未満と少ない現状にあります。
背景としては、女性はパンツやスカートを履く事が一般的なのに対して、男性はスカートを履く事が少ない傾向にある事から、周りの目を気にして履けない事にあると思われます。
【参考】https://kanko-gakuseifuku.co.jp/media/homeroom/vol211
文部科学省は2022年12月に、性的マイノリティの児童や生徒への配慮として、自身が認める性別の制服や体操着の着用を認めています。
これに従って、学校でも性的マイノリティの理解を深めるための教育や、生徒へのサポートケアも徐々に促進されています。
児童がひとりで悩まず性自認に従った制服を選べるようになるまで遠くはないかもしれません。
【参考】https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/04/1357468.htm
2.スーツ
学校を卒業すれば性別にこだわらず好きな服を着ることができるイメージがありますが、実は社会人になっても切っては切れない問題が存在します。
それは就職活動・転職などで着用しなければならないスーツです。
特に職種によっては常にスーツ着用を求められる企業も多々あります。
自身の性自認とは異なるスーツを毎日長時間着続けるということは、性的マイノリティにとっては毎日ストレスを感じます。
現在は性的マイノリティ専門のオーダーメイドスーツや、性的マイノリティを対象にしたスーツブランドがあります。
また、LGBTQフレンドリー企業など性的マイノリティが受け入れられやすい企業も多くなってきました。
LGBTQフレンドリー企業とは?
性的マイノリティに配慮した取り組みや支援を行っている企業のこと
LGBTQフレンドリー企業は、中小企業ではなかなか導入が進んでおらず選択肢が少ないことが現状にあります。
当事者としては性的マイノリティを会社や就職活動でカミングアウトした際に「嫌な顔をされたらどうしよう」「採用されなかったらどうしよう」等の不安が必ず存在します。
反対に、性的マイノリティであることを隠して過ごし続けるということは常日頃からストレスを感じ続けることになります。
銭湯や温泉のルール
日頃の疲れを普段のお風呂ではなく銭湯や温泉に行ってリフレッシュする人が多いかと思いますが、性的マイノリティにとっては気軽に利用できない問題があります。
銭湯・温泉においては、性自認の性別ではなく戸籍上の性別で男湯・女湯どちらに入るかが決められているからです。
公衆浴場のルール
外見が男性の場合は男湯・外見が女性の場合は女湯に入る
もしこのルールを破ってしまうと、建造物侵入などの罪に問われる可能性があります。
また、性的マイノリティの人が性自認に沿った利用(例:身体的には男性であるが心は女性の人が女湯を利用した場合)をした場合、周りの人からすると抵抗を感じてしまう人が大半であるといった調査結果もあります。
加えて多様性の受け入れを掲げたLGBT理解増進法が2023年6月に施行されましたが、この施行に伴って「外見が男性の人が女性風呂に入るのですか?」等の相談も実際にあったことから、水面下では性的マイノリティに対しての偏見が根強く残っているのが現状です。
【参考】https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/614487?page=2
こういった理由から、性的マイノリティの人達がルール以外にも様々の複雑な理由で銭湯・温泉を気軽に利用できないことが分かります。
では、「性的マイノリティの人は銭湯・温泉を性自認に沿って利用できないのか?」といわれると、まったく手段が無いわけではありません。
温泉には混浴や貸し切り露天風呂等の個人だけで利用ができる施設も探せば見つかります。
しかし、観光名所に多い影響で近場に無かったり、値段も普通の銭湯や温泉に比べると高いところが多く、「気軽に利用できる」とは言いにくいです。
また、都道府県等の自治体によっては条例で混浴自体に制限を設けている場合もあり、マナー問題で混浴文化自体が減少しつつあります。
せっかくリラックスするために銭湯や温泉に行きたいのに、我慢をしながら入浴するのではリラックスなんて出来ないですよね。
ただ悪いニュースばかりではありません。
温泉名所が数多くある大分県別府市は、性的マイノリティの人達が気軽に温泉を利用できる環境整備に乗り出しました。
市の観光協会や関係団体などで「温泉部会」をつくり、性的マイノリティを含め温泉の入浴に不安がある人に対して合理的な配慮がどこまでできるかを検討する予定とのことです。
【参考】https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20230628/5070016037.html
銭湯・温泉問題に関してはまだまだ性的マイノリティに対して、設備やサービスなど進んではおりませんが、別府市を先頭にこれから発展していくことでしょう。
まとめ
今回は性的マイノリティが日常生活において困る事を大きく3点ピックアップしましたが、これは氷山の一角でまだまだ問題は多く残されています。
学校や会社組織においても性的マイノリティに対しての教育や理解は目に見えて早く進んでいますが、理解をしていても差別・偏見の目が未だ強く残っている人も多く存在しています。
しかし全体的に見ると性的マイノリティが過ごしやすくなるような取り組みは、色んな角度から行われています。
国と私達が協力して動かなければ解決されない問題です。
最終的な解決に繋がるにはまだまだ時間がかかりそうですが、私達ひとりひとりの意識を変えていくだけで少しずつ性的マイノリティの人が過ごしやすくなるのではないでしょうか。
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