「知らなかった!」日常生活に潜むユニバーサルデザイン5選【第二弾】:暮らしを支える「見えない工夫」

「知らなかった!」日常生活に潜むユニバーサルデザイン5選【第二弾】:暮らしを支える「見えない工夫」

前回の記事では、公共交通機関から情報表示システムまで、私たちの日常に溢れるユニバーサルデザインの事例を7つご紹介しました。(▶︎まだ読んでいない方はこちら:「知らなかった!」日常生活に潜むユニバーサルデザイン7選

今回は第二弾として、さらに「言われてみれば!」と膝を打つような、身近で気がつきにくい5つの工夫に焦点を当てます。
ユニバーサルデザインは、特定の誰かのためだけでなく、私たちすべての人の暮らしを快適にするための「思いやり」の設計思想です。年齢、能力、状況に関わらず、誰もがスムーズに、そして安全に利用できる工夫は、私たちの暮らしを根底から支えています。
前回のおさらいとなりますが、ユニバーサルデザインは既に存在する障壁を取り除く「バリアフリー」とは異なり、最初から誰もが使いやすいように設計するという、より包括的かつ根源的なアプローチです。

この記事を読めば、あなたの日常の風景がまた一つ変わり、私たちがどれほど包摂的なデザインの恩恵を受けているのかを再認識できるでしょう。それでは、私たちの無意識の快適さを作り出している、新たな5つのユニバーサルデザイン事例を見ていきましょう。

新たに発見する「なるほど!」ユニバーサルデザイン事例5選

私たちの周りに溶け込みすぎて、もはや意識することすらないデザイン。しかし、その一つ一つが、多様な人々への配慮に基づいています。ここでは、その中でも特に気づきにくい、しかし重要な5つの事例を紹介します。

1. レバー式・自動水栓(蛇口)


キッチンや洗面台の蛇口で、ハンドルをひねるのではなく、レバーを上げ下げするだけで水の量や温度を調整できるタイプや、手をかざすだけで水が出る自動水栓が増えています。これは、ユニバーサルデザインの「少ない身体的な負担」と「公平な利用」の原則を満たす優れた例です。

【高齢者や握力の弱い方】
ハンドルをひねる動作は、関節炎などで握力が弱い人には大きな負担になりますが、レバー式や自動水栓なら軽い動作で済みます。
【手がふさがっている時】
料理中や育児中など、両手がふさがっている状態でも、肘や手の甲、あるいはセンサーで簡単に水の出し止めができます。
【衛生的】
自動水栓は、手が汚れている状態でも蛇口に触れる必要がないため、非常に衛生的です。

このデザインは、誰もが無理なく、清潔に水を利用できる環境を提供しています。

2. コンセントの抜き差ししやすい工夫(指をかける穴など)

壁のコンセントに差し込まれたプラグ。引き抜く際、硬くてなかなか抜けなかったり、コードを引っ張ってしまい断線の原因になったりした経験はありませんか?
最近の延長コードや一部の家電製品の電源プラグには、プラグの根本付近に指をかけて引き抜きやすいようなくぼみや穴が設けられているものがあります。
これは、小さな力でプラグを安全に抜き差しできるようにするための工夫で、ユニバーサルデザインの「少ない身体的な負担」と「間違いの許容」を考慮した設計です。コードではなくプラグ本体を持って操作することで、断線のリスクを減らし、誰もが安全に電気製品を利用できるようにしています。

3. 開けやすいパッケージ・フタ(プルトップ、段差つきキャップなど)

商品のパッケージやフタにも、開けやすさへの配慮が進化しています。

【プルトップの改良】
缶詰や缶飲料のプルトップ(開封用のつまみ)は、指を引っ掛けやすいようリングが大きくなったり、弱い力で開けられるよう素材や形状が工夫されています。
【段付きキャップ】
ペットボトルや調味料のキャップで、指に引っかかりやすく、軽い力で回しやすいようにギザギザや段がついているものがあります。
【切り口の工夫】
お菓子や食品の袋の切り口に、ハサミを使わなくてもまっすぐ、そして軽い力で開けられるようにV字の切り込みや特殊な素材が使われていることも、ユニバーサルデザインの一環です。

これらは、子どもから高齢者まで、誰もが商品の内容物に容易にアクセスできるようにするための「利用における柔軟性」と「少ない身体的な負担」に基づいたデザインです。

4. 郵便番号欄のガイド枠

手書きの郵便物を出す際、ハガキや封筒に印字されている郵便番号の枠も、実はユニバーサルデザインの機能を持っています。
このガイド枠は、私たちが正確な位置に数字を書き込むのを助けるだけでなく、機械(郵便区分機)が文字を読み取りやすくするための手がかりにもなっています。書き損じを減らし、手書きの能力に関わらず、郵便物が確実に配達されることをサポートしているのです。
これは「間違いの許容」と「単純で直感的な利用」の原則が組み合わさった例です。私たちの手書きをサポートしつつ、システムの処理効率と正確性も高める、目立たないけれど重要なデザインです。

5. 温度調節機能付きの電気ケトル・給湯器

最近の電気ケトルや給湯器には、沸騰させるだけでなく、好みの温度に設定できる機能(例:80℃、90℃など)が搭載されているものが増えています。
この機能は、単なる「便利」を超えたユニバーサルデザインの側面を持っています。例えば、熱いものを扱うことに不安がある方や、特定の病気や体質で熱い飲み物を避けたい方でも、自分の安全と快適さに合わせて利用できる柔軟性を提供しています。
また、赤ちゃんのミルク作りなど、特定の温度が求められる用途においても、正確かつ迅速に対応できるため、「利用における柔軟性」と「単純で直感的な利用」を体現しています。

ユニバーサルデザインが未来を形作る

今回ご紹介した5つの事例は、私たちの生活の「ちょっとした不便」を解消し、誰もがストレスなく活動できる環境を静かに整えてくれています。
ユニバーサルデザインは、特定のマイノリティのためだけの特別な配慮ではありません。それは、私たちが一時的に怪我をした時、あるいは年齢を重ねた時など、誰もが直面しうる「不便」を社会全体で解消しておくための、持続可能でインクルーシブな社会の基盤です。
これらの「見えない工夫」に意識を向けることで、私たちは身の回りの世界に対する感謝の念を深め、より思いやりに満ちた社会の担い手となることができるでしょう。
あなたは、今日新たにどんなユニバーサルデザインを発見しますか?

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