アスペルガー症候群を持つ障害者にとって、転職や就職は難しいものと思われがちです。
しかし、障害者と雇用側の企業が障害の特性や本人の得意不得意を理解していれば、必ずしもアスペルガー症候群の転職や就職が難しいとは言えません。
ただ、アスペルガー症候群のある人にとって、やはり得意不得意な仕事があるのも事実。では一体、アスペルガー症候群を持つ人に向いている仕事とは何でしょうか。
今回はアスペルガー症候群の症状や特徴を解説しつつ、アスペルガーに向き不向きの仕事をご紹介します。
アスペルガーは仕事が続かない?症状と特徴
アスペルガー症候群の人は仕事が続かないと言われることが多々あります。
理由は、障害の症状が原因でストレスが溜まったりパニックを起こしたりして、結果、退職や解雇に至るケースが多いためです。
アスペルガー症候群を持つ障害者の場合、仕事において主に以下の3つの困難が生じます。
- 【対人・対応における困難】
-
・職場の慣習や暗黙の了解が理解できない
・相手の表情や雰囲気から気持ちを推測できない
・冗談だということが分からない
・他人に関心がない - 【社会適応における困難】
-
・一度決まったルール通りでないと行動できない
・興味のある物事に対して極端なこだわりがある
・同時に複数の作業や情報処理が行えない - 【感覚過敏による困難】
- ・感覚が敏感すぎて自分に馴染まない感触に苦痛を感じる
一口に仕事と言っても、職種によって以下のような様々な場面が考えられます。
・取引先との折衝や接待
・複数の顧客対応や事務処理
・適宜トラブルへの対応
・社内イベントへの参加や運営
など…
どれも人とのコミュニケーションや臨機応変な対応が求められる仕事ばかりです。
しかしアスペルガー症候群を持つ障害者にとって、その場の状況や空気を読んで柔軟かつ適切な対応をすることは苦手とする分野です。
そのためトラブルや問題行動を起こしてしまいがちで、本人がいたたまれなくなって退職してしまうケースが少なくありません。
アスペルガーの転職に向いている仕事
アスペルガー症候群は、ASD(自閉症スペクトラム)と呼ばれる発達障害の一種で、ASDに含まれる障害はどれも症状が似ています。
そのためアスペルガー症候群の特徴が述べられる時、ASDの症状とひとまとめにされがちです。
しかしアスペルガー症候群の症状は、ASDに見られる「コミュニケーションの困難」はそれほど重くないと一般的には認識されています。
アスペルガー症候群の人が転職するにあたり、向いている仕事を探すには「対人関係があまり重要でない」「マルチタスクではない」という2点がポイントになるでしょう。
具体的には、以下のような職種がアスペルガー症候群の人に向いていると言われています。
- 【クリエイティブ系】
-
・デザイナー
・イラストレーター
・プログラマー、SE
・カメラマン
・ライター
など - 【専門職系】
-
・機械や電気、建物の整備
・工場のライン作業
・精密機器の操作、修理
など - 【その他】
-
・研究職
・清掃員
・事務作業
・検品作業
など
上記はあくまでアスペルガー症候群を持つ人に向いているとされている一般的な職種です。
アスペルガーと言っても個々により得意不得意は異なりますし、職場によって横とのつながりやマルチタスクを必要とするケースもあるでしょう。
そのため、アスペルガー症候群があって転職を検討する方にとって、まずは自分の得意不得意を認識することが大切です。
アスペルガーの転職に不向きな仕事
では、続いてアスペルガー症候群の転職に不向きとされる仕事を見てみましょう。
以下にご紹介する職種も一般的な認識としては不向きとされている仕事です。
- 【感覚や阿吽の呼吸が必要な職種】
-
・料理人
・工芸職人
・農業
など - 【臨機応変な対応が必要な職種】
-
・電話オペレーター
・営業職
・接客業
・ウエイター
・交通整備、誘導員
など
アスペルガー症候群は、「”あれ”、”これ”、”それ”という言葉が何を指すか理解できない」「同時進行で物事の処理ができない」という特性が顕著に表れます。
そのためアスペルガー症候群の人は、指示やフローが明確でない職種、または一度に複数の物事を遂行しなければいけない職種への転職は注意した方が良いでしょう。
アスペルガーの転職は自己理解と把握がカギ
アスペルガー症候群の困難に着目して向き不向きの仕事をご紹介しましたが、実はアスペルガー症候群の特性は「高い能力」の裏返しでもあります。
つまり不得意な部分は、得意な部分として捉えることもできるのです。
- 【対人・対応】
- ・相手の気持ちを汲み取った発言が苦手 → 忌憚の無い意見や率直な感想が言える
- 【社会適応】
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・マルチタスクの業務が苦手 → 一つの業務に高い集中力を発揮する
・物事に対してこだわり過ぎる(時間がかかる) → 常に一定の品質や望ましい状況を保てる(仕事のムラが少ない) - 【感覚過敏】
- ・感覚に対するこだわりがある → 普通の人では分からない変化に気づける
アスペルガー症候群に限らず、発達障害者や精神障害者の転職や就職においては、まず「自己理解」が重要です。
そのため転職や就職前に、まずは自分自身について以下を把握しておく必要があります。
・人付き合いは苦手かどうか
・時間やスケジュール通りに物事を進められるか
・同時に進められる作業の量はどのくらいか
・「それ」「あれ」「適当に」といった曖昧な表現を理解できるか
・雑音や物が多い場所がストレスに感じるか
アスペルガー症候群を持つ障害者は一つの作業に没頭する傾向があることから、出来上がる物は高品質であることが多いとされます。
また興味関心のあることに対し、高い記憶力を有しているケースもあり、障害の特性に合った仕事さえ見つかれば、仕事が続かないといった結果にもなりづらいでしょう。
アスペルガー症候群のある障害者本人と障害者雇用を進める企業にとって、障害特性を理解、把握することが転職を最善の結果に繋げるカギと言えます。
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