精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者の方が日々の生活のしづらさを解消し、前向きに社会参加ができるよう、個々に合った福祉サービスを利用できる手帳制度のことです。
サービスの内容は主に日常生活をサポートするものとなり、障害等級によって選択できる内容も異なります。
そこでこの記事では、精神障害者保健福祉手帳1級・2級・3級で受けることが可能な福祉サービスの違いについて解説します。
精神障害者保健福祉手帳の特徴について
精神障害者保健福祉手帳は精神障害を持つ方が利用できます。しかし、病気になってもすぐには申請できません。
手帳を申請できるのはメンタルの不調のために病院を初めて受診した日から6ヶ月が過ぎても症状が改善せず、特定の傷病名がついた場合となります。
また、特定の傷病は以下の通りとなりますので、覚えておきましょう。
- 統合失調症
- うつ病・躁うつ病(双極性障害)などの気分障害
- てんかん
- 薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
- 高次脳機能障害
- 注意欠陥多動性障害、自閉症などの発達障害
- ストレス関連障害などのその他の精神疾患
さらに、精神障害者保健福祉手帳は永久的に利用できるものではなく、有効期限は2年となっています。そのため、2年ごとの更新が必要です。
また、更新時に症状が緩和や回復している場合は、等級が下がったり、手帳の不支給という結果になることもあり得ます。
精神障害者保健福祉手帳の等級とは?
精神障害者保健福祉手帳には、1級・2級・3級があります。等級は、医師の記載した診断書をもとに、精神障害があるかどうかや個人の症状の程度、社会・日常生活に一定の制限を受けるかを総合的に判断し、決定されます。また、等級が低くなるほど、症状が重くなるというしくみを取ります。
精神障害者保健福祉手帳の1級・2級・3級は、以下のような状態が基準となりますので、確認しておきましょう。
- 精神障害者保健福祉手帳1級
- 寝たきりあるいはその周囲しか動くことができず、自分の身の回りのことはもちろん、他者との意思疎通ができない
- 精神障害者保健福祉手帳2級
- 社会・日常生活において著しい制限を受け、身の回りのことなどが人の協力なしにはできないことが多い
- 精神障害者保健福祉手帳3級
- ある程度の社会・日常生活はできるが、特に就労に関しては著しい制限を受ける
等級により受けられる福祉サービスの違い
精神障害者保健福祉手帳は、等級によって症状の程度や社会・日常生活の制限具合が異なるため、受けることのできる福祉サービスも違います。
以下に、等級別に受けることが可能な福祉サービスをご紹介します。
精神障害者保健福祉手帳1級
所得税控除 | 本人に収入がある場合は特別障害者とみなされ、所得から40万円が差し引かれる |
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住民税 | 本人の所得から、28万円が控除される |
相続税 | 相続する者が障害者の場合(特別障害者)は、その者が85歳になるまでの1年につき、20万円が相続税から差し引かれる |
自動車税の免除 | 障害者が所有する車の自動車税や軽自動車税、自動車取得税が全額免除になります。 |
公共料金 | NHK受信料の免税や水道料金などが割引される |
公共交通機関の料金 | タクシー無料乗車券の配布やバス・電車などの運賃が割引される |
公共施設への入場料金 | 美術館などへの入場料金が割引される |
携帯電話料金 | 持参している携帯電話の基本使用料などが割引される |
精神障害者保健福祉手帳2級
所得税控除 | 本人に収入がある場合、その所得から27万円が差し引かれる |
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住民税 | 本人の所得から26万円の控除ができる |
相続税 | 相続する障害者が85歳になるまでの1年につき、10万円が障害者控除として相続税より差し引かれる |
公共料金 | NHK受信料減免や水道料金などが割引される |
公共交通機関の料金 | バスや電車などの運賃が割引される |
公共施設への入場料金 | 美術館などへの入場料金が割引される |
携帯電話料金 | 携帯電話の基本使用料などが割引される |
精神障害者保健福祉手帳3級
所得税控除 | 本人に収入がある場合、その所得から27万円が差し引かれる |
---|---|
住民税 | 本人の所得から26万円が控除される |
相続税 | 相続する障害者が85歳になるまでの1年につき、10万円が相続税から控除される |
公共料金 | NHK受信料の減免や水道料金などが割引される |
公共交通機関の料金 | バスや電車などの運賃が割引される |
公共施設への入場料金 | 美術館などへの入場料金が割引される |
携帯電話料金 | 本人名義の携帯電話の基本使用料などが割引される |
福祉サービスを受けられるかどうかは地域差がある
精神障害者保健福祉手帳を持つことで、精神障害を抱える方は等級によって適切な福祉サービスを受けることが可能になります。
しかし、住んでいる地域によっては、上記にご紹介したサービスを受けることができなかったり、割引額が異なったりなどのケースも存在します。
特に公共交通機関の運賃や公共料金、携帯電話料金は運営会社によってルールが違ったり、割引率に差があったりすることが多いので、注意しておきましょう。
自分がどの福祉サービスを受けられるか迷った場合は、最寄りの市役所の福祉課などに問い合わせてみることが大切です。
【出典】
みんなのメンタルヘルス総合サイト 精神障害者保健福祉手帳 厚生労働省
障害者と税 国税庁
執筆者プロフィール
精神保健福祉士、社会福祉士、認定心理士、心理カウンセラー
カウンセリングセンターや精神科病院に勤務。うつ病などの患者やその家族に対するカウンセリング・相談や支援を経て、現在はメンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。