月経が始まる3〜10日前になると、さまざまな身体的・精神的な不快な症状が現れるPMS(月経前症候群)。ほとんどの場合は、月経が始まると自然と症状は消えていくと言われています。
しかし、PMSは月経があるかぎり毎月続く可能性があり、日常生活にも支障が出ることが多いため、悩んでいる人もいるでしょう。
この記事では、PMS(PMDD)の特徴や対処法などを詳しく解説します。PMSについて理解を深めたい人は、ぜひ参考にしてください。
PMS(月経前症候群)の症状とは
PMS(月経前症候群)の代表的な症状には、以下のようなものがあります。
1.身体的症状に関するもの
- 下腹部痛
- 頭痛や腰痛、乳房痛
- 動悸
- 悪心
- めまい など
上記の他にも、足のむくみや体重増加などを感じる人も多くいます。
2.精神的な症状に関するもの
- イライラ感
- 抑うつや不安感
- 緊張感や疲労感
- 不眠
- 無気力や判断力の低下 など
特に、精神症状は周囲の人から理解が得られず、無意識に抑え込むことで衝動的な怒りが抑えられなくなったり、つらさから引きこもりになってしまったりする場合もあります。
月経がある女性の70〜80%が、PMSの症状を毎月経験していると言われています。しかし、症状の度合いは人によって異なり、中には日常生活さえ送れなくなるような深刻なケースに陥ることもあるのです。
PMDD(月経前不快気分障害)の症状が出現することも
PMS(月経前症候群)と似たような名前で、PMDD(月経前不快気分障害)という疾患もあります。PMSについて調べているときに、PMDDの名前を見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。
PMDDとは、PMSで現れる不快な症状の中でも、特に精神的な症状が強く出るものを指します。具体的な症状としては、「イライラ感」や「不安感」、「無気力」などが挙げられ、これらの症状が主体で強い場合は、PMDDが疑われます。
PMSとPMDDの原因はなに?
PMS(月経前症候群)は、現時点では明確な原因が分かっていません。しかし、原因のひとつとして考えられるのは、女性ホルモンの周期の変化によるものです。
女性ホルモンは、周期によって分泌される量が変化します。排卵から月経までの周期では、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが多く分泌され、その周期を過ぎると急激に量が減るとされています。
女性ホルモンが分泌される量の大きな変化によって、脳内の神経伝達物質などに影響をもたらし、身体的・精神的に不快な症状が引き起こされると言われているのです。
一方、PMDD(月経前不快気分障害)に関しても、現在のところ明確な原因は突き止められていませんが、PMSと同様に分泌される女性ホルモンの量の変化によるものだと考えられています。
その他にも、精神的に不快な症状が強いPMDDは、日常生活で受けるストレスやカルシウム・マグネシウムなど栄養素の不足も要因として挙げられています。
PMSとPMDDの3つの対処法
次に、PMS(月経前症候群)とPMDD(月経前不快気分障害)の症状を軽くする3つの対処法を紹介します。
1.生活習慣を整える
PMS(月経前症候群)をはじめとする婦人科系の症状は、日常生活の影響を受けやすいと言われています。そのため、生活習慣を整えることで、PMSやPMDD(月経前不快気分障害)の不快な症状を改善できると考えられているのです。
実践しやすい生活習慣の改善としては、朝食をしっかりと食べることが挙げられます。PMSやPMDDで悩んでいる人の多くは、朝食を食べないケースが多いようです。さらに、糖質や脂質の摂取量が極端だという特徴もあり、糖質や脂質の過剰摂取に注意して、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
糖質の摂取量が多いと、血糖値のアップダウンが激しくなり、イライラ感や不安感のような精神的な不快症状が現れるきっかけになりやすいので、改善することをおすすめします。
また、日常生活の中で適度な運動習慣を取り入れたり、しっかりと睡眠時間を確保したりすることも重要です。特に、有酸素運動は体内のリンパのめぐりを良くし、身体的な不快症状を緩和する働きが期待できます。
2.つらいときは医療機関を受診
PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)は、つらい症状が出ていても、なかなか周囲から理解されづらく、医療機関を受診するのに躊躇する人が多くいます。しかし、適切な治療を受けることで不快な症状を改善・緩和できるケースもあるので、症状がひどいときは、医療機関の受診を検討しましょう。
月経関連の不快症状のため、まずは婦人科を受診することをおすすめしますが、PMDDのように、精神的な症状が強く出ている場合は、心療内科や精神科の受診も視野に入れてみてください。
心療内科や精神科は、精神的な不快症状を改善する専門機関なので、月経に関係ないように感じても、症状の改善につながります。
3.症状がひどい場合は精神保健福祉手帳を申請できる
PMDD(月経前不快気分障害)が日常生活に支障をきたすほど重症な場合は、精神疾患として精神保健福祉手帳を申請できる場合があります。
精神保健福祉手帳を申請するには、まず医師に診断書を作成してもらう必要があります。その後、最寄りの市役所などの担当課に必要書類を提出しましょう。申請が承認されると、精神保健福祉手帳を取得することができます。
精神保健福祉手帳を取得すると、職場などで勤務時間を考えてもらえたり、労働環境を整えてもらえたりすることが可能です。そのため、不快な症状を抱えながらでも生活がしやすくなります。
PMDD(月経前不快気分障害)とは?症状と治療法を解説 | ファストドクター【往診・オンライン診療】全国48,000の夜間往診実績 (fastdoctor.jp)
周囲の人も心配りを忘れずに
PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)の症状は、人によって重さが異なります。そのため、特に一緒に過ごす時間が長い家族やパートナーの心配りが非常に重要だと考えられています。特にPMDDは、重症だと日常生活に支障が出るほどつらいため、ちょっとした優しさが本人の症状を軽減してくれる場合もあるのです。
周囲の人は、本人の訴えを良く聞くなど、心配りを忘れずにいることが大切になります。それが、お互いに気持ちよく過ごすための秘訣になると言えるでしょう。
まとめ
PMS(PMDD)の症状は、人によってさまざまで我慢できる程度の人もいれば、日常生活を送るのさえ症状がひどい人もいます。日常生活の中で改善できるポイントを試しつつ、本当につらい場合はすぐに医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしてくださいね。
参考URL
PMSとPMDDの違い | PMS(月経前症候群)ラボ (otsuka.co.jp)
生活習慣を見直す | PMS(月経前症候群)ラボ (otsuka.co.jp)
PMS(月経前症候群)とPMDDの違いは?症状や治し方まで医師が解説 (matsuoka-lcl.com)
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) – 公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp)
男女とも知っておきたい、PMSに向き合うヒント | My Wellness (starbucks-kenpo.or.jp)
【月経前不快気分障害】家族やパートナーへどう接すればよいか|心療内科|ひだまりこころクリニック金山院,精神科 (hidamarikokoro.jp)
執筆者プロフィール
精神保健福祉士、社会福祉士、認定心理士、心理カウンセラー
カウンセリングセンターや精神科病院に勤務。うつ病などの患者やその家族に対するカウンセリング・相談や支援を経て、現在はメンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。