「障害者雇用率が高い会社」ランキング(2024年版)

「障害者雇用率が高い会社」ランキング(2024年版)

「障害者雇用促進月間」が9月に設けられ、この機会に東洋経済社が「障害者雇用率ランキング」を毎年発表しています。このランキングでは、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2024年版に掲載された1,714社のうち、2022年度に障害者を3人以上雇用している1,198社を対象としています。
「障害者雇用促進月間」には、国や地方公共団体が中心となって、障害者雇用に関するセミナーや事例紹介などのイベントが数多く開催されます。障害者雇用に関心を持つ企業の担当者にとって、こうしたセミナーは有益な情報源となるでしょう。

障害者雇用制度の変遷

1.障害者雇用率の起源と法改正の歩み

障害者雇用の基準となる障害者雇用率は、1960年に「身体障害者雇用促進法」に基づいて開始された制度に端を発します。1976年の法改正で法定雇用率の達成が義務化され、雇用給付金制度も導入されました。その後、1987年に法令名が「障害者雇用促進法」へと変更され、1998年には知的障害者も雇用義務の対象に含まれるようになりました。2018年には、発達障害を含む精神障害者も雇用義務の対象となり、制度の対象範囲が大きく拡大しました。

2.令和6年度からの法定雇用率の段階的引き上げ

2024年4月から民間企業の法定雇用率が2.5%へと引き上げられ、従業員40人以上の企業に障害者雇用義務が生じることになりました。2026年度にはさらに2.7%へと引き上げられる予定です。また、一部業種に設定されている除外率も10ポイント引き下げられることが決まっており、この除外率引き下げは令和7年度から適用されます。

2024年版 障害者雇用率の高い企業TOP10

それでは、東洋経済社が発表した「障害者雇用率ランキング」の上位10社を見ていきましょう。各社の特徴的な取り組みを紹介します。

順位 会社名 雇用率(%) 雇用人数(人) 業種
1 ゼネラルパートナーズ 16.60 35 サービス業
2 ハウスコム 16.07 21 不動産
3 エフピコ 12.50 365 化学
4 MRKホールディングス 8.00 4 小売業
5 キトー 6.89 35 機械
6 関通 6.29 26 倉庫・輸送関連業
7 JSP 5.78 49 化学
8 コンセック 5.37 13 卸売業
9 AOKIホールディングス 4.89 6 小売業
10 ファーストリテイリング 4.60 1,111 小売業

1位 ゼネラルパートナーズ

7年連続1位のゼネラルパートナーズは、2024年時点で16.6%(35人)の障害者雇用率を誇ります。障害者向け人材紹介や求人情報サービスを提供するほか、就労継続支援A型事業所「アスタネ」を運営。菌床シイタケの生産・販売を通じて障害者の経済的自立と安定就労をサポートしています。同社では、管理職を含む全部門で障害者が活躍しています。

2位 ハウスコム

大東建託グループのハウスコムは、2024年現在16.07%(21人)の障害者を雇用。「障害者共働プロジェクト」を通じて、障害者と健常者が共に働く職場環境の構築に取り組んでいます。ユニバーサル自動販売機の導入やコミュニティサイト作成など、多様な社員が安心して働ける環境づくりを進めています。

3位 エフピコ

食品容器大手のエフピコは、特例子会社エフピコダックスを通じて12.5%(365人)の障害者を雇用(2024年時点)。全国各地の事業所で、生活基盤を変えずに働ける環境を整備しています。知的障害者支援団体との連携も深め、多様な背景を持つ社員の活躍をサポートしています。

4位 MRKホールディングス

RIZAPグループ傘下のMRKホールディングスは、2024年現在8.0%(4人)の障害者雇用率。主に事務・アシスタント業務で採用し、本社と全国9箇所の事務所で活動。「美と健康」をテーマに、多様性と包摂性を重視した新たな価値創造に取り組んでいます。

5位 キトー

搬送機器メーカーのキトーは、2024年時点で6.89%(35人)の障害者を雇用。ハード面とソフト面の両面から職場環境整備を進め、手話ボードや自動ドア・スロープの設置などバリアフリー化を推進。社員間コミュニケーションの促進にも注力し、全社員の成長を後押ししています。

6位 関通

関西の物流企業、関通は福祉サービスも提供。2024年現在6.29%(26人)の障害者を雇用し、「2030年までに全ての男女への完全かつ生産的な雇用」を目標に掲げています。発達障害児童向け放課後デイサービスの運営など、地域社会への貢献にもつながる取り組みが特徴的です。

7位 JSP

樹脂発泡製品のJSPは、特例子会社JSPモールディングで5.78%(49人)の障害者を雇用(2024年時点)。リーダーシップ育成プログラムを実施し、適性に応じた成長機会を提供。「希望の家」への長期的な役務提供など、社会貢献活動も評価されています。

8位 コンセック

建設用ダイヤモンド工具メーカーのコンセックは、「働きがいのある職場環境」の醸成を掲げ、2024年現在5.37%(13人)の障害者を雇用。中期経営計画で離職率削減と職場環境改善に重点を置き、特別支援学校との連携強化や学生への職場体験プログラムにも取り組んでいます。

9位 AOKIホールディングス

紳士服販売大手のAOKIホールディングスは、過去の特別指導をきっかけに障害者雇用を積極化。2024年現在4.89%(6人)を雇用し、本社施設のバリアフリー化や特別支援学校との連携など、新たな試みを展開しています。多様性推進プロジェクトチームによる支援体制の強化も進めています。

10位 ファーストリテイリング

ユニクロを展開するファーストリテイリングは、「1店舗1人以上の障害者雇用」を目標に掲げ、2024年現在4.60%(1,111人)の障害者を雇用。多様性を活力とする戦略のもと、グローバルな視点から各国の店舗でも同様の取り組みを推進しています。

企業と障害者、双方の視点から

1.企業にとっての障害者雇用のメリット

企業が障害者雇用に積極的に取り組むメリットは少なくありません。多様性に富んだ職場環境は、新たな視点やアイデアの創出につながります。人材不足の解消にも寄与し得るほか、CSR活動としての評価も得られ、ブランド価値の向上にもつながります。

2.障害者にとって働きやすい環境とはト

一方、障害者にとって重要なのは、自身に合った適切なサポート体制のもとで安心して働けること。多様な職種・業界の選択肢が広がることで、自分の可能性を試す絶好の機会にもなります。何より大切なのは、成長を実感しながら長期的に安定した就労を実現できることでしょう。

多様性と包摂性の実現に向けて

2024年版の「障害者雇用率ランキング」は、各企業の積極的な取り組みを示す重要な指標です。法定基準の引き上げを背景に、今後はさらに多様な取り組みが求められるでしょう。障害者雇用は企業の社会的責任であると同時に、成長戦略の一環として多様性と包摂性を実現する取り組みとして捉えることが大切です。この情報を基盤として、企業と障害者双方のさらなる飛躍が期待されるでしょう。

【参考】
東洋経済ONLINE 「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社

執筆者プロフィール

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