太陽と温暖な気候に恵まれた宮崎県では、障害のある方々の自立と社会参加をサポートする就労支援事業所が、地域の特色を活かしたいろいろな取り組みを展開しています。従来の軽作業にとどまらず、着物リメイク、古民家カフェの運営、めだかの飼育販売、お弁当製造など、利用者一人ひとりの個性や能力に応じた幅広い支援を提供しているのが特徴です。
本記事では、宮崎県内で特色ある活動を展開している4つの就労支援事業所の取り組みをわかりやすく解説します。
一般社団法人HRCplus:着物リメイクで文化継承と就労支援を両立するA型事業所

日向市に位置するA型事業所として、着物リメイクとハンドメイド雑貨制作という独創的な事業を展開し、日本の伝統文化の継承と障害者の就労支援を見事に両立させています。
着物文化を現代に蘇らせる新しい働き方
一般社団法人HRCplusでは、2020年4月1日にオープンした雑貨店「きものリメイク 布゜らす(ぷらす)」で、利用者が心を込めて制作した和雑貨やリメイク品を販売しています。株式会社黒田工業ひゅうがリサイクルセンター内での作業と並行して、着物や帯を活用した和雑貨の制作に取り組んでいるのが特徴です。
利用者一人ひとりの特性や技術レベルに応じた作業配分を行い、それぞれが持つ創造性や手先の器用さを活かせる環境を整えています。こうした取り組みにより、利用者は単なる作業者ではなく、日本の伝統文化を現代に蘇らせる「職人」としての誇りを持って働くことができるといえるでしょう。
使われなくなった着物が、利用者の手によって新しい命を吹き込まれ、現代的な雑貨として生まれ変わる様子は、まさに伝統と革新の融合といえます。
お客様の思い出を大切にするオーダーメイドサービス
布゜らすでは、既製品の販売だけでなく、お客様が持参する着物のリメイクオーダーも積極的に受け付けています。思い出の詰まった着物を現代的なバッグや小物に生まれ変わらせるこのサービスは、地域の高齢者の方々から特に高い評価を得ているようです。
価格についてはお問い合わせに応じて柔軟に対応しており、予算や希望に合わせたきめ細やかなサービスを提供しています。また、店舗では昔懐かしい駄菓子や日向市内の他の福祉事業所が製造した商品の販売も行っており、地域の福祉ネットワークの拠点としての役割も果たしているといえるでしょう。
ハンドメイド品の委託販売やレンタルスペースの提供も行っており、地域の創作活動を支援する場所として機能しています。
環境保護と社会貢献を両立する持続可能な事業運営
HRCplusは、SDGs(持続可能な開発目標)宣言を行い、環境保護と社会貢献を両立させる事業運営を行っています。着物リメイクという事業そのものが、廃棄される可能性の高い古い着物に新たな価値を与える循環型経済の実践例となっており、環境負荷の軽減に大きく貢献しているといえるでしょう。
雇用環境整備適正事業者としての認定も受けており、障害のある方々が安心して働ける職場環境の構築に努めています。こうした取り組みにより、着物リメイクの価値と障害者就労支援の重要性について、より多くの人々に理解を深めてもらう活動を継続しているようです。
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ぐらんま茶寮:古民家を活用した和カフェ運営でおもてなしの心を育むA型事業所

児湯郡高鍋町に位置し、築120年の古民家を改装した和カフェとして2015年8月にオープンしたA型事業所で、本格的なカフェ運営を通じて障害者就労支援を行っています。
120年の歴史ある古民家で学ぶおもてなし
株式会社ダイバーシティひむかが運営する「ぐらんま茶寮」では、和の情緒あふれる庭園を眺めながら心休まるひと時を過ごせる空間を提供しています。古民家ならではの趣ある雰囲気と、利用者が心を込めて提供する料理やサービスが相まって、訪れる人々に深い感動を与えているようです。
このような環境で働くことにより、利用者は接客スキルや調理技術を身につけながら、おもてなしの心を育んでいます。歴史ある建物の中で、日本の伝統的なおもてなしの精神を実践することで、利用者は単なる接客技術を超えた、人を思いやる心を自然に身につけることができるといえるでしょう。
季節感を大切にした心のこもった料理
ぐらんま茶寮の看板メニューである「四季の膳」は、9つの異なる小皿料理がセットになった豪華な一品で、ご飯・味噌汁・デザート・コーヒー付きで1,300円(2025年10月現在)というお手頃な価格で提供されています。この御膳は1日20食限定で、季節の食材を使用した料理内容は時期や仕入れ状況に応じて変化するため、何度訪れても新鮮な驚きを味わうことができるのが特徴です。
冬瓜の煮物をはじめとする和風料理から、チリソースを使った洋風の一品まで、和洋折衷のいろいろな味わいが楽しめます。また、宮崎県のソウルフードであるチキン南蛮とハンバーグを組み合わせた「ハーフ&ハーフ」メニューも人気で、子どもから大人まで幅広い年代に愛されているといえるでしょう。
地域の人たちが集まる大切な場所
ぐらんま茶寮は、障害者の就労支援という本来の目的を超えて、地域コミュニティの重要な拠点としての役割を果たしています。地域の人たちとの自然な交流を通じて、利用者は社会の一員としての実感を深めることができるでしょう。
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めだかファミリーグループ めだかハウス:めだか飼育と点字名刺で独自の支援を行うB型事業所

延岡市、日向市、大分県佐伯市に拠点を持ち、「めだか×福祉」「清掃×福祉」「椎茸×福祉」というコンセプトで利用者のいろいろな特性や興味に対応した幅広い作業プログラムを提供しています。
めだかの飼育を通じて命の大切さを学ぶ
株式会社めだかファミリーグループが運営する「めだかハウス」では、めだかの飼育・販売事業を中心に、利用者が生き物の世話を通じて責任感や継続性を身につけながら、専門的な知識とスキルを習得しています。めだかという小さな生命に向き合うことで、利用者は自然との関わりや命の大切さを学び、気持ちの面での成長も得られるといえるでしょう。
また、めだかの品種改良や繁殖技術の習得により、将来的には独立した事業者として活動する可能性も秘めています。水温管理や水質チェックなど、細やかな注意が必要な作業を通じて、利用者は集中力と観察力を自然に身につけることができるようです。
清掃と椎茸栽培でいろいろなスキルを身につける
清掃業務では、企業や公共施設の清掃を通じて、社会の一員としての役割を果たしながら実用的なスキルを身につけています。清掃という仕事は、社会から直接感謝される機会が多く、利用者の自己肯定感向上に大きく貢献しているといえます。また、チームワークやコミュニケーション能力の向上にも効果的で、将来の一般就労に向けた重要な経験となっているでしょう。
椎茸栽培事業では、農業の専門知識と技術を習得しながら、収穫から加工、販売まで一連のプロセスに携わることができます。椎茸粉の製造・販売も行っており、付加価値の高い商品開発を通じて、より高い工賃の実現を目指しているようです。
自分たちが育てた椎茸が商品として販売される様子を見ることで、利用者は農業への誇りと働く意味を深く理解することができるといえます。
点字名刺サービスで社会貢献と技術習得を両立
めだかファミリーグループの特筆すべき取り組みの一つが、「点字名刺サービス」の提供です。既存の名刺に点字を刻印するこのサービスは、視覚に障害のある方への情報伝達手段としてだけでなく、福祉への理解を深めてもらうきっかけ作りという重要な社会的意義を持っています。
点字のみの刻印は100枚1,000円(税別)、視覚障害者により分かりやすい角丸加工付きは100枚1,300円(税別)で提供されており、実際に導入企業のリピート率は90%超を記録しているようです。2019年だけでも2万件以上の印字実績があり、多くの現場で「また作りたい」「広めたい」との声が上がっているほど高い評価を得ているといえるでしょう。
このサービスの売上は、障害のある方の所得向上に直接役立てられており、社会貢献と経済的自立の両立を実現しています。利用者にとっては、IT技術や精密作業のスキル向上の機会となっており、将来のキャリア形成にも大きく役立っているようです。
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NPO法人ふれあい キャッチボール:お弁当製造とアイス販売で地域とつながるB型事業所

門川町に拠点を置くB型事業所として、お弁当の製造・配達を中心とした地域密着型の食品事業を展開し、地域社会との密接な関係を築きながら利用者の社会参加を後押ししています。
心を込めたお弁当作りで地域に貢献
NPO法人ふれあいが運営するキャッチボールでは、利用者が心を込めて調理したお弁当を地域の企業や個人宅に配達することで、地域社会との密接な関係を築いています。食材の仕入れから調理、包装、配達まで一連の工程に利用者が携わることで、食品衛生管理や栄養バランスの考慮、顧客サービスなど、食品業界で必要とされる幅広いスキルを習得できるといえるでしょう。
また、定期的な配達により顧客との継続的な関係を築くことで、コミュニケーション能力や責任感の向上にも大きく貢献しています。毎日お弁当を届けることで「ありがとう」と言われる経験は、利用者にとって働く意味を実感する大切な瞬間となっているようです。
アイス販売で新しい挑戦と学びの機会を創出
2024年8月からは、西通りプリンのアイスクリーム販売も開始し、事業の幅を広げています。この新しい取り組みは、利用者にとって販売スキルやお客様のニーズを理解する力を身につける良い機会となっており、よりいろいろな経験を積むことが可能になっているといえるでしょう。
アイスクリームという季節性のある商品の販売を通じて、利用者は市場のニーズを理解し、販売戦略を考える能力を養っています。また、お客様との直接的な接触により、顧客満足度の向上に向けた工夫や改善点を見つける視点も育てられているようです。
夏場の暑い日にアイスを販売する経験は、利用者にとって新しい挑戦であり、達成感を味わう貴重な機会となっているでしょう。
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まとめ
宮崎県の就労支援事業所は、それぞれが地域の特性や利用者の個性を活かした独創的な取り組みを展開しています。一般社団法人HRCplusの着物リメイク事業、ぐらんま茶寮の古民家カフェ運営、めだかファミリーグループのめだか飼育と点字名刺サービス、NPO法人ふれあい キャッチボールのお弁当製造・配達とアイス販売など、いずれも利用者の可能性を最大限に引き出す工夫が見られるといえるでしょう。
これらの事業所に共通しているのは、単なる作業訓練にとどまらず、利用者が誇りを持って働ける環境づくりに力を入れている点です。地域社会との深いつながりを築きながら、利用者一人ひとりの個性や能力に応じた支援を提供することで、真の社会参加と自立を実現しているようです。
宮崎県の就労支援事業所による新しい挑戦は、障害のある方々の可能性を最大限に引き出し、みんなで支え合う社会の実現に向けた確実な歩みを示しています。今後も、これらの取り組みが他の地域への良い影響をもたらし、全国の障害者就労支援の向上に貢献していくことが期待されるでしょう。
執筆者プロフィール

ウェブ・コピーライターとしてクライアントワークを中心に活動中。