「通級指導教室をすすめられたけれど、どんなところかよく知らない…」
「特別支援学級とどんな違いがあるの?」
「通級指導教室に通うメリットは?」
など、通級指導教室についてよくわからないと困っている方も多いでしょう。
通級指導教室とは、障害による学習や生活上の困りごとを改善するために授業の一部を別で受ける教室のことです。通常の学級に在籍しながら通えるため、軽度の障害をもつ子どもが対象となります。
この記事では、通級指導教室の対象児童や指導内容、通わせるメリットや注意点について解説しています。ぜひ参考にしてください。
通級指導教室とは?
通級指導教室は、小学校や中学校の通常の学級に在籍しながら、障害による学習や生活上の困りごとを改善・克服するために授業の一部を別で受けられる教室です。省略して「通級」と呼ばれることもあります。
通級指導教室は、子どもが通う学校に設置されていない場合もあります。通っている学校に通級指導教室がない場合には、他の学校にある通級指導教室に通う場合や通級の担当教員が学校を巡回して指導する巡回指導を受けることになります。
通級指導教室で受けられる授業の時間数は、1~8時間程度です。通級指導教室に通う児童生徒の数は年々増加傾向にあり、2011年には6.5万人でしたが、2020年には16.3万人にものぼっています。
また、2018年からは、高等学校に通級指導教室の制度が導入されました。まだ数は少ないですが、高等学校でも障害の特性に応じた個別の指導が受けられるようになってきています。
対象児童
通級指導教室の対象は、一部において障害に応じた個別の指導を受ければ、社会生活に適応可能な児童生徒です。
対象となる障害の種別は以下の通りです。
- 弱視
- 難聴
- 肢体不自由
- 病弱・身体虚弱
- 言語障害
- 情緒障害
- 自閉スペクトラム症
- 学習障害
- 注意欠陥多動性症
2006年には、学習障害や注意欠陥多動性症が通級指導教室の対象として追加され、さまざまな障害の種別で通級指導教室が利用可能になりました。
ただし、知的障害の子どもや知的障害をともなう重複障害をもつ子どもは対象になりません。知的障害のある子どもは、生活に結びつけた実践的な指導を継続する必要があるため、通級指導教室のような授業の一部を使って支援する指導方法はなじまないと考えられるからです。
また、通級指導教室において明確な就学基準は定められていません。「通常の授業に参加できるものの一部において特別な指導が必要になる程度」とあり、子どもの障害の状況や困りごと、保護者の意向などを踏まえたうえで総合的に判断されます。
特別支援学級との違い
通級指導教室と特別支援学級の大きな違いは、子どもが在籍している学級です。通級指導教室は通常の学級に在籍しており、特別支援学級は特別支援学級に在籍しています。
特別支援学級と通級指導教室のどちらも、障害のある子どもに対して障害に応じた個別の指導を行います。
しかし、特別支援学級では、子どもは特別支援学級に在籍し、必要に応じて通常学級で一緒に学習します。個別の支援が必要な比較的障害の重い子どもが在籍している場合が多いです。
一方、通級指導教室は、授業のほとんどを通常の学級で受けて、一部の授業において障害に応じた個別の指導を受ける指導形態をとります。
通級指導教室は、通常の学級に在籍した状態で障害に応じた指導が受けられるのが特徴と言えるでしょう。
受けられる指導内容
通級指導教室では、障害による学習や生活を送るうえでのつまずきを解消するために、障害の特性に応じた個別の指導が受けられます。
特別支援学校の学習指導要領にある「自立活動」で取り扱われている内容を基本に個に応じた指導をします。自立活動で取り扱われる5領域は以下の通りです。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション
例えば、自閉症スペクトラムの子どもは、こだわりが強かったり、言葉によるコミュニケーションが苦手だったりする傾向があります。そのような特性により困りごとを抱えている場合には、少人数のグループで社会的なルールや対人関係のスキルを学んだり、視覚的な支援を用いて教科の学習を行ったりするなどの指導をします。
通級指導教室では、必要に応じて各教科の学習内容を取り扱う場合もありますが、学習の遅れを取り戻すための補習などは行いません。障害に応じた学習方法や対人関係や生活面でのスキルを身につけるための指導が受けられます。
通級指導教室に通わせるメリット
通級指導教室に通わせるメリットといえば、やはり障害の特性に応じた個別の指導を受けられることです。
専門の知識を持った職員から、障害に応じたきめ細やかな指導が受けられます。学習面だけでなく学校生活を営むうえでの困りごとや障害との付き合い方についても指導が受けられます。
通級指導教室では、担当の職員から特性に応じた適切な指導が受けられるため、成功体験をつみやすく自己肯定感が育まれやすいです。さらに、通常の学級にも在籍したまま通えるため、集団生活を経験する機会も失われることがありません。
通常の学級で学ぶ機会を維持しながら、必要なサポートや指導が受けられるでしょう。
通級指導教室に通わせるときの注意点
通っている学校に通級指導教室が設置されていない場合には、他の学校にある通級指導教室に通うことになるでしょう。その場合、保護者は子どもが通級指導教室に通う時間に送迎する必要があります。
また、他の児童生徒が同じ授業を受けているときに、抜け出して別の教室で授業を受けることで、引け目やストレスを感じてしまう場合もあるでしょう。
子どもを通級指導教室に通わせたいと考えていても定員があり、空きがない場合には断られてしまうことも考えられます。自治体によって通級指導教室の制度が異なる場合もあるため、学校や自治体などに確認するようにしましょう。
通級指導教室に通わせるか迷ったときは
子どもを通級指導教室に通わせた方がよいのか迷ってしまう場合もあるでしょう。
迷ったときには、周りに相談するのも1つの方法です。担任の先生に相談したり、同じように障害のある子どもを持つ保護者に相談したりすると、子どもの意外な一面や経験者ならではの意見が聞ける場合もあるかもしれません。
また、障害のある子ども本人がどうしたいと考えているのか本人の思いを確認してみるのもよいでしょう。本人は通級指導教室に通いたいと思っているのか子どもの意思を尊重することも大切なポイントです。
自分だけで背負いこまずに、さまざまな意見を聞きながら、子どもにとって一番いいと思える選択を選びましょう。
子どもに合った指導形態を選ぼう
通級指導教室は、軽度の障害のある子どもを対象に、障害の特性に応じた個別の指導が受けられる教室です。通常の学級に通いながら、個別に必要な指導が受けられます。
通級指導教室に通わせるメリットは、障害の特性に応じた個別の指導が受けられることです。通常の学級に在籍したまま通えるため、集団生活を経験する機会も失われません。
一方、自分が通う学校に通級指導教室がない場合には、他の学校にある通級指導教室に通う必要があります。また、自治体によって制度が異なる場合もあります。通っている学校や自治体などによく確認しましょう。
通級指導教室に通わせるか迷った場合には、一人で抱え込まずに周りに相談したり、本人の意思を確認するなどして一番よいと思える方法を選んでください。
【参考】
通級による指導とは?|特別支援教育のトビラ
通級による指導を担当する教師のためのガイド|文部科学省
高等学校における「通級における指導」について|文部科学省
執筆者プロフィール

特別支援学校や小学校の特別支援学級に教員として勤務。さまざまな障害のある子どもとの関わりを経て、現在は、ライターとして福祉・教育を中心に執筆している。教員免許の他、保育士、社会福祉主事、手話検定2級の資格を保有。