万一、精神を病んでしまってまともに働けなくなってしまったらどうすればよいでしょうか。
お金を稼がなければ生活はできませんし、社会との関わりも持っておかないと症状が悪化してしまう場合もあるでしょう。
そんな精神障害を患っている方のために、働くためのスキルや知識を身につけて社会的な自立を目指すための就労支援を行っている障害者就労支援施設が全国に多数あります。
今回、全国規模で都道府県ごとの障害者施設数などを調査し、単純な施設数だけでなく、1人あたりの施設数や1施設に働く職員の数も含めてランキング形式にしてみました。
【障害者就労支援施設数】都道府県ランキング
全国の障害者就労支援施設の数は、平成29年時点で以下の通りとなっています。
就労移行支援施設 | 2,956事業所 |
---|---|
就労継続支援A型 | 3,065事業所 |
就労継続支援B型 | 9,459事業所 |
就労継続支援B事業所の数だけ多い理由については後述しますが、次に都道府県別の障害者支援施設数を見てみましょう。
順位 | 都道府県 | 施設数 |
---|---|---|
1位 | 東京都 | 992 |
2位 | 北海道 | 487 |
3位 | 大阪府 | 432 |
4位 | 福岡県 | 396 |
5位 | 愛知県 | 382 |
6位 | 埼玉県 | 370 |
7位 | 茨城県 | 349 |
8位 | 兵庫県 | 315 |
9位 | 千葉県 | 283 |
10位 | 沖縄県 | 274 |
11位 | 長野県 | 260 |
12位 | 三重県 | 257 |
13位 | 静岡県 | 256 |
14位 | 神奈川県 | 247 |
15位 | 熊本県 | 238 |
16位 | 岐阜県 | 232 |
17位 | 鹿児島県 | 217 |
18位 | 新潟県 | 203 |
19位 | 山形県 | 174 |
20位 | 長崎県 | 173 |
※21位以下は全国にある就労支援施設数の都道府県別のシェア率をご覧ください。
東京都の就労支援施設数が圧倒的に多くなっていますが、実は東京都の就労継続支援B型施設は全国で最も多いのです。
では、今度は「就労移行支援施設」「就労継続支援A・B施設」の別で、都道府県別のランキングを10位まで見てみましょう。
順位 | 就労移行支援施設数 | 就労継続支援A型施設数 | 就労継続支援B型施設数 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 東京都 | 259 | 福岡県 | 101 | 東京都 | 645 |
2位 | 茨城県 | 115 | 熊本県 | 95 | 北海道 | 336 |
3位 | 福岡県 | 87 | 愛知県 | 91 | 大阪府 | 275 |
4位 | 埼玉県 | 84 | 東京府 | 88 | 埼玉県 | 247 |
5位 | 大阪府 | 79 | 北海道 | 80 | 兵庫県 | 232 |
6位 | 千葉県 | 76 | 大阪府 | 78 | 愛知県 | 222 |
7位 | 北海道 | 71 | 岐阜県 | 72 | 福岡県 | 208 |
8位 | 愛知県 | 69 | 沖縄県 | 60 | 茨城県 | 193 |
9位 | 新潟県 | 64 | 三重県 | 56 | 長野県 | 186 |
10位 | 神奈川県 | 52 | 福井県 | 53 | 千葉県 | 174 |
就労継続支援A事業所だと東京都は4位。他の都道府県と比べても大差はありませんが、就労継続支援施設は、東京都と茨城県で140施設の差、さらに就労継続支援B事業所は東京都と北海道の差が300施設以上あります。
東京都が就労支援施設数でトップになっている理由は、就労移行支援事業所と就労継続支援B事業所の多さなのです。
ただ、障害者施設が東京都をはじめとした北海道や大阪、愛知、福岡といった人口の多い都市圏が多くなるのは当然の結果とも言えるでしょう。
【1施設あたりの障害者数】都道府県ランキング
続いてのランキングは「1障害者施設あたりの障害者の人数」です。
都道府県ごとの精神障害者数に対し、障害者施設が全国でどのくらいあるのかという観点でランキング形式になっています。
平成30年の時点で発行された「精神障害者保健福祉手帳」は全国で「100万3683件」。
このランキングは「仮に障害者全員が障害者施設を利用することになった際に1施設で収容が必要な障害者数」という視点でご覧ください。
つまり、障害者の数が少ない都道府県ほど障害者施設数に余裕があるということです。
順位 | 都道府県 | 手帳保持者数 | 1施設に対する障害者数 |
---|---|---|---|
1位 | 徳島県 | 4963 | 27.4人 |
2位 | 奈良県 | 10576 | 45.0人 |
3位 | 和歌山県 | 7221 | 45.1人 |
4位 | 島根県 | 6728 | 52.2人 |
5位 | 三重県 | 12902 | 56.1人 |
6位 | 東京都 | 108532 | 61.3人 |
7位 | 山形県 | 6171 | 61.7人 |
8位 | 青森県 | 11285 | 62.3人 |
9位 | 沖縄県 | 10603 | 63.1人 |
10位 | 大分県 | 8853 | 65.1人 |
11位 | 佐賀県 | 5528 | 65.8人 |
12位 | 福井県 | 6250 | 72.7人 |
13位 | 愛媛県 | 9116 | 75.3人 |
14位 | 宮崎県 | 8289 | 76.8人 |
15位 | 高知県 | 5212 | 82.7人 |
16位 | 秋田県 | 6462 | 83.9人 |
17位 | 山梨県 | 7440 | 84.5人 |
18位 | 山口県 | 11457 | 85.5人 |
19位 | 香川県 | 5419 | 87.4人 |
20位 | 茨城県 | 16190 | 88.0人 |
※21位以下はグラフをご参照ください。
トップの徳島県は、1施設あたり27人を収容すれば障害者全員が就労支援施設を利用できます。
対するワーストの神奈川県は、徳島県の10倍以上にあたる299人、つまり1施設あたり約300人収容しないと、障害者全員が就労支援を受けられない事になります。
もしくは、1施設あたりの人数が少ないほど作業スペースが広い、逆に人数が多いほど作業スペースが狭いという風に捉えても良いでしょう。
ただ実際には、障害者全員が必ずしも就労支援施設を利用するわけではありませんので、障害者数に対して施設がどれくらいあるかの参考程度にお考えいただいた方がよいでしょう。
【障害者施設で働く常勤職員数】都道府県ランキング
最後のランキングは、1施設あたりの常勤職員の人数が多い障害者施設です。
都道府県別の障害者施設数に対し、就労移行支援事業、就労継続支援A・B事業所に働く常勤職員数で算出しました。
順位 | 都道府県 | 常勤職員数 |
---|---|---|
1位 | 岩手県 | 5.86人 |
2位 | 鳥取県 | 5.34人 |
3位 | 佐賀県 | 5.26人 |
4位 | 福島県 | 5.17人 |
5位 | 山口県 | 5.10人 |
6位 | 和歌山県 | 4.89人 |
7位 | 東京都 | 4.84人 |
8位 | 鹿児島県 | 4.72人 |
9位 | 群馬県 | 4.63人 |
10位 | 山形県 | 4.61人 |
11位 | 静岡県 | 4.60人 |
12位 | 千葉県 | 4.58人 |
13位 | 宮城県 | 4.58人 |
14位 | 石川県 | 4.57人 |
15位 | 島根県 | 4.54人 |
16位 | 広島県 | 4.53人 |
17位 | 宮崎県 | 4.52人 |
18位 | 新潟県 | 4.52人 |
19位 | 滋賀県 | 4.51人 |
20位 | 愛媛県 | 4.51人 |
※21位以下はグラフをご参照ください。
障害者施設で働く従業員数は、確保すべき最低人数を各自治体が決めています。よって、常勤職員数の多い少ないで優劣を決めるべきではありません。
しかし、障害者施設ばかり多くて、利用者や従業員が足りていないと十分なサービスを受けられない可能性があります。
例えば、茨城県は障害者施設数で7位でしたが、1施設あたりの常勤職員数では46位です。
施設数と常勤職員数のバランスが悪いと言えるかもしれません。
就労継続支援B型の施設が多いワケ
最初にご紹介した障害者施設数のランキングにおいて、就労継続支援B事業所の数が非常に多い事実をご紹介しました。
就労継続支援B事業所が多い理由は、事業所を設立する規定が他の障害者施設より厳しくないからです。
例えば北海道札幌市の規定では、以下のような違いがあります。
就労継続支援A事業所 | 事業者 | 社会福祉法人以外が設立する際は社会福祉事業を行う者であること |
---|---|---|
利用定員 | 10人以上、その他細かな規定あり | |
就労継続支援B事業所 | 事業者 | 特に規定なし |
利用定員 | 20人以上 |
つまり、就労継続支援B事業所のほうが事業として参入しやすく、継続的にサービスを提供しやすい施設なのです。
また就労継続支援A事業所に関しては、施設利用者と雇用契約を結ぶため労務管理などのコストがかかります。
対する就労継続支援B事業所は、雇用契約を前提としていないため比較的自由に賃金体系やその他規定の設定が可能です。
各障害者施設がどのように増加してきたか、過去の推移で見てみましょう。
やはり就労継続支援B事業所は、以前から圧倒的に多いのが分かります。
障害者施設について、一部ではお金儲けのためにやみくもに施設を作る業者があると言われています。
以下の記事でもご紹介しているように、違法な事業で助成金を騙し取ったり業界をよく知らないまま事業所を設立してしまったりするケースがあるのは確かです。
ただ、障害者施設は種類によって「定員数」「従業員数」が決まっています。
定員数とは、「最低でもその人数の障害者が同時にサービスを受けられる広さを確保しなさい」という基準。
従業員数は、各施設で配置しなければいけない専門職や一般職員を指します。
人手不足が騒がれる中、いたずらに事業所を作っても従業員や設備を確保できなければ、自治体からの指定施設から外されてしまい、そもそも事業として成り立ちません。
また障害者施設は、全国の障害者数に対して十分とも言えない状況です。ただ障害者福祉に関する国の予算は年々増えています。
あとは各地域において、障害者福祉への取り組みをどこまで活性化できるかがバランスの取れた障害者施設と利用者、従業員数という結果に寄与するのかもしれません。
【出典】e-Stat
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