「障害を持っているから働くのは不安。」「病気で仕事のブランクが長いけど、上手く就職活動ができるだろうか?」などという悩みを抱えている方は多いことでしょう。
このような障害を持ちながら働くのを目指す方のために、「就労支援」というサービスがあります。
就労支援を受けるには、障害者手帳を持参している方がスムーズに手続きが進みますが、手帳をまだ発行していない方はどうすれば良いのでしょうか。
この記事では、各就労支援サービスの詳細と障害者手帳の関係について、解説します。
就労支援とは一体どういうサービス?
就労支援とは、障害を持っているけれど働きたい方を支援するサービスのことで4つの事業に分けられます。それらの特徴を以下にご説明します。
就労移行支援事業
就労移行支援事業とは、一般企業への就職が見込める障害者の方に、仕事の技術を身に付けたり、履歴書の書き方を学んだり、面接の練習などを行うことで、就労を目指す支援サービスです。
その他にも、希望する企業での職場体験が可能で、就職後も専門スタッフが仕事上の悩みを聞くことを、定期的に続けます。
就労移行支援事業には、最大2年間通うことができますが、何かしらの理由があり自治体に認められた場合は、1年間の延長が可能となり、3年間の利用ができるケースもありますので、覚えておきましょう。
就労継続支援A型事業
就労継続支援A型事業とは、就労移行支援事業と同様に障害者の就労を支援するサービスで、一般企業への就職が困難な方が対象となります。
就労訓練や技術を磨くのはもちろんのこと、就労継続支援A型事業所自体と雇用契約を結び、その事業所で雇用されながら働くことが特徴となります。
そのため、利用期間に制限はなく、自治体の最低賃金以上の給料が与えられます。
ただし、フルタイムでの勤務ということは少なく、利用者個人の体調や能力に合わせて働く日数や時間を決めるため、給料は時給換算となり、平均給料月額は76,000円程度(平成30年度)になるのが一般的です。
就労継続支援B型事業
就労継続支援B型事業とは、一般企業への就職が難しく、雇用契約を結んで働くのも困難な方に就労の機会を与えたり、仕事の技術訓練を行ったりするサービスです。
そのため、利用者に適した日数や時間に合わせて、事業所で働いた分の工賃が与えられるしくみとなっています。もちろん、利用期間にも制限はありません。
ただし、月額の工賃の平均は16,000円程度(平成30年度)となっているため、工賃だけで生計を立てるのは厳しいと言えます。
就労定着支援事業
就労定着支援事業とは、就労移行支援事業や就労継続支援A型事業などを経て、一般企業へ就職した方が職場になじめるように支援するサービスです。
このサービスを利用するには、就職した職場に6ヶ月以上継続して勤務した方が対象となります。
職場への一層の定着を図るために、専門スタッフが仕事上の悩みの相談にのったり、社会生活を送るうえでの指導を行ったりすることが目的です。利用期間は3年となっています。
就労支援サービスを受けられる対象者は?
これらの4つの就労支援事業は、どれを選ぶかによってサービスを受けられる対象が異なります。各事業の対象者は以下の通りです。
就労支援サービス | 対象者 |
---|---|
就労移行支援事業 | 原則的として、18歳以上~65歳未満で一般企業への就職を希望しており、それが見込まれる障害者 |
就労継続支援A型事業 | 現時点で、一般企業への就職が困難な18歳以上~65歳未満の障害者や就労経験はあるが、現在は就労していない障害者 |
就労継続支援B型事業 | 50歳に達しているか、障害基礎年金1級を持っている障害者。または就労経験はあるが、身体的や体力的に一般企業への就職が難しいか、就労面で課題を抱えている障害者 |
就労定着支援事業 | 訓練を経て一般企業へ就職して6ヶ月を経過しており、仕事や社会生活に対して課題が生じている障害者 |
障害者手帳なしでもサービスは受けられる?
各就労支援サービスの4つのサービスを受ける場合、障害者手帳(身体・知的・精神)が交付されていることが原則必要となります。
なぜなら、障害者手帳を持っていることで、障害の状態や種類・程度などを把握できるという証明になるからです。
しかし、障害者手帳を持っていない場合でも、主治医の診断書など障害の状態が認められる書類を提出すれば、実際にはサービスの利用が可能となる場合は多いです。
診断書の作成を依頼し、提出するまでの時間がかかる点はデメリットですが、「障害者手帳がない=就労支援サービスを受けられない」ということではありませんので、気にせず、各就労支援事業所に申し込んでみましょう。
障害者手帳を持つメリット
障害者手帳がなくても、就労支援は受けることが可能です。ただ、障害があるという状況が認められる状態にあるのなら、事前に障害者手帳を作っておく方が生活するにあたって、色々と便利なことも多くなります。
例えば、就労移行支援を受けている間は、原則としてアルバイトをすることを禁止している施設があるため、経済的な問題を抱える場合も存在します。
しかし、障害者手帳を持っていれば、等級によってですが、公共交通機関の運賃の割引や市民税・所得税の控除、携帯電話料金の割引などが利用できるので、安心して就労訓練に励むことが期待できるのです。
また、就職をする際も障害者手帳を持っていれば、障害者雇用枠にて申し込むこともできるので、仕事の幅が広がるというメリットもあります。
障害者手帳は、就労支援サービスを申し込む際に同時に申請することもできるので、持っていない方は申請しておくと、後々助かることが出てくる可能性が高いことでしょう。
執筆者プロフィール
精神保健福祉士、社会福祉士、認定心理士、心理カウンセラー
カウンセリングセンターや精神科病院に勤務。うつ病などの患者やその家族に対するカウンセリング・相談や支援を経て、現在はメンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。