発達障害者の失敗事例3選。仕事でミスする原因と対策

発達障害者の失敗事例3選。仕事でミスする原因と対策

昨今よく耳にする、発達障害、またはグレーゾーンと言われる人たちの職場での苦悩。なかなか周りには理解してもらえない、発達障害特有の症状で悩んでいる人は数多くいます。

中には仕事上で取り返しのつかないミスをしてしまうなんてケースもあるほど。それにしても何故、発達障害の方はミスをしてしまうのでしょうか。

今回は筆者の経験や発達障害の症状を基に「何故発達障害者は仕事でミスをするのか」を解説します。併せて、対策方法やおすすめのグッズもご紹介しますので、是非最後までご覧ください。

発達障害者が仕事で失敗する原因とは?

成人になってから職場での「困った」を抱え、診断の結果、発達障害と診断されてホッとしたり、不安になったりと感じ方は人それぞれでしょう。発達障害とひと口に言っても、ADHD(注意欠如・多動症)、ADD(多動のない注意欠如が多い人)、アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)、LD(学習障害)など様々です。

例えば、ADHDの主な症状を見てみましょう。

  • 忘れ物が多い
  • 課題が間にあわない
  • うっかりミスが多い
  • じっとしていられない
  • 待つのが苦手

仕事においては致命的なミスに繋がりかねない症状であるのが分かります。大事な商談での忘れ物、納期までに間に合わせられない、会議中もそわそわしているなんてことがあれば、周囲の信頼を損ねてしまうでしょう。また、自閉症スペクトラムは以下のような症状があります。

  • 他者との普通の交流が困難
  • コミュニケーション方法が独特
  • 物を並べ方、収集、同じ行動を繰り返すなどのこだわり
  • 視覚、聴覚、嗅覚などの感覚過敏

その他にもLDは読み書き計算が苦手であり、発達性協調運動症だと不器用さが仕事上で問題になるケースもあります。筆者自身、表計算ソフトや詰まった文字を読むのが苦手。細かな作業に抜けがあることがよくあるため、発達障害が理由による仕事で失敗してしまう状況はよく分かります。

発達障害者の仕事での失敗事例

では、もう少し具体的に発達障害による仕事の失敗例を見てみましょう。筆者はADDと自閉症スペクトラムの併発があります。そこで筆者の就労経験も含めて仕事で失敗してしまう例をいくつかご紹介します。

工場などでの失敗

短期アルバイトでよく見かける工場でのライン作業やピッキング。ピッキングとは、必要な商品をピックアップしてコンテナなどに詰める作業です。

例えば、ライン作業だとベルトコンベアが常に稼働しているため、急かされるとパニックになることがあります。また食品工場では「このネギをひとつまみこの中に入れてね」と指示されるも、「ひとつまみ」の調節が上手く出来ません。「多すぎる」「少なすぎる」の感覚が理解できないのです。

事務系会社での失敗

事務系の仕事は「正確さ」が求められます。

筆者の経験談ですが、印刷会社で作業していた時のこと。披露宴に招待する名簿の名前や住所、郵便番号の間違い、地名変更がないかといった確認作業でしたが、2年ほど経ってもどうしても確認漏れが無くなりませんでした。印刷物を2枚用意して、定規を当てて対応するも間違いを無くせないのです。そもそも手先が不器用なため、印刷物を汚してしまうこともありました。

それよりも一番大きな「困った」は、コミュニケーションの取り方が分からない症状です。「いつ」、「誰に」、「どんな時に」仕事の確認をしたらよいか分からず、勝手に判断して注意されるということが度々起こりました。

障害者雇用での失敗

発達障害だから障害者施設の仕事なら大丈夫かというと、実はそんなことはありません。

パーテーションなどの仕切りがない、A型事業所での事務系の仕事をしていたときのこと。他人の作業、貧乏ゆすり、音などが気になって集中できないという経験があります。ガタガタ机が動く、居眠りをしている人がいるなど、目に見えるものや体で感じるものをシャットダウンできないのです。

ただ、原因を作っているのは、やはり障害を抱えた人。どちらも悪くないため責めようがありません。そもそも障害者施設であるため、他の人と比べてどうしても自分の症状が軽く思えてしまいます。しかし、その考えが大きな失敗。自分よりも障害の重い人を優先しているうちに、心が疲れてしまったのです。

発達障害者が仕事で失敗しない為の対策

筆者の経験などを基に、発達障害の仕事でミスする原因を解説させていただきましたが、対策がないわけではありません。最低限、これはやっておくべきというポイントをご紹介します。

診断を行い、得意不得意を知ること

まずは臨床心理士が在籍している発達障害の診断を行う精神科で「WAIS-Ⅲ」という知能検査を受けましょう。

自分の得意不得意を明確に知ることができるため非常に参考になります。また、各都道府県に設置されている発達障害者支援センターや障害者職業センターに相談してみると、自分に向いている作業などを詳しく診断してもらえます。

【参考】発達障害情報・支援センター / 地域障害者職業支援センターによる支援

障害に理解のある職場・障害者雇用のある仕事を見つけて自分を伝える

障害者雇用も徐々に促進されてきていますが、まだまだ一般企業で配慮を求めるのは難しいのが現状です。障害者雇用を行う会社も合理的な配慮が整備されているものの、まだまだ課題は残ると言われています。もちろん何が苦手でどういった症状があるかは、きちんと自分から企業に説明しなければいけません。

では実際に、企業側へ何をどう伝えるべきでしょうか。例えば、札幌市の就労支援関係者によるプロジェクトチームが、発達障害のある人への支援ポイントをまとめた一般の職場向けの「虎の巻」シリーズがあります。当事者にとっても「どこで困るのか」「何がダメだったか」がイラストで分かりやすく紹介されており、「あるある!」という自分と同じ症例を見つけやすくなっています。

もし似たようなことがあると感じる場面を見つけたら、それを職場に伝えつつ、自分なりの対策を予め考えてみましょう。

【参考】札幌市ホームページ「発達障がいのある人たちへの支援ポイント「虎の巻シリーズ」」

一人で悩まず、色々な支援を得るのをためらわない

様々な支援センターや保健所、医療機関のケースワーカーさんなど、相談に乗ってくれる方はたくさんいます。各地域にある「障害者生活・就労支援センター」という施設も利用可能です。

一人で悩むことで本来持っていなかった二次障害を併発するケースも多くあります。迷ったら一人で抱え込まず、積極的に相談するようにしましょう。

スマートフォンやパソコン、生活雑貨を上手く利用する

発達障害を持っている人は、自分自身で工夫していることが意外と多くあります。

  • 財布や家の鍵など、必ず持って出かけるものはいつも同じ位置に置く
  • 次の日忘れてはいけない必要なものは思い出したその時に準備しておく
  • 同じく忘れてはいけないものは玄関に置いてホワイトボードにも書き込んでおく
  • カレンダーを月と年間で分けて見られるように二つ用意して重要な日を書いておく
  • など……。

そんな発達障害者の方が便利に使えるグッズやアプリもあります。

  • 忘れ物の位置を教えてくれるグッズ
  • 過集中を予防するためのタイマー
  • 薬の飲み忘れを防ぐスマートフォンアプリ
  • タスクのうっかり忘れを防ぐリマインダー
  • 耳栓やイヤホン
  • 色のついた眼鏡
  • など……。

ただし自分にどんな工夫やグッズが必要かは、自分を知らなければ的外れになります。また職場の理解、支援の利用も大事ですが、やはり自分自身を知っているからこそ実現できることです。

一人で何でも判断せず、まずは専門医や周りの人に相談しましょう。その上で理解ある職場を見つけ、自分なりの努力を重ねることで自己肯定感がアップしていくはずです。

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