コロナ禍で障害者雇用市場はどのように変化した?2021年以降の展望

コロナ禍で障害者雇用市場はどのように変化した?2021年以降の展望

先行きの見えない新型コロナウイルス感染拡大。ウィズコロナ時代となった今、障害者雇用市場にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

来春、障害者を一定割合雇うことを義務付けた「法定雇用率」について0.1%引き上げる予定がありますが、その後、変更点などは出たのでしょうか。

この記事では、障害者雇用市場の実近データなどを見ながら、コロナ禍で起きている変化を見ていきたいと思います。また、障害者雇用をけん引する各企業の取り組み事例も参考しながら、2021年以降における同市場の展望を解説していきます。ぜひ参考にしてください。

コロナ禍における障害者雇用市場の現状

厚生労働省の実近データである、「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者数は560,608.5人。前年と比べて4.8%増加し、16年連続で過去最高となりました。

実雇用率(実際に雇用されている障害者数の割合)は、8年連続で過去最高の2.11%、法定雇用率達成企業の割合は48.0%に達しています。障害者雇用は浸透しつつあることがうかがえる結果と言えるでしょう。

【出典】令和元年 障害者雇用状況の集計結果

しかし、目下の新型コロナウイルス感染拡大を受け、障害者雇用市場に影響を与える可能性がでてきています。

ハローワーク業務統計によれば、障害者の解雇者数は2020年2月~6月にかけて計1104人、前年比16%増となっています。解雇者数だけでなく、2020年5月における新規求人数、新規求職申込件数、就職件数及び就職率についても、前年の同じ時期と比較して悪化しました。

【出典】第97回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)

厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会では、上記ハローワーク業務統計について、今後の見通しを前向きに捉えています。と言うのも、障害者雇用は一般労働者と比べて、就職件数や就職率の減少幅が少ないからです。

ただし、2021年1月に予定していた障害者雇用率2.3%の引き上げについては、コロナ禍による企業への影響を考慮し、2021年3月1日に延期しました(2020年8月末時点)。

【参考】第98回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)

新型コロナで変わる障害者の働く現場

実際、新型コロナウイルス感染拡大で障害者の働く場はどう変わったのでしょうか。オフィスや現場で仕事をする人の中には自宅待機を強いられ、収入も減少している一方で、ITなどもともとテレワークをしていた人はあまり影響を受けていません。

密になったり、対面したりといった今までの働き方がし難くなった今、障害者雇用でも働き方を変えていくしかありません。例えばテレワークの普及は、一部の障害者にとってはプラスになり得るでしょう。

通勤する必要がなくなることで、身体的だけでなく、精神的な負担を削減できることがあります。自宅で仕事ができれば、リラックスできストレスに悩むこともなくなるかもしれません。障害者も働きやすくなる可能性があるのです。

昨今はZoomなどのWeb会議ツールが普及したこともあり、テレワークのハードルも以前ほど高くありません。テレワークなら働ける障害者も多く、企業は地域を問わずに広く人材を求められます。

【参考】障がい者の在宅雇用導入ガイドブック

障害者雇用に積極的な企業の取り組み事例

従業員の誰もが、それぞれの状況に応じた働き方を選べるかが問われるようになりつつあります。障害者雇用に真摯に取り組み、法定以上の雇用率を達成している企業を紹介します。

障害者に特化したソーシャルベンチャー「ゼネラルパートナーズ」

東洋経済オンライン「障害者の雇用に積極的な企業ランキング100」で2年連続1位になった、ゼネラルパートナーズ。障害者雇用支援事業を核に多様な事業を展開するソーシャルベンチャーです。雇用率は20.53%(43人)。

例えば、同社で働く精神障害者の人材は、経済的自立と安定した就業ができるようサポートを受けながら、菌床しいたけの生産や販売をしています。精神障害者や知的障害者の働く場が不足する中、「きのこ事業」を立ち上げました。人材の最終目標は、一般企業への就職です。

食品トレー、弁当・総菜容器最大手「エフピコ」

前述のランキングで第2位につけたのは、食品容器製造の分野でシェア率3割を占める最大手、エフピコです。雇用率は13.60%(359人)。

障害者人材は、同社の基幹業務である「食品トレー容器の生産」と「リサイクル」の事業で働いています。例えば、食品トレーの生産事業では、容器の成形・組立加工や検品、包装までを担当。同社で働く障害者人材は「基幹業務で正社員雇用」という方針を貫き、即戦力として活かしています。

独立系エンターテイメント「エイベックス」

ランキング3位は、独立系エンターテインメント企業として有名なエイベックスで、雇用率は11.25%(27人)。障害の有無に関わらず、全ての社員が自分らしく挑戦し、活躍できる職場を目指しています。

同社はオープンポジションで募集し、本人の希望や経験・スキルなどを参考に最大限の可能性を探りながら部署を選定。一般事務や現場アシスタント業務(資料作成、伝票起票、ファイリング、庶務)などですが、障害者のために用意した業務を担当するわけではありません。また、カウンセラーを配置するなど、障害者雇用の安定化にも取り組んでいます。

【参考】
「障害者の雇用」に積極的な企業ランキング100 | 企業ランキング | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
株式会社ゼネラルパートナーズ~ソーシャルビジネスで社会問題を解決するベンチャー企業です~
食品トレー容器のエフピコ
エイベックス株式会社

障害者雇用における2021年以降の展望

新型コロナウイルス感染拡大は、障害のあるなしに関わらず、多くの人々の働き方を変えました。テレワーク導入やオンラインでの採用活動の必要性なども高まるなど、新たな雇用スタイルが定着し、2021年以降は障害者雇用も更なる拡がりを見せることが予想されます。

障害者雇用率2.3%の引き上げについては、2021年3月1日に延期されるものの、その重要性に変わりはありません。誰もが働きやすい環境の整備は、企業にとって多様な人材を確保するという面でも重要です。

また、厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会などが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた新たな働き方を推進するための施策を検討しており、公的な後押しにも期待ができそうです。

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