Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー|実践紹介・パネルディスカッションレポート

Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー|実践紹介・パネルディスカッションレポート

10月30日にライカイチキューニーマル(鹿児島県鹿児島市中央町19-40)にて開催した福祉.tv主催「Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー」の第二回レポートは、当日登壇していただいた社会福祉法人ゆうかり理事長 水流源彦さん、株式会社丸屋本社マルヤガーデンズ事業部 広報室長の松見千種さんにパネルディスカッションでお話しいただいた活動事例を中心に、内容を一部抜粋してお届けします。

「Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー」の概要については、前回のレポートをご覧ください。

『アート・芸術と障害者福祉』 について

羽室(セミナー進行役): 松見さん、ABSORBプロジェクトについて教えてください。
松見: ABSORBは、山形屋、アミュプラザ鹿児島、マルヤガーデンズの3館が連携し、障害を持つ方のアートを紹介する企画です。パラリンピックをきっかけに、スポーツとアートを通じて地域共生を目指しました。各館が異なるテーマで展開し、多様な作品を見せることで、アートの持つ力を感じてもらう取り組みです。結果として、館への集客に繋がり、多くのお客様から良いフィードバックをいただきました。

アミュプラザ鹿児島 × マルヤガーデンズ×山形屋【3館合同企画】「ABSORB」

 

羽室: その中で障害者という言葉を使わなかった理由は何でしょうか?

松見: 作品が心に響くものであれば、作者が誰であるかは関係ありません。『障害者アート』とラベルを貼らずに、純粋にアートとして紹介することで、より多くの人に魅力を伝えたいという意図でした。

羽室: では水流さん、バリアフリー演劇について教えていただけますか?

水流: バリアフリー演劇は、視覚や聴覚に障害がある方も楽しめるように工夫されています。手話役者、字幕、そして音声ガイドを取り入れ、会場全体が共生社会の縮図のような空間になります。昨年の『Touch』や、今年の『ジャンヌ・ダルク』など、鹿児島市での公演は多くの方に感動を与えました。

舞台に立つ手話役者 障害がある人もない人も一緒に楽しめる「バリアフリー演劇」

羽室: 福島さん(鹿児島市健康福祉局 局長)、演劇をご覧になってどうでしたか?

福島: とても感動しました。目を閉じるとラジオドラマのようで、耳を閉じると字幕映画のようにストーリーが伝わります。地域共生社会が実現する瞬間を体感でき、素晴らしい取り組みだと思います。

 

2024年10月に開催されたバリアフリー演劇「ジャンヌ・ダルク」(社会福祉法人ゆうかり主催)

羽室: 続いて地域と福祉の繋がりについての取り組みも聞いていきたいと思います。

地域と福祉を繋げる取り組みについて

羽室: 水流さん、保育園の設立理由についてお聞かせください。

水流: 「私の原体験が大きな理由です。祖父が運営する入所施設の中に自宅があり知的障害者に囲まれ、育ちました。そういった環境が自然で、障害者が特別ではないと感じていました。しかし、街中にグループホームを作った際に『出ていけ』という立て看板を立てられたことが大きなショックで、これが保育園を開設するきっかけとなりました。小さな頃から障害のある子と一緒に過ごせる環境を作ることで、大袈裟ですが将来、税金(社会保障費)の使途の意味を理解するような納税者を育てたいと思っています。」

 

子どもが子どもらしく、家庭にいるような、安心した空間でのびのびと 遊び、学び、育つ。【ゆうかり保育園 (公式ホームページより)】

 

羽室: 出会いの場を作ることが大事ですね。

松見: マルヤガーデンズでは、商業施設として地域共生に貢献する取り組みをしています。例えば、D&DEPARTMENTではしょうぶ学園の作品を販売し、ガーデンスペースではフリースクールの野菜販売を行っています。また、無印良品のOpen MUJIスペースを地域活動に活用して、売上を就労支援施設に還元しています。アミュプラザ鹿児島もサービス介助士の資格取得を進め、観覧車に車椅子ゴンドラの設置や車椅子の貸し出しを行っています。

【マルヤガーデンズ】4階「D&DEPARTMENT」で知的障がい者支援施設「しょうぶ学園」の作品販売(写真左)・フリースクール「麻姑の手村」の野菜販売(写真中央)・5階Open MUJIスペースでの就労継続支援B型事業所「鈴の音」販売会(写真右)

【アミュプラザ鹿児島】車椅子で乗ることができる観覧車(写真左)・インフォメーションでの車椅子の貸出(写真右)

 

羽室: バリアフリーの取り組みが多くの人に役立っていますね。

水流: そうですね。例えばスロープは障害者だけでなく、高齢者やベビーカーとお母さん、荷物を運ぶ人たちにも便利です。

松見: 車椅子用のスロープも、多くの方が利用しています。結果的に多くの人に優しい施設になりました。

【山形屋】車椅子用スロープ

羽室: 社会動向と障害者福祉のまとめを松見さん、商業施設の視点からお願いします。

松見: コロナ禍でお客様の行動が変わり、入館客数が減りましたが、商業施設は地域共生を通じて新しい価値を生む必要があります。お客様と共に価値を作り、潜在ニーズを充足させていくことが大切です。地域の方々と連携することで、商業施設が再び活気づくのだと思います。

相手の立場を考える、それが障害者コミュニケーションの基本

水流: 障害は『持つ』ものではなく、『ある』という表現がいいと思います。ソフトもハードも社会側が引いた線によって生まれる障害の認識を変えることが大切です。知的障害者に対しても尊厳を持って接するべきであり、年齢に見合った言葉遣いが必要です。また、視覚や聴覚に障害がある方への配慮も、年齢が高くなると誰もがなり得る可能性があると考えると身近に感じるのではないでしょうか。

2024年10月30日開催「Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー」のパネルディスカッションより、一部を抜粋して記事を作成しました。

 

同セミナーにご登壇いただいた健康福祉局局長、福島宏子さんからは鹿児島市の取り組みについて詳しくお話をいただきました。詳細は下記のインタビュー記事でご覧いただくことができます。

【Mm PROJECT|鹿児島市】健康福祉局 局長 福島宏子さんインタビュー

 

「Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー」は、地域共生社会の実現に向けた多様な視点や取り組みが語られる貴重な場となりました。地域を代表する商業施設の取り組みや、バリアフリー演劇といった具体例を通じて、ご参加いただいた方が福祉を自分ごととして考えるきっかけとなったのではないでしょうか。福祉.tvでは今後も、こうした実践の共有を通じて誰もが生きやすいフレンドリーな社会の実現を目指していきます。

Mm PROJECT for Welfareは、誰もが生きやすく働きやすいフレンドリーな社会の実現に向けて課題当事者(障害がある方やその施設関係者)・地元企業・自治体が、福祉というマイノリティ課題を通して、一緒に学び、一緒に考え、一緒に発信することで、全員が「フレンドリーな街」を目指す仲間として、協力し合いながら課題解決に向き合うためのプロジェクトです。

Mm PROJECTは、JT(日本たばこ産業株式会社)がパートナーシップを基盤に取り組む地域社会への貢献活動の総称であるRethink PROJECTのサポートの下に行われています。

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