福祉.tvが主催する「Mm PROJECT for Welfare」、初回は鹿児島市 健康福祉局 局長 福島宏子さんのインタビューをお届けします。福島さんは1988年に鹿児島市に入庁し、これまでに健康福祉局をはじめ産業局、環境局、市民局と数多くの部門を経験され、2023年4月に現職の健康福祉局 局長に就任しました。今回のインタビューでは、2024年4月に施行された鹿児島市手話言語・障害者コミュニケーション条例についての様々な取り組みを中心に、障害者福祉に関する活動全般についてお話を伺いました。
Mm PROJECTは、マイノリティーとマジョリティーが一緒になって社会課題を考えるプロジェクトです。当事者・自治体・地域企業(地域住民)が三位一体となって、誰にとってもフレンドリーな福祉あふれる社会の実現を目指します。
※Mm PROJECTは、JT(日本たばこ産業株式会社)がパートナーシップを基盤に取り組む地域社会への貢献活動の総称
であるRethink PROJECTのサポートの下に行われています。
障害者福祉に関する活動内容について
障害福祉課は、障害のある方への様々な支援を所管しており、障害者手帳の交付や、障害福祉サービスの支給決定のほか、中核市として障害福祉サービスの事業所の指定なども行っております。
障害福祉は多岐にわたる業務がありますので窓口には毎日多くの市民がいらっしゃるのですが、本庁や各支所には手話通訳者を配置しています。手話通訳者は、聴覚障害のある方に対する様々なご案内や、手続きの通訳のほか、日常的なプライベートの相談をお聞きすることもあります。気軽に安心して来庁することができる、そういった環境ができているのではないかと思います。
かごしま市チャレンジド大賞
チャレンジド大賞は、様々な分野に前向きに取り組む障害のある方や、障害のある方を積極的に支援している団体などを表彰する制度です。2013年にスタートしまして、本年度で12回目になります。社会貢献、産業就労、文化・スポーツ、そしてサポートという4つの部門があります。これまでには、障害のある方への理解や社会活動の促進に貢献されてきた団体の方や、電動車椅子サッカーチームの方、また昨年鹿児島県全域にて開催された特別全国障害者スポーツ大会で活躍された方など、幅広い分野、年齢層の方が受賞されています。
受賞された方からは、「自分のやってきた事が認められた」、「今後の励みになる」という、喜びの言葉がたくさん寄せられています。自分の可能性にチャレンジをして、活躍している障害のある方、また障害のある方をサポートして一緒にチャレンジしている方。そういった方が身近な地域の中にいることを市民の方々にお伝えすることで、障害のある方への理解やサポートする方への関心などが深まっていくよう今後も続けていきたいと考えています。
ナイスハートカフェ
平日の昼間、庁内の緑あふれる広場にキッチンカーやお弁当ショップが並ぶのですが、それがナイスハートカフェです。障害福祉サービス事業所の設置法人等で構成するナイスハート運営協議会が運営していまして、市はその運営に補助金を出しています。
ナイスハートカフェでは、福祉施設で作ったお弁当やスイーツ、コーヒー、雑貨などを販売していまして、障害のある方も店頭に立って大きな声で呼びかけしています。市職員はもちろん、一般の方、来庁された方、様々な方がお客さんとしていらっしゃいます。
当初は、公共の空間である市の敷地内で、あれこれ販売しても良いのかという市民の声もありましたが、障害のある方々が製造、販売していることを説明したところ、「素晴らしいことだからもっと宣伝しないといけない」と激励の言葉に変わりました。
オープンなカフェなので、障害のある方、ない方が自然に触れ合うことができ、障害のある方がいきいきと働く姿を自然に目にすることができる空間になっています。販売する事業所ごとにいろんな味が楽しめるので、私もよく利用しています。
Stand-Up Products 〜鹿児島市ナイスハート運営協議会〜
つばめロード市民ギャラリーでのアート展示
毎年12月3日から9日までの障害者週間に合わせて、鹿児島中央駅のつばめロードという地下通路で、社会福祉法人のご協力のもと障害のある方のアート作品を展示しています。3面の大きなガラス張りの展示スペースに、障害のある方の本当に豊かな感性が溢れる作品が展示されます。この期間は多種多様な作品でつばめロードが彩られるのですが、ハッとさせられるような、魅力的で個性的な作品が展示されているので、足を止めて見入る方の姿もよく見られます。年末の人通りが多い時期に、目に飛び込んでくるような視覚的に伝わるアートの作品展を開催することで、多くの方に関心や理解を深めていってもらうことができればと思っています。
鹿児島市手話言語・障害者コミュニケーション条例
1.制定までの経緯
まず下鶴市長がマニフェストで手話言語条例の制定を掲げていたことが一つあります。また、2020年に県の手話言語条例が制定されたのですが、ろう者を取り巻く環境はまだまだ厳しい状況にあるという声が寄せられていたことが背景にあります。当初は手話言語条例を単独で制定する予定でしたが、2022年に国において障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立したことなどを受けて、手話言語と障害者コミュニケーションの二本立てにすることへ方針転換しました。その後は障害のある方へのアンケート調査、ヒアリング、また有識者や関係団体で構成された検討委員会での協議、最終的にパブリックコメント手続きや市議会での審議を経て、今年の3月に制定、4月1日から施行されました。
2.条例の内容について
二本立てと申し上げましたが、手話が言語であるということの理解の促進と、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用を広げていくことを基本理念として定めています。そして障害の有無に関わらず全ての市民が相互に人格と個性を尊重し、支え合う社会の実現を目指すこと。さらには市の責務や市民と事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的な事項について定めています。
3.現状の課題
条例の担い手である市の職員、市民、そして事業者にもっと広く理解していただくこと、それが一番の課題です。条例の施行後に、条例推進パンフレット「もっと話そう!」を作成しました。また市政広報番組や条例制定記念イベントなどを活用して周知しておりますが、まだまだ広がりが出ていない状況なので、今後も地道に取り組みを続けていきたいと考えています。
4.条例制定記念イベントの開催(8月4日イオンモール鹿児島にて)
市長と学ぶ簡単手話講座、ろうの児童が通う放課後等デイサービスの利用児童と保育園児による手話劇、視覚障害のある方とサポートメンバーによるハーモニカ演奏など行い、障害の有無に関わらず多くの方にご来場いただき、条例や障害のことを知ってもらうとても良い機会になりました。お買い物中の方が足を止めてイベントを見てくださったり、講座に参加したり、障害のある方とのコミュニケーションを学ぶきっかけになったのではないかと考えています。
5.条例推進パンフレット「もっと話そう!」
手話が言語であるという説明をはじめ、障害のある方とのコミュニケーションにおける手段、伝わりやすいコミュニケーションについて、また障害の特性に応じた配慮すべき点、そういったことを具体的に記載しています。障害のある方が分かりやすいようにイラストを使い、そして分かりやすい言葉、優しい言葉で表記していますし、漢字には全てルビを振って、文字数も極力減らしています。また視覚障害のある方にも伝わるように、各ページに、スマートフォンアプリで読み取ると内容を音声で聞くことのできる音声コード(Uni-Voiceコード)を付けました。音声コードがあることが分かるように“切り欠き”を付けたことが一番の工夫です。
市のホームページに掲載してある手話動画や、宿泊施設や商業施設で使うことができる指差しコミュニケーションボードへアクセスできるQRコードも掲載しています。
パンフレットは本庁や支所、市の施設、福祉関係の窓口で手にすることができます。またホームページからもダウンロードが出来るので、是非多くの方にご覧いただきたいと思います。
条例推進パンフレット「もっと話そう!」
指差しコミュニケーションボード
さらに「市政出前トーク」という、市の職員がご希望のテーマで市の取り組みを分かりやすく説明し、市民の皆さんのご意見をうかがいます、という制度があるのですが、この出前トークの項目にも手話言語・障害者コミュニケーション条例を加えています。
鹿児島市手話言語・障害者コミュニケーション条例
市民と事業者に向けたメッセージ
2023年10月に鹿児島県全域で特別全国障害者スポーツ大会、「燃ゆる感動かごしま大会」が開催され、ひたむきに競技に打ち込む選手の姿に勇気と感動をいただきました。またコロナ禍からの再生と飛躍を象徴する大会として、市民の方の心に残る素晴らしい大会となり、市民の障害のある方に対する理解も一層深まったのではないかと考えています。
2024年4月からは改正障害者差別解消法が施行されまして、障害のある方への合理的配慮が義務化されました。そのように障害のある方に対する関心や理解を促進する機運が高まっている中で、「鹿児島市手話言語・障害者コミュニケーション条例」を制定しました。市民と事業者の皆様にもその役割の一部を担っていただきたいと考えています。
パンフレットの中に鹿児島市視覚障害者協会の武元会長の「障害のある人が住みやすい社会は、誰にとっても住み良い社会です。」というメッセージがあります。まさにこの言葉に集約されると思うのですが、こどもたち、高齢の方、障害のある方、全ての人々がそれぞれの役割を持ちながら支え合い、そして暮らしや生き甲斐を一緒に作っていく地域共生社会に向けて取り組んでいくことが、自分らしくそして健やかに暮らすことができる安心安全なまちづくりに繋がると考えております。全ての人々が住み良い社会を作るために、まずは、障害のある方への理解や、障害の特性の理解という、できるところからご協力いただきたいと思います。
JTでは地域のみなさまと協働し、さまざまな活動に取り組んでいます。福祉に関する取り組みはすべての人が住みやすい魅力的なまちづくりのための重要な取り組みの一つであると考えています。
今回のインタビューを通じて、鹿児島市の障害者福祉への真摯な姿勢に感銘を受けました。私たちも地域社会の一員として、このようなプロジェクトを支援し、誰もが安心して暮らせる環境づくりに貢献していきたいと考えています。
※Rethink PROJECTはJTがパートナーの皆さまとともに行う地域社会への貢献活動の総称です。
Mm PROJECT for Welfare 鹿児島市セミナー開催のお知らせ
みんなでやろう!明日からできる障害者コミュニケーション
〜ユニバーサルマナーで、誰もが暮らしやすいまちづくりを〜
「みんなでやろう!明日からできる障害者コミュニケーション」をテーマに、企業や障害者福祉施設での、“ちょっとした「福祉につながる」気遣いや工夫”を学ぶことができます。パネルディスカッションやワークショップを通じて、障害者福祉の取り組みの事例やその活用方法、そして相手の立場に立った、明日からできる障害者コミュニケーションの重要性をお伝えいたします。福祉の考えをベースにした柔軟な考え方は、日常業務にも役に立つ「明日から実践できるヒント」です。福祉という一見硬いテーマだからこそ、誰にでも分かりやすい内容を重視したセミナーになっております。
〔登壇者情報〕
・鹿児島市 健康福祉局 局長:福島 宏子 氏
・社会福祉法人ゆうかり 理事長:水流 源彦 氏
・株式会社丸屋本社 マルヤガーデンズ事業部 広報室長:松見 千種 氏
・ジャパンソーシャルデザイン株式会社 代表取締役:羽室 吉隆 氏
■開催日時
2024年10月30日(水)10:30~12:00 (90分) 受付開始時間:10:00
■開催場所
ライカ イチキューニーマル5階 貸会議室 Room A
〒890-0053 鹿児島県鹿児島市中央町19-40 ライカ イチキューニーマル 5階
■定員
50名 ※定員に達し次第、お申し込みを終了させていただきます
■参加費
無料(要事前申込:下記「お申し込み」のメールアドレスからお申し込みください)
■お申し込み
以下のメールアドレスに「Mm PROJECT鹿児島参加申し込み」の件名でご連絡ください
info@fukushi.tv
一般社団法人 福祉.tv 生島宛
■主催
一般社団法人 福祉.tv
■後援
鹿児島市
■協賛
Rethink PROJECT
執筆者プロフィール