障害者スポーツと聞いて、多くの方が最初にイメージするのが「パラリンピック」ではないでしょうか。
2020年に東京パラリンピックを控え、今では障害者スポーツも注目される国際イベントの1つになりましたが、それでも日本においては障害者スポーツの人口はまだまだ少ないと言われています。
それは競技の練習場所が少なかったり、障害者スポーツの存在自体の認知度が低いことの要因が有りますが、障害者スポーツ関連の団体を調べてみると、実際には障害者スポーツは全国各地で盛んに行われていることが分かります。
今回は障害者スポーツを少しでも広めることを目的として、障害者スポーツのメリットや始め方、スポーツチームの探し方などをご紹介します。
障害者スポーツのメリットとは?
最初に、障害者スポーツにはどんなメリットがあるのか整理してみましょう。
- 心身の健康を維持できる
- ストレスの解消
- 行動範囲が広がる
- 外出の機会が増える
- 交友関係が広がる
障害を理由に外出する機会も少なく、ふさぎこみがちな方も、体力づくりや健康の維持だけでなく、気持ちの面でも良い影響を得られるのが障害者スポーツのメリットです。
また、笹川スポーツ財団の調査によると、「スポーツ・レクリエーションをやってよかったこと」という障害者への質問に対し、「体を動かすこと自体が楽しい」「性格が明るくなった」「周囲の理解が向上した」というメリットを挙げる人もいたと報告されています。
【参考】笹川スポーツ財団「平成27年度 スポーツ庁『地域における障害者スポーツ普及促進事業(障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究)』報告書」
障害者スポーツが誕生したキッカケ
障害者スポーツの競技人口を調査した明確なデータはありませんが、一般的に競技人口や練習できる場所は少ないとされています。そこで、障害者スポーツを行っている人がどんなキッカケで始めたのか見てみましょう。
例えば、東京都障害者スポーツ協会が発行している「障害者スポーツの手引き」という資料によると、実際に障害者スポーツを実践している人へのインタビューがあり、障害者スポーツを始めたキッカケが紹介されています。
視覚障害者の事例
肢体不自由者の事例
また、「パラリンピック出場選手がその競技を始めたきっかけ」という調査を2013年に公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団が行っていますが、回答の多かった順に以下のようになっています。
- 友達や知人のすすめで(34%)
- 学校の授業やクラブ活動で(14.5%)
- 家族のすすめで(11%)
- 医療関係者のすすめで(9.5%)
- テレビや雑誌などメディアを通じて(9.5%)
- 福祉関係者のすすめで(8.5%)
- リハビリで始めたから(8%)
- 講習会や交流会で紹介されて(7%)
- 国際大会(パラリンピック・オリンピック・世界選手権など)を観戦して(6%)
- 受傷、発症前よりプレイしていたから(5%)
- 国内大会(障がい者スポーツ大会・国民体育大会など)を観戦して(3%)
上記のアンケート調査はもともと別のスポーツをされていた人も含まれている可能性はありますが、家族や知人など周囲の勧めでスポーツを始めた人は多いだろうと推測できます。
障害者スポーツの始め方
では、これから障害者スポーツを始めたいという人はどのようにすれば良いのでしょうか。
キッカケは人により様々ですが、1つの参考として「マイパラ」という障害者スポーツを紹介するサイトがおすすめですので、興味がある方は以下のサイトをご覧ください。
【参考】マイパラ
https://www.parasapo.tokyo/mypara/
マイパラでは、障害の種類や区分、性別、年齢、屋内競技と屋外競技、球技は得意か否かといった9項目ほどの質問に答えると自分に合ったスポーツを紹介してくれる「パラスポ診断」があり、診断結果の画面からその競技を行っているチームなどを検索することができます。
既にやってみたいスポーツがある場合は「チーム検索」というコーナーから、障害区分や地域、競技種目で検索することができます。
精神障害者や知的障害者向けのスポーツはある?
ここまでにご紹介した障害者スポーツの対象は視覚障害や身体障害がほとんどでしたが、精神障害者や知的障害者向けのスポーツが全くないわけではありません。
パラスポの障害者区分には「精神障害者」「知的障害者」もあり、各競技で精神障害者も参加可能な競技を確認したところ、以下のような競技がありました。
- スポーツ吹矢
- パラダンススポーツ
- 車椅子ソフトボール
- 車椅子ハンドボール
「車椅子」と名の付くスポーツもありますが、上記のスポーツ全てが健常者と障害者の区別なく参加できるスポーツです。健常者でも車椅子を使用して行うスポーツのため、精神障害者の方でも参加可能なのです。
また、以下の記事では横浜にある精神障害者向けのフットサルチームや、精神障害者でも楽しめるフットサルの普及を目指す「日本ソーシャルフットボール協会」が紹介されています。
【参考】神奈川新聞社「心の病抱える人のフットサルチーム、甘え許さない 支援から対等へ」/ 日本ソーシャルフットボール協会
各メディアではなかなか積極的に紹介されることのない障害者スポーツですが、始めるきっかけや入り口は調べてみると意外に多く見つかります。
誰かに勧められるのを待つだけではなく、マイパラなどのサイトに掲載される情報からも障害者スポーツを探してみてはいかがでしょうか。
全国の障害者スポーツ協会一覧
障害者スポーツを始めるきっかけとしてマイパラをご紹介しましたが、そもそも日本には、障害者スポーツ全般を統括する「日本障がい者スポーツ協会」と各都道府県に「障害者スポーツ協会」が存在しています。
実は各都道府県の障害者スポーツ協会でも、障害者スポーツの普及のためにスポーツ教室を運営していたり、スポーツチームを紹介していることがあります。
以下に都道府県ごとのスポーツ協会の一覧をご紹介しますので、お住まいの近くにスポーツ協会があるか確認してみてください。
- 公益財団法人 北海道障がい者スポーツ協会
- 特定非営利活動法人 青森県障害者スポーツ協会
- 一般社団法人 岩手県障がい者スポーツ協会
- 一般社団法人 秋田県障害者スポーツ協会
- 宮城県障害者スポーツ協会
- 山形県障がい者スポーツ協会
- 公益財団法人 福島県障がい者スポーツ協会
- 茨城県障害者スポーツ・文化協会
- 特定非営利活動法人 栃木県障害者スポーツ協会
- 群馬県障害者スポーツ協会
- 一般社団法人 埼玉県障害者スポーツ協会
- 一般社団法人 千葉県障がい者スポーツ協会
- 公益社団法人 東京都障害者スポーツ協会
- 公益財団法人 神奈川県身体障害者連合会
- 新潟県障害者スポーツ協会
- 富山県障害者スポーツ協会
- 石川県障害者スポーツ協会
- しあわせ福井スポーツ協会
- 山梨県障害者スポーツ協会
- 公益財団法人 長野県障がい者スポーツ協会
- 一般社団法人 岐阜県障害者スポーツ協会
- 公益財団法人 静岡県障害者スポーツ協会
- 社会福祉法人 愛知県社会福祉協議会
- 三重県障がい者スポーツ協会
- 滋賀県障害者スポーツ協会
- 京都障害者スポーツ振興会
- 大阪府障がい者スポーツ協会
- 公益財団法人 兵庫県障害者スポーツ協会
- 奈良県障害者スポーツ協会
- 和歌山県障害者スポーツ協会
- 一般社団法人 鳥取県障がい者スポーツ協会
- 公益財団法人 島根県障害者スポーツ協会
- 岡山県障害者スポーツ協会
- 広島県障害者スポーツ協会
- 公益社団法人 山口県障害者スポーツ協会
- 徳島県障がい者スポーツ協会
- 香川県障害者スポーツ協会
- 愛媛県障がい者スポーツ協会
- 社会福祉法人 高知県社会福祉協議会 高知県立障害者スポーツセンター
- 福岡県障害者スポーツ協会
例えば、北海道障がい者スポーツ協会では誰でも参加可能な各種スポーツ教室を開催しており、同協会のスポーツ教室年間カレンダーを確認すると、以下のスポーツ教室が開催予定となっています。
- ゲーリング
- クロスカントリースキー
- バドミントン
- 水泳
- パークゴルフ
- サウンドテーブルテニス
- ボッチャ
- なわとび
以前から障害者スポーツに興味があった人やこれまで全く意識したことがなかった人も、スポーツチームに参加したり、自らスポーツを行うきっかけづくりの機会は数多くありますので、まずはマイパラや各地域の障害者スポーツ協会へ問い合わせてみることをおすすめします。興味の持てるスポーツが見つかるかもしれません。
まとめ
今回、障害者スポーツについてご紹介しましたが、知的障害者や精神障害者向けのスポーツが少ないという事実も分かりました。
実際、パラリンピックシドニー大会では海外チームの不正により知的障害者スポーツが競技から一時的に全て外されたこともありましたし、精神障害者のスポーツは今もパラリンピックの出場資格がありません。
ただ、パラスポや各地域の障害者スポーツ協会を確認する限り、少ないながらも知的障害者や精神障害者向けのスポーツチームはありますし、今回ご紹介した日本ソーシャルフットボール協会以外にも、「日本知的障がい者サッカー連盟」という団体もあります。
知的障害者や精神障害者向けのスポーツも徐々に増えてきている印象はありますが、もし興味のある競技や参加してみたいスポーツがある場合は、一度マイパラや各都道府県のスポーツ協会にチームや団体がないか問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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