障害者福祉に関わる資格に「サビ管」という大事な資格があります。おそらく全く聞いたことがない方も多いことでしょう。
サビ管は障害者福祉に関わるサービスや事業で無くてはならないものですが、まだ歴史も浅くマイナーな資格であることから、その存在を知る人は多くありません。
そこで今回、サビ管がどんな資格なのか、仕事内容や資格の取得方法はどうか、何かと難しいルールや曖昧さもある資格でもあるため、この記事ではサビ管の全体像と合わせて、やや就労支援に関わる部分に寄せて解説をいたします。
サビ管の概要
サビ管というのは、「サービス管理責任者」という資格の正式名称を省略したものです。
あらゆる障害者福祉において、支援内容を細かく計画し、家族や本人と話し合いながら実際の支援が実施されますが、その実務におけるリーダー的な役割を担うのがサビ管です。
つまり、「福祉サービスの提供」を「管理する責任者」ということです。
このサビ管ですが、法律により障害者福祉に関わるサービスや事業を行うにあたり、一定数の配置が義務付けられた資格者でもあります。配置が義務付けられた事業は主に以下となります。
- 療養介護
- 生活介護
- 自立訓練
- 就労移行支援
- 就労定着支援
- 就労継続支援A・B型
本来はもう少し細かく分けられていますが、障害者福祉の現場では、必ずと言っていいほど接する機会のある資格者なのです。
「就労移行支援」「就労定着支援」「就労継続支援A・B型」サービスを利用した経験があれば、サビ管の資格を持った人と関わったことがある方もいるのではないでしょうか。
なお、サビ管(サービス管理責任者)と似た名称で、「サービス提供責任者」という資格があります。
2つの違いを簡単に分けると以下のようになります。
- サービス管理責任者
- 事業所内での支援やサービス提供
- サービス提供管理者
- 在宅や訪問の介護や支援
つまり、障害者自らが通う形の事業で求められるのがサービス管理責任者で、訪問介護関連の事業で求められる資格がサービス提供責任者ということです。
サビ管の主な仕事内容
では、サビ管はどのような役割を担い、どういった仕事を任されているのでしょうか。
サビ管の業務範囲は実に広く、法規則などで細かな規定などがあるため、ここでは主要な業務内容を抜粋してご紹介します。
- 〈支援計画に関する業務〉
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- 福祉サービス利用者のニーズ把握と支援計画の作成
- 支援計画の説明等に関する利用者や家族との面接や会議の企画、運営
- 支援計画の実施状況のチェックと記録
- 実施後の支援計画の見直し
- 〈事業や経営に関する業務〉
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- サービス利用者数と利用機関の適正化
- 利用者満足度調査の実施
- 事業の経営計画等への参加と提案
- リスクマネジメント
- 苦情受付
- 〈施設職員への指導助言に関する業務〉
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- 利用者、家族との面接時における同席
- ニーズ把握や課題の整理に関する指導、助言
- 支援計画の作成に関する指導、助言
- 支援計画の実施状況のチェックと記録に関する助言
- 〈関係機関との連携業務〉
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- 担当者会議への出席
- 関係機関への引継ぎ業務
- 地域の連携事業への協力
- 施設の見学、実習の受け入れ
- 事業PR活動
- 地域への普及啓発
主なものでもこれだけの業務がありますので、サビ管は障害者福祉の現場において大変重要な存在ということがお分かりいただけると思います。
簡単に取得できる資格ではなさそうと感じた方もいるかも知れませんが、実際にサビ管の資格取得要件は非常に厳しくなっています。
サビ管になるための要件と研修内容
サビ管になるためには、大きく分けて「一定期間の実務経験」「都道府県で実施する研修を受ける」という2つの要件を満たす必要があります。
こうして見ると、サビ管の資格を取得するのはそれほど難しくなさそうにも見えますが、実はその基準が難解で細かく規定されており、また、研修を受けようにも自由に受けられないのが実情です。
本コラムで解説している障害者支援に関する「就労移行支援」「就労継続支援A・B型」「就労定着支援」におけるサビ管の要件と研修内容は以下となります。
- 〈一定期間の実務経験〉
- 実務経験5年以上
- 〈都道府県で実施する研修〉
- 「(就労分野の)サービス管理責任者研修」の受講
- 「相談支援従事者初任者研修」の受講
先述の通り、サビ管の資格を取得する要件には細かなルールがあり、都道府県により要件が異なるケースもあるため、詳細はお住まいの都道府県か、各支援事業所等に勤務する予定があれば、その事業所のある都道府県に確認されることをおすすめします。
サービス管理責任者制度と基準の曖昧さ
実は「サービス管理責任者」という名称自体、平成18年厚生労働省告示第544号の中で使用している総称となっており、障害者総合支援法などの法律で定められた正式名称ではありません。
例えば、不動産取引の資格で「宅地建物取引士」がありますが、国家資格でもあるため正式名称や制度が宅地建物取引業法の中でも明記されています。
対するサビ管は、「サービス管理責任者研修」という制度があり、省令等では頻繁に「サービス管理責任者」という言葉が登場するものの、まだ厚生労働省の告示や通達による慣例的な名称という範囲に留まっています。
なぜ名称の解説にこだわるかと言うと、実はサビ管の制度自体が曖昧という事が否定できないためです。
サビ管はなろうと思って簡単になれるものではないのが現状であり、要件などは細かく決められていても、サビ管の資格を取得するまでのプロセス等が都道府県によって統一されていないのです。
受講資格の基準が曖昧という点についてはカナオカは語る「いっそ試験で選びましょうよ!」というブログも参考になります。
上記の記事内にもありますが、都道府県によりサービス管理責任者研修を受講できる基準や実施日が違い、1度資格を取得すれば後は更新講習等もありません。
さらに、研修を実施する業者も都道府県の判断で決められているため、研修内容の質にも差があるとされています。
サビ管は、まだまだ曖昧さの残る資格であるという事実は知っておいた方が良いかもしれません。
2019年に予定されている改定内容と新制度
さて、何かと難しいルールや曖昧さもあるサビ管の資格ですが、2019年にその制度の改正が行われます。
詳細な解説は省略しますが、改正される内容の主な点な以下となります。
- 分野別に分かれていたサービス管理責任者研修のカリキュラムを統一化
- サービス管理責任者研修の受講要件である実務経験の年数を緩和
- OJTを目的としてサービス管理責任者研修の終了後に一部業務を可能とする
- 「サービス管理責任者等実践研修」の新設
- 5年ごとに「サービス管理責任者等更新研修」を実施
詳しい改正内容や実施時期はまだ公表されていませんが、2018年3月に厚生労働省の社会保障審議会にて話し合われており、2019年に実施するとされています。
サービス管理責任者という資格は、制度の全体像が見えづらいところがあるのが実情です。簡単に取得できる資格ではないものの、障害者福祉の促進や支援の充実を図るためにも、その門戸をこれまで以上に広げる余地は十分にあるのではないでしょうか。
【参考】サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて
まとめ
今回解説したサービス管理責任者に限らず障害者福祉に関する法律はまだまだ多くの課題が残されています。
例えば障害者手帳に関しては、都道府県や市区町村などの自治体に任せきりになっていることで弊害が生まれている制度もあります。
ただ、国も全く放置している訳ではなく、厚生労働省の審議会や研究会を中心として日々様々な話し合いが行われていますので、これから徐々に障害者福祉関連の制度は整備されていくだろうと考えられます。
まずは各種制度の明文化や統一化、これが障害者福祉の促進や社会全体の理解を深めるための最重要課題なのかもしれません。
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