精神障害者手帳と身体障害者手帳、療育手帳との割引・優遇制度の違い

精神障害者手帳と身体障害者手帳、療育手帳との割引・優遇制度の違い

日本で発行されている障害者手帳は「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」「療育手帳」の3種ですが、手帳の種類による割引や優遇制度の違いを知りたい方は多いはず。

実は障害者手帳の違いによる割引や優遇制度に大きな違いはありませんが、各障害者手帳の等級や障害の程度によって内容が異なっています。

この記事では「精神障害者手帳・身体障害者手帳・療育手帳」の大まかな違いを解説しつつ、それぞれどんな割引や優遇制度があるのかをご紹介いたします。

各障害者手帳の概要

障害者手帳は「等級」「障害の程度」により分かれており、各手帳による割引や優遇制度は等級により内容が異なります。

【精神障害者保健福祉手帳】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律45条を基に、都道府県が発行すると定められている精神障害者に発行される手帳。同法令の施行令、施行規則にて発行基準が細かく定められており、障害の度合いにより1級から3級で分けられている。申請には医師の診断書が必要。
【身体障害者手帳】
身体障害者福祉法15条を基に、都道府県が身体に障害がある人に発行する手帳。同法令の施行規則により記載事項や障害の状況に応じた等級が定めれている。等級は1~7級まであるが、7級については該当の障害が2つ以上ないと手帳は発行できない。申請には医師の診断書が必要。
【療育手帳】
知的障害者に発行される療育手帳は法令による明確な定めがないが、旧厚生省の「療育手帳制度について」「療育手帳制度の実施について」にて発行概要が通達されており、同通達の内容を基に都道府県または政令指定都市の市が発行する。障害等級はなく、重度の場合は「A」、それ以外は「B」などで分けられている。特に医師の診断が必要という規定はなく、児童相談所又は知的障害者更生相談所における判定結果により手帳が発行される。

各障害者手帳の発行規則や障害等級は手帳の種類により違います。また、各手帳による割引や優遇制度の具体的な内容を例示しているのは療育手帳の通達のみとなっています。

精神障害者手帳・身体障害者手帳・療育手帳の減税措置

日本の税金は「国税」と「地方税」で分かれていますが、障害者手帳の保持者は一部の国税と地方税が減税されます。減税される税金の種類はどのエリアも大差はありません。

また、障害種別で減税措置の内容が違うことはあまりないですが、「特別障害者」と「普通障害者」では内容が異なっています。

※特別障害者…身体障害1~2級、精神障害1級、重度の知的障害と判定された人
※普通障害者…上記以外の人

【所得税の所得控除】
普通障害者:27万円/特別障害者:40万円
【住民税の所得控除】
普通障害者:26万円/特別障害者:30万円
【相続税の減額】
普通障害者:10万円/特別障害者:20万円
【贈与税の非課税】
普通障害者:3,000万円/特別障害者のうち「特定障害者」に該当する人:6,000万円
【利子等の非課税】
障害の別に関係なく、銀行預金の利子や投資信託等に付利される350万円までの利子が非課税となる。
【自動車税・軽自動車税・自動車取得税】
障害等級や自動車の使用範囲、地方自治体により自動車に関わる税金が減免される。減免額や要件は各自治体によりバラバラなため各自治体に確認が必要。

※「特定障害者」については以下の記事にて詳しく解説しています。

特別障害者とは?一般障害者や特定障害者との違いを解説

精神障害者手帳・身体障害者手帳・療育手帳の助成金と補助金

障害福祉を目的とした優遇措置は減税だけでなく助成金・補助金もありますが、対象の障害等級や施策、優遇内容が国と地方自治体で分かれています。

また各制度により認定基準は違うものの、精神障害者手帳の扱いについては概ねどの制度も障害の程度が重度だと認められた場合に限られるケースが少なくありません。

では、具体的にどんな優遇措置があるのか見てみましょう。

【特別障害者手当(国)】
身体と精神に重度の障害があって常に介護を必要とする20歳以上の人に2万7,200円が支給される。
【障害児福祉手当(国)】
身体と精神に重度の障害があって常に介護を必要とする20歳未満の人に1万4,790円が支給される。
【特別児童扶養手当(国)】
精神や身体に障害のある20歳未満の児童を養育する父母等に手当を支給する制度。1級なら5万2,200円、2級で3万4,770円と定められている。
【重度心身障害者医療費助成制度(自治体)】
重度障害のある人の医療費を一部負担する制度。自治体により対象となる障害等級の内容が違う。
【障害者福祉手当(自治体)】
障害等級に応じて月額5,000~1万5,000円前後の手当金を支給する制度。自治体により手当金の額や制度名が違うため確認が必要。精神障害者については、自治体により支給の有無が違う。
【生活保護の障害者加算(自治体)】
生活保護を受ける障害者の支給額について加算する制度。住んでいる地域により級地が決められており、加算額や認定基準は自治体により異なる。
【公営住宅の優先入居・家賃の減額(自治体)】
各自治体により公営住宅へ優先的に入居できるよう抽選を配慮し、家賃の減額などを行っている。障害の種別による違いはあまり見受けられないが、自治体によっては障害等級で優遇措置に違いがある。

上記以外にも自治体によって独自の助成金や補助金を支給しているケースもあります。

例えば、身体障害者の場合は生活に必要な補助具の購入費助成、聴覚障害者には電話の使用料金を助成するといった内容です。

どれも自治体独自の施策であるため、お住まいの自治体に確認してみると意外な助成金や補助金が見つかるかもしれません。

参考までに、北海道札幌市における精神障害者助成金や補助金について以下の記事でまとめていますので、是非ご覧ください。

札幌市の精神障害者のための助成金・補助金一覧

精神障害者手帳・身体障害者手帳・療育手帳で受けられる福祉サービス

「国」「自治体」「手帳種別」「障害等級」により、受けられる割引や優遇制度は全く違うのがお分かりいただけたかと思います。

手帳の種類によって割引や優遇内容が全く違うケースは多くありませんが、民間サービスと同じようにサービス提供者によって割引や優遇措置の内容は異なります。

そこで、一般的によく知られたサービスにおける割引や優遇措置について、精神障害者手帳と身体障害者手帳、療育手帳の所持者が受けられる割引や優遇措置を見てみましょう。

【バスの運賃割引】
バスの運賃について、各障害者手帳共通でバス会社により3~5割引になる。
【NTTのふれあい案内(電話番号案内)】
104の電話番号案内料金について、各障害者手帳共通で無料になる。
【携帯電話料金の割引】
各障害者手帳共通で携帯電話料金を一定額割引。割引額は携帯電話会社や利用プランにより異なる。
【NHKの受信料免除】
各障害者手帳共通でNHKの受信料を免除。住民税非課税世帯は全額、その他重度障害に該当すると半額免除。
【生活福祉資金貸付制度】
都道府県社会福祉協議会が各障害者手帳共通で福祉資金を貸し付ける制度。最低10万円、最高で580万円など融資内容により金額が違う。
【タクシー料金の割引】
各障害等級によりタクシー料金が1割引となる。ただし事業者により身体障害者のみのケースもあり確認が必要。自治体が独自にタクシー料金の割引券を配布しているケースもある。

障害者等級による割引内容の違いはあるものの、民間サービスのほとんどは各障害者手帳共通で割引制度を導入しています。

ただし、鉄道会社のみ精神障害者に割引制度を導入していないケースが多いため、割引の適用を想定した移動の際は事前に鉄道会社に確認されることをおすすめします。

精神障害者でも割引される鉄道会社一覧!JRの導入もいよいよ始まる?

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