発達障害の特徴と才能を活かした職場での活躍事例5選

発達障害の特徴と才能を活かした職場での活躍事例5選

昨今メディア等で取り上げられる機会が多くなった「発達障害」。

しかし、発達障害者の暗い過去や苦悩、生きづらさに着目する記事が多く、実際の活躍事例を紹介するメディアはあまり多くないのが現状です。

この記事では、発達障害の特徴や才能が活かされたことにより職場で活躍できるようになった事例をまとめて5つご紹介します。

【事例1】IT関連企業で活躍する発達障害者


最初にご紹介するはどちらもIT関連企業です。発達障害者は「過集中」「コミュニケーションが苦手」といった特性がよく見られます。

それをデメリットと捉えて改善策を考えるのではなく、個性と捉えた業務フローや職場環境を整えているのが「グリービジネスオペレーションズ株式会社」と「株式会社ウチらめっちゃ細かいんで」です。

「グリービジネスオペレーションズ株式会社」は、グリー株式会社の特例子会社として2012年に設立。雇用している障害者のうち8割が発達障害者です。

グリービジネスオペレーションズ株式会社が発達障害を持つ方を採用する以下3つの理由があります。

  • 興味のある分野に対して情熱や関心を長期継続できる
  • 上記の事実からIT事業との親和性が高い
  • 障害者雇用に積極的な企業が少なく買い手市場である

主な業務内容は画像加工やイラストの編集、ゲーム内におけるセリフの文字起こしなど。作業自体は簡単ですが、集中力と根気のいる作業だからこそ発達障害の方が活躍しているのだそうです。

社員全員が“引きこもり”経験者で構成される「株式会社ウチらめっちゃ細かいんで」は、IT専門就労移行支援事業所「フロンティアリンク キャリアセンター」から就労移行を経て2017年に設立されました。

主な事業はホームページ製作やアプリ開発、引きこもりに関する情報ポータルサイトを運営しています。オフィス内は静かで残業も無し。これらも発達障害者に多くみられる高い集中力による賜物だと言えるでしょう。

【出典】障害者雇用事例リファレンスサービス

【事例2】発達障害者の発達障害者による発達障害者のための会社


大部分が発達障害者で、発達障害者が中心になって運営されている企業もあります。その名もずばり「株式会社発達障害」。同社の事業は発達障害者向けのサービスが中心ですが、発達障害者の特性を考えると「確かに必要だ」と思えるものばかりです。

  • 障害者雇用支援アドバイザーによる「キャリアカウンセリング事業」
  • フリーランサーが手掛ける商品やサービスを紹介する「フリーランス支援事業」
  • コミュニケーションが苦手な人でも参加できる「婚活応援事業」
  • 発達障害者向けツールを紹介する「お役立ち商品情報提供」
  • その他「発達障害者の社員とのトラブル相談事業」や「発達障害者雇用コンサルティング」

株式会社発達障害ですが、実はクラウドファンディング「Readyfor」にて100万円という目標額を超えた120万円の支援を受け、2015年に設立されました。

プロジェクトに支援したメンバーは発達障害者だけでなく、医師やNPO法人、地元の人など様々。発達障害者が作る会社だから発達障害者向けのサービスを提供できる。そんな当たり前のことをなぜ誰もやらなかったのかと考えさせられる事例です。

【出典】株式会社発達障害

【事例3】発達障害の拠り所を提供するBAR


発達障害者が作る会社があれば、発達障害者が運営するBARもあります。「発達障害BAR The BRATs」を営む光武克さんは現役の塾講師です。

シリアスな雰囲気の発達障害コミュニティではなく、お酒を飲みながら気軽に話ができる場を提供しようと思ったのがBAR立ち上げのキッカケ。メディアの反響も大きく、現在はご自身でYouTubeチャンネルも運営されています。

光武克さん自身、ADHDの衝動的な行動を起こしてしまう面や時間管理が苦手などの症状から、仕事が上手くいかず深く悩んだ時期もあったとのこと。ご家族の勧めもあって心療内科を受診したところ、発達障害との診断を受け、初めて自身が発達障害者だと自覚するようになりました。

その後すぐに環境が変わることはありませんでしたが、「好きなことをやる」という思いで作ったのが発達障害BAR The BRATs。発達障害者の活躍事例というと、どうしても企業への就職という面で考えがちですが、「自分自身でコミュニティを作る」という良い事例です。

【出典】発達障害BAR The BRATs【公式】

【事例4】学習障害と”夢”を抱えたドローンパイロット


発達障害者が立ち上げた会社なら、ドローンパイロットの「高梨智樹」さんの事例も紹介しないわけにはいきません。TBSのドキュメンタリー番組「情熱大陸」でも取り上げられましたので、ご存知の方も少なくないかと思います。

ドローンパイロットは空中撮影だけでなく、物流や防災、インフラ面での需要も高まっています。そんな日本のドローン市場で大活躍しているのが高梨智樹さん21歳。ドローン操作の高い技術が認められ、国土交通省から特別な許可を得て、災害時の状況把握のために空中から映像を撮影する仕事などを引き受けています。

高梨智樹さんは識字障害のある発達障害者。引きこもりがちだった生活の中で出会ったドローンという存在に衝撃を受け、以後はドローンに没頭。ドローンに興味を持ってからすぐに2016年の国内大会で優勝。日本代表として世界大会に何度も出場するほどの実力者です。

現在では実父と共にドローン専門会社「スカイジョブ」を立ち上げ、ドローンによる空撮事業を行っています。

高梨智樹さんについて多くのメディアでは「発達障害」であることに焦点を当てられがちですが、そんな世間の目を余所に、警察など行政からの講演依頼やドローン開発のテストパイロットなどの依頼を受け、数多くの実績を残し続けています。

【出典】SKYJOB

【事例5】起業で大失敗!7000万円の借金地獄から著名ライターへ


最後は借金7000万円の窮地から脱して今なお活躍されている発達障害の方の事例です。

紹介しているのは「日経ビジネス」のインタビュー記事。ADHDとされる「借金玉」さんは、幼少の頃から社会適応性の無さから苦労しており、何とか早稲田大学を卒業して大手金融機関に就職するも、やはり仕事のしづらさから職場になじめず、飲食店の起業を決意します。

めでたく開業したお店は大繁盛してメディアの取材も殺到。しかし、店舗を拡大して貿易事業に乗り出した頃に従業員の不正行為で、なんと7000万円の借金を負うことに……。

そんな借金玉さんですが、事業を売却して営業会社の職場で働きつつ執筆活動をしている間に、著書『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』が大ヒット。知り合いのメンターの励ましなど、紆余曲折ありながらも借金完済の目途が立ったとのことです。

現在は週刊プレイボーイの連載や自身でブログ運営も行っている借金玉さん。銀行員からの飲食店経営者への転向、そして大きな挫折から這い上がり現在は著名なライターとして活躍中です。

決して順風満帆とは言えない山あり谷ありの事例かもしれませんが、発達障害者だからといって諦めなかった姿勢が多くの人の共感を呼んでいます。

発達障害者向けの支援事業も徐々に普及してきていると言われます。今回ご紹介した活躍事例は、支援を受けて雇用された方だけでなく、自分自身で事業を立ち上げた方もいます。

「活躍」とは必ずしも雇用されることを前提とする必要はなく、自身の特性をどう活かすかがカギなのかもしれません。

【出典】発達障害就労日誌 / 日経ビジネス 起業失敗で借金7000万、あわや「生命保険で返済を……」

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