【matsuri technologies株式会社】年間1億人~日本の観光立国に向けて~サポート企業インタビュー

【matsuri technologies株式会社】年間1億人~日本の観光立国に向けて~サポート企業インタビュー


今回のサポート企業インタビューは、matsuri technologies株式会社の創業者であり代表取締役CEOの吉田圭汰さんです。

起業家精神に溢れ、学生時代から様々な事業にチャレンジしてきた吉田さんは、2016年にmatsuri technologiesを設立しました。
同社はテクノロジーを駆使しながら様々な実績を積み重ね、急成長を遂げています。
matsuri technologiesさんの立ち上げについてのお話をはじめ、主力の民泊事業においてテコロナ禍をどのように乗り越えたか、また福祉施設との協業、そして将来のビジョンなど、詳しくお聞きしました。

ビジネスや経営にまつわる魅力的なお話が盛りだくさんとなっております、ぜひご覧ください!

こちらの記事は動画でご覧いただくこともできます。(福祉.tv公式YouTubeチャンネル)

吉田さんのプロフィールを教えてください。

2011年に大学に入学したんですけど、3.11で学校があまりなくてですね、やる事があまり無かったんです。学校も休みになり、震災の影響で時間が沢山あったので、「何かより大きな影響を作れる様な仕事ってなんなんだろう。今後生きていく中で、どういう風な事をしたら、震災の時に募金箱にお金を入れるだけ以外の事が出来るんだろうか?」という事を考えていた時に、やはりテクノロジーだと。何を言うにしても「○○×テクノロジー」だったりとか、「スマートフォンがすごい」とか、2011年は本当にテクノロジーが世界を変えそうだという所でした。これにすごく惹かれてiOSのアプリを作り始めました。

自分が作ったアプリが、皆のiPhoneにダウンロードする事ができる様になったとき、やっぱりすごく感動しましたし、この人生自体をソフトウェアというか、IT産業に捧げたいなと思いました。
とはいえ、商売のやり方が分からなかったので、2013年に色んな仲間を誘って、最初の会社を立ち上げキュレーションアプリを作っていました。実はその当時、スマートフォンのアプリはそんなに数なく、あの時はアプリを作れる人がほぼいなかったこともあり、アプリをだすと勝手に10,000ダウンロード、20,000ダウンロードと、月でどんどんダウンロードされましたね。
その後、KDDI∞LaboというKDDIのインキュベーションの人から誘われて、「今の製品だと新規事業じゃないからダメだけど、新しい事業を作って応募するならスタートアップっていうものを教えてあげるよ」というところで、いくつかのプランを持って、プレゼンをして、新しい事業と共に『KDDI∞Labo』に選抜されました。『マカロン』という、『Gunosy』とか『SmartNews』のような、キュレーションをしていく様なアプリケーションの軸自体はすごく僕はしっくりきていたので、これに近い事業をやりたいと思い、男子大学生3人のチームが「女性の女性による女性のためのキュレーションアプリを作ります」というものを提案しました。

当時、やっぱりキュレーションアプリというのは、その人の情報を、知りたい情報をより高効率で届けるという元で作られていてすごく伸びていましたが、やっぱりテック業界なので、『GIZMODO』や『TechCrunch』そういうのばかりに寄ったキュレーションなどが多かったんです。ですが、そうではなく、これが本当に正しいテクノロジーの潮流なのであれば、女性向けだったりとか、例えば40代男性向けだったりとか、様々な方々の特性に合わせてアプリの入口は変わるはずだと考えました。その中でも、「女性向けってすごく少なかったよな」というところで女性向けのキュレーションアプリを作りました。

最初の企業で学んだことやmatsuri technologiesを始めたきっかけについて教えてください。

21歳でアクセラレーターが少ない時代の中で実際アプリケーションが完成してリリースをしたんですけれども、徐々に伸びていくというところの中で、色々なベンチャーキャピタルや証券会社、様々な大人が「有望そうなんじゃないか」「俺が上場させてやるよ」みたいな感じで会いにきました。

そんな感じの人達が沢山来る中、やっぱりちょっと怖くなってたんですよね。
「自分が作ってる物はテクノロジーの潮流的にはあり得るが、本当にこれがすごく伸びるのかは分からない」「預かった事がないようなお金を預かるのも怖かった」ですし。
やっぱり自分の責任の外の物をやれるのか分からないと。

なので当時は「今ここで広告費がいっぱいあったら伸びそうだな」と思った時でもやっぱりお金は受け取れなかったですね。結果、様々な競合が出てきて、もう広告の打ち合いになってボロ負けするという状況でした。
それで思ったのは、「商売は機会がすごく重要である」と。「その瞬間、適切な時期に、適切な事ができなければ、どんなに良いプロダクトを作ってもダメ」だと。

そういった意味で自分の最初の会社を振り返ると、とにもかくにも勇気が足りなかったですね。やっぱり勇気がなければ、全てが始まらないなと思い、前の会社でやっていた事の逆をやろうと思いました。
プロダクトにこだわって、「すごい製品があればお客さんが使ってくれるはずだ」と思いましたが、そもそも、「本当に必要なものじゃないとお客さんは使ってくれないはずだ」と。他人のお金を預かるのは、非常に怖いがそもそもすごく大きな会社を作る時に、どこかしらで必ずお金を預かる。であれば、最初に預かるべきだなと。

なので、次の会社は、その会社のCTOも引き連れて新しく創業し、最初から資本を入れて、勇気を持って取り組もうというところで、この『matsuri technologies』という会社をはじめました。そもそもそれで上手くいかなかったら辞めようと思っていましたね。

matsuri technologies株式会社について教えてください。

プロダクトではなく、お客さんを見ようと。
それをどういう風にやったらできるるかなっていうところで、今もすごく大きな会社を経営されているとある社長に相談に行ったら、「吉田君は性根が腐ってるというか、ちゃんと叩き直してもらった方がいい」と言うところで、デジタルガレージという会社がやっている『Open Network Lab』というアクセラレータを紹介されてそこに伺う事になりました。

行ってみると、『リーンスタートアップ』と言われる、「スタートアップをどれだけ失敗しても、軽く失敗をする事で、より次の成功に繋げていく」という方法なんですけど、これを本当に実践している方達で、ここに入れてもらったら自分のプロダクトアウトが直るんじゃないかというところで入れていただき、二期を通して、自分の考え方が変わり、今までは商売をするという事は今まではかっこいい水を売ろうとしていましたが、そうではなく、砂漠にいる人達に「水要ります?」って聞く事なんだと。

つまり、プロダクトではなく、お客さんを見ようと。かっこいい表紙のパッケージの水を作って売るとかはかっこいいとは思うんですけど、そういうのではなくて、砂漠まで水を一生懸命運んで、困ってる人に「水要ります?」って言ったら、お金いっぱい払ってくれる訳ですよね。
これがやっぱり重要だなっていうところを学びました。自分の発想をプロダクトからではなくて、お客さんが欲しいもの、お客さんが困ってるものに切り替える時期だったので、この時期が一番厳しかったと思っています。

民泊事業への参入について教えてください。

そこからいろいろあり、今の事業の『民泊』というところに行き着くのですが、行き着いたのは、まだ法律とかも設定されてない中で運営されていた事業でした。

その事業の中でカスタマーサポートが大変な事業で困ってるという話を受けてそれをお助けしたりと、そういったところで実際にペインを解決する事を通じて、このマーケットを知りましたが、非常に不思議なマーケットでした。
2,000万人くらいインバウンドがいる中で、その中の500万人ぐらいが、これは住宅なのかホテルなのかよく分からない所にインターネット上で場所を借りて日本に来てるぞと。友達なのかも分からない、宿泊なのかも分からない。とにかくふわふわしたマーケットでした。
ただ、すごく伸びているというところで、どういう風な形だったら我々はこのビジネスに参入できるのか考えました。運営は法律がちゃんと固まるまではやめた方がいいという弁護士のアドバイスを元に、周りのソフトウェアを作ったり、カスタマーサポートするというところからこの会社を始めましたね。

実際そういうものをやっていくと、めちゃめちゃチャットが来て、大変なんですけど、面白くて。
みんな日本に来たい人達が来るので、例えば、「隅田川の花火大会っていつなの?」と聞かれて、それを返していくなど。そこから、こんなに日本に来たい人達が沢山いるんだなと思い、観光立国という事自体にすごく興味が出てきました。調べていくと、政府も「来日するインバウンドは4,000万人、その次が6,000万人だ」と言って、法律もできるというところだったので、ここをまず最初のポイントとして定めるという意味ではいいんじゃないかと考えました。

最初、2016年に創業した当時は、民泊という場所を完璧に我々の最初のマーケットにするかどうかと非常に悩んでいたのですが、2017年、2018年になってくると法律も固まってきて、マーケットの状況も理解でき、このマーケットというのは、「より大きな次のマーケットに繋がっている。かつ国が伸ばしていきたい。そしてテックが絡んでくるマーケットだ」と思ったので、このマーケットをやっています。

カスタマーサポートから始めたところから、今は法律がクリアになり、運営もできるというところで、住宅宿泊事業法や住宅宿泊管理業、住宅宿泊仲介業など様々な連接をとり、2,000室以上の物件を全国で運営・管理させていただいています。
『Airbnb』というプラットフォームを通して、観光客の方達に貸出をしたり、年間180日が上限の宿泊の残りの部分をマンスリーマンションとして法人の方達が研修をしたり、出張したり、そういう所に貸出しする事をしています。

コロナ禍をどう乗り越えたか教えてください。

コロナにより、インバウンドで使われてた部屋が全部空いてしまい、賃料を全て払っているので大打撃を受けてしまったこともありました。

その当時、空港から家に帰る時には2週間自主待機をしなければならないという法律というかルールがあり、空港から「自主待機をしないと空港から出られない。けど、ホテルに電話しても、どこも『2週間空いてない』と言われています」と電話がかかってきて。私は「そんな訳ないじゃないですか」と。「インバウンドいないし、今旅行に来る人もいないから、ホテルなんて全部ガラ空きですよ」と。
でも、「ないんです。僕は空港で段ボールで包まれて寝てます」って空港の方は言ってて。それで調べてみると、コロナの時って、コロナっていうものがついた瞬間に、本当は旅館の人やホテルの人は宿泊拒否してはいけないんですが、その可能性がある人達を受け入れたくないっていうので宿泊拒否していました。「2週間…」って言った瞬間に切られるみたいな状態だったんですよね。
僕らも、空港で配ってるリストに全部電話したら全部断られましたね。でも、これはすごくいいなと思いました。なぜなら、ホテルの人達は偏見からその人達を受け入れてないと。これは私たちにとってすごく大きなビジネスチャンスだなと思いました。

電話を受けて、その夜ぐらいに『一時帰国.com』とホームページを作って、帰国をする時の隔離施設のサービスをプレスリリースで売ったら、1日で140、150件の問い合わせがきてほとんど成約です。
全部、皆使ってくれるというので、「ありがとうございます」という形で。それでコロナで8割ぐらいお客さんがなくなったところから、次の月にはもう稼働が7、8割くらいまで回復したので、一応部屋を埋める事には成功しました。
家賃も支払いできるし、ビジネスとしては粗利が出る状態までは次の月から戻せたという状況でしたね。

matsuri technologies株式会社の「強み」を教えてください。

凄いというか、不思議な人が沢山いて。結構前向きな人が多いところですね。
凄く頑張っているし、頑張っているというよりか、凄く新しいものを作っていると。
これは本当に凄く嬉しいなと思ってます。ここは多分、1番凄いかなと思ってます。

あとは、会社としてもやっぱり、成長率がある程度高いので、3倍になると全てが変わってしまうみたいな話の中で、2年、長くても3年で3倍になるので、全部が日々変わっていかないと難しいんです。
これ、人間が普通に生きてる営みの中で言うと、めちゃめちゃ嫌だと思うんですね。痛いし、細胞の入れ替えなんで。これを自分事として捉えて、1つずつそれを作っていける人達が沢山いるのは、本当に凄い事だなと思っています。

障がい者福祉の施設との協働と今後について教えてください。

障がい者福祉施設をご紹介していただき、「こういう風に仕事をお願いできるんだ」と理解して「すごいいいな」と思いました。システムの根本的な僕らの考え方というのは、「分割すれば誰でもできる」なんです。例えば、「ホテルの清掃をした事がない人をホテルの清掃にちゃんと仕立て上げる」など。

今だと、専門の人が来てやりそうなスマートロックの取付を、清掃員の人が鍵を外して取り付けたりするんです。いくつかのポイントを分割してあげれば、誰でもできるんですよね。
そう考えた時に多くの仕事っていうのは、その人の能力の話もあるのですが、「ちゃんと分割してあげれば、その人に向いたものがお渡しできる」と。
障がい者施設の方のお話を聞いた時に、「こういう事ができる」「こういう事ができない」、色々あると思うんですけど、僕たちの会社はそこに力を入れている会社なので、我々の分割していく度合いからすればご一緒できる場所があるんじゃないか、これは我々が目指している「ソフトウェアと人間が融合して、新たなオペレーションを切り開いていく」という意味で言うと、すごく分かりやすいなという風に思ってご一緒させていただいております。

まだ今の所は、お部屋を我々の会社が作り、その部屋の掲示物をポップで作っていただいているという状況です。
今後、物件がどんどんアップデートされていくというところで、普通ホテルでは張り替えるのが大変なポップでも、我々は、今の自分達の製品の事をホテルの客室とは思っておらず、OSのような物だと思っているので、より良い周知の方法があるのであれば、そこを一生懸命やっていきたいと思っています。

実際に今も、「じゃあ、ポップ貼り替えましょう。2,000室です」「ゴミ箱の分別はこういう風にしたらもっと良くなるから、こういうシールを作りましょう」「3つ分けるから6,000枚です」みたいな、そういう感じなんですよね。
これをやっていく中で役割を分担してお願いできる所があればすごくどんどんアップデートができる。
この発想自体が、ソフトウェアに結構近いと思っていて。ソフトウェアってアップデートする時に大変なものが、コードが動けば人の手を介さないのでローコストでできるので、どんどん進化ができると思うんです。
やっぱりここを、様々な方達のお力を借りてアップデートができるようになれば、新しい製品が作れるので、そのために障がい者の方達ができる事にお願いをする事もあると思いますし、僕の暇な時間にスマホでやる事もあると思います。
様々な時間の価値っていうのは、その人の集中力や能力などで変わってくると思うんです。これを使い分けて、よりインターネット的なアップデートができるような状態を作りたいと思っています。
仕事は凄く沢山ありますし、これとできる事を合わせてご一緒できるとすごくありがたいなと思っています。複雑性より「分割して単純にしてそれを一緒にやっていけるものがどんどん作れると嬉しい」と思っています。

障がい者福祉施設の方達の上にフランチャイズみたいな形でそういうものの概念があると、大きい仕事、早い仕事も受けやすくなるんじゃないかなと思っています。
そういうのがあると、「じゃあ軽作業に関しては、そこにお願いしよう」みたいなところが出てくるんじゃないかと思いました。

最後に、matsuri technologies社の展望について教えてください。

我々がやっている『民泊』という事業は、世界でいうと、もう実は10%超の人が使っているサービスです。
アメリカやオーストラリアだと、20%近い割合の形の人たちが民泊を使っています。
これは、旅行がどんどんライフスタイルに近づいてきており旅行日数も長くなっているからです。

この先、AIで人が暇になった時にやることは旅だと思ってます。その時に「長期化した旅に必要なのは、キッチンとある程度広い空間」だと思ってます。
実は、ホテルもその用途を満たしている場所ももうすでにあり、バケーションからライフスタイルに移り変わっていく中でいうと、住居に近いような、まさに民泊が支持されている理由なのかなと思っています。

これが全世界的な潮流となる中で、日本ではまだ1%ぐらいのシェアしかないと。
これは法規制の問題や、民泊業界っていうもの自体がちゃんとまだやり切れていないっていうところがあると思います。
なので、ちゃんとある程度のパーセンテージまでもっていって、日本の観光立国をする中で適切な到着地を作るということをやっていきたいと思っています。
これは最終的にこの国の中ですごく重要な事だと思っていて、今、政府が「観光立国2030年6,000万人」って言ってるんですが、これは大風呂敷を広げるなら出来るだけ早期に1億人にしたいですね。
なぜなら、この国は人がどんどん減っていく中で、2050年になると街の2割がなくなっていくみたいな状態だからです。
人が減っていく中でまだ魅力や文化が完全に消えてない中で、どれだけ関係者人口が増えるか。
「日本という国はすごく面白いからまた来たい」もしくは、「またちょっと住んでみてもいいかな」という風に思ってくれる人達をどれだけこの100年間で作れるかが、この国が次の100年間どうなるかにかかってくると思っています。
そうすると6,000万人では足りないと。6,000万人で100年間やっても60億人になると。1億人で100年で100億人に来てもらうと。そうすると、その中で様々な文化が混ざって我々の国の人口が増えることもあると思いますし、増えなくても1億人の人が常に日本列島を周遊していると。
それはすごく「我々が保全したい街や、このままいくとなくなってしまう街が生き残る可能性があるんじゃないか」と思っています。この絵をより大きく作り変えて観光立国をしたいと思いますし、将来の人口状態が変わるという所を目指して行きたいなと思っています。

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