障害者から見ても企業から見てもハローワークが最強なワケ

障害者から見ても企業から見てもハローワークが最強なワケ

障害者の方が仕事を探す場合、そして企業が障害者雇用に向けて求人を検討する場合、最初は「ハローワーク」の利用が入り口となるのではないでしょうか。

障害者を専門としている求人サイトや人材紹介といったサービスも数多くありますが、障害者と企業双方の視点で総合的に考えると、「求人~継続雇用」という流れの中で安定した雇用機会が得られるのはまずハローワークが挙げられます。

しかし、最近では利便性の高い充実したサービスを提供する障害者向けの求人サイトも増えてきました。

では、実際にハローワークと一般の求人サイトのどちらを利用すべきなのか。今回はそんな疑問に対し「ハローワークが最強」とも言える理由をサービス内容や利用料金など多角的な視点で解説します。

媒体別の求人募集の数を比較

障害者の方が仕事を探すとなると、「ハローワーク」「一般の求人」の2つの選択肢になることが多いと思います。

他にも就労支援事業所や人材紹介サービスといったものがありますが、求人というよりマッチングの要素が強いため、ここではハローワークと一般の求人情報サイトで求人数を比較いたします。

【ハローワークと一般求人サイトの求人数】
ハローワーク 18113件

障害者専門求人サイトA 144件
障害者専門求人サイトB 98件
障害者専門求人サイトC 1704件
障害者専門求人サイトD 132件
障害者専門求人サイトE 444件

※2019/2/16時点

求人数の違いは、企業が求人募集をする際の料金が有料か無料かの違いや障害者雇用の給付金目当て、事実と異なる求人を出してもペナルティが無い事などが要因だろうと考えられます。

一般の求人サイトは、数百件か1000件台という求人数がほとんどですが、ハローワークは1万件を優に超えています。

よって、障害者の方が掲載数の多く幅広いジャンルで求人情報を探すのであれば、まずはハローワークが第一の選択肢になるでしょう。

障害者向け求人サイトの支援・活動内容、サービス比較

障害者向けの求人・転職サイトは、求人情報だけを掲載する会社だけでなく、就労移行支援事業を並行して運営するものからカウンセリングが受けられるサイトなど形態は様々です。

ただ一つどのサイトも共通しているのは、サポートを受けられるのは「雇用されるまで」という事です。

つまり、就職に向けてのキャリアカウンセリングやスキル習得のサポート、履歴書の書き方、面接の方法など、就労までの基本的なサポートには期待できますが、雇用契約後のアフターフォローはされません。

一方ハローワークは、障害者と企業の間に立って職業相談や職業紹介を行いつつ、求人情報を公開しています。また、「障害者」「企業」という両者の視点から、以下のようなサポート活動も行っています。

〈障害者側へのサポート〉
・専門の相談員が障害の特性や状況に合わせて、職業相談や職業紹介、また職場適応指導を行う
・面接への同行や職業訓練、トライアル雇用、ジョブコーチなどを各機関と連携したチームで支援する
〈企業側へのサポート〉
・障害者を採用するにあたっての、雇用管理上の配慮などについて助言を行う
・地域障害者職業センターなど、障害者雇用の相談ができる専門機関を紹介する
・各種助成金の案内を行う
〈両者にメリットのある活動〉
・就職面接会や職業相談会を開催する
・障害者求人の開拓や、一般求人の中から障害者求人へ転換できそうな会社への勧奨を行う
・障害者雇用率の低い企業に対する求人開拓と、障害者へは雇用率未達成企業への職業紹介を行う
・障害者雇用率が著しく低い企業に障害者雇用計画の作成命令や実施勧告等を行う

ハローワークは仕事を探す、もしくは求人を掲載するだけでなく、障害者雇用に関係する様々な支援機関と連携し、就労支援と就労後の職場定着支援、さらに生活面の支援も含めた相談やフォローアップも行っています。

実際にハローワークを利用したユーザーによりサービスの質に関しては意見が分かれるところですが、窓口で色々と相談できるという点で「ハローワークが良い」とする意見はよく見られます。

募集・応募の際の利用料金を比較

最初にもお伝えしましたが、ハローワークの求人情報を障害者が閲覧したり、企業が求人情報を掲載するといった利用は全て「無料」です。

それだけでなく、障害者を雇用する企業は、トライアル雇用助成金や職場適応援助者助成金(ジョブコーチ支援)、職場適応援助促進助成金など、様々な助成金の支給が受けられます。

一般の求人サイトによる障害者雇用でも助成金は受け取れますが、一般の求人サイトの場合、「広告費」や「成功報酬」等が発生するため、助成金が広告費に消えてしまうといった可能性も考えられます。

ここで、各求人サービスや就労支援事業について、障害者と企業での利用料金の違いをまとめてみましょう。

【ハローワーク】
障害者:無料/企業:無料
【一般求人サイト】
障害者:無料/企業:有料
【就労支援事業所】
障害者:低所得や生活保護以外は有料/企業:事業所の求人サイトへの掲載は有料
【人材紹介サービス】
障害者:無料/企業:有料

企業側にかかる実際の費用は媒体によりまちまちで、障害者向け求人サイトのほとんどが掲載料などを開示していないため、どの程度の費用になるかは不明です。

ただ、一般の求人サイトの広告料の例を考えると、障害者向けの求人サイトもおそらく同水準か同等以上ではないかと推測されます。

【一般の求人サイトの広告料金例】

〈求人サイトA〉
スタンダードプラン:1週間3万円
プレミアムプラン:1週間20万円
〈求人サイトB〉
A~Dプラン:2~7万円
プレミアムプラン:10~40万円
〈求人サイトC〉
スタンダードプラン1週間:6万円
スタンダードプラン1か月:15万円

一部ではありますが、就労移行支援事業所で求人サイトを開設していたり、一般企業でも完全無料で利用できる障害者向けの求人サイトもあります。

ただ結局のところ、それらは就労移行支援事業所が雇用主となって企業から業務を受託していたり、就職率を高くするため求人掲載する企業の条件をかなり狭めているなど、よくある求人サイトとは少し中身が違います。

求人数、充実したサポートの有無、そして利用料金の有無という、障害者と企業側にとって大事な点で考えると、やはりハローワークの利用が最強と言えるのではないでしょうか。

ハローワークを利用する際のデメリットや注意点

ハローワーク推しの内容ばかりになりましたが、ハローワークを利用することへの懸念やデメリットがないわけではありません。

そもそも先ほどお伝えした「無料で利用できる」というのは間違いなくメリットですが、逆にデメリットや改善点、課題と言える点もあります。

  • どの企業も無料で掲載できるため、質の悪い求人も存在する
  • 競争の原理が働かないため、就職相談員のマッチング能力が高いとは限らない
  • 障害者雇用率のため、仕方なく求人を出しているだけの企業もある
  • ハローワーク求人サイトは見づらく、使い勝手も良いとは言えない
  • 相談員の対応やサービスの質が地域により良い場合と悪い場合がある

現在は人手不足ということもあり、積極的に障害者雇用を進める会社も増えてきていますが、それでも「低賃金」「支援体制が未整備」「障害者への理解が浅い」など、まだまだ課題は山積みの状態です。

ただし、「無料での掲載=求人情報の質が悪い」とは必ずしも言えません。

ハローワークは支援機関との連携を前提にしており、就職前から雇用後まで一貫したサポートが受けられます。

これは障害者、企業のどちらにも偏らない、Win-Winの関係を築ける大きなメリットであり、障害者から見ても企業から見てもハローワークが最強と言わしめる理由とも言えるでしょう。

まとめ

ハローワークと一般の求人サイトを比較する記事やブログ等を見ると、サービスや対応の面では一般の求人サイトを推すものに大きく偏っているケースが非常に多くなっています。

ハローワークを推す記事をお目にかかる機会はほとんどありません。

ただ実際には、ハローワークはそこまで邪険にするようなものではなく、本記事でもご紹介したとおり、金銭的な利害関係のない中立な立場で総合的に障害者雇用を支援しているのがハローワークです。

多くの記事がアフィリエイト等による報酬狙いで書かれたものであるため、あまりに転職サイト推しのものを信じすぎるのも良いこととも言えません。

「求人」という枠組みで考えると、事業規模によりサービスの質に偏りがある民間の求人事業を最初から利用するよりも、まずは無料で利用でき、職探しから安定雇用までをワンストップでサポートしてくれるハローワークを利用するのが、障害者と企業にとっての最初のステップと言えるのではないでしょうか。

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