地方の就労支援事業所のユニークな取り組み〜山形県〜

地方の就労支援事業所のユニークな取り組み〜山形県〜


障害者が利用できるサービスの1つに「就労支援」があります。就労支援には一般企業への就労を支援する「就労移行支援」と、就労支援事業所へ通い作業を行う「就労継続支援」があります。
就労支援事業所では様々な課題を抱えつつ、利用者が安心して通い続けられるよう工夫を凝らしている事業所が多く存在します。
今回は山形県でユニークな取り組みを行っている就労支援事業所を4つ紹介します。

みちのく屋台こんにゃく道場


1つめの事業所は、山形市にある「みちのく屋台こんにゃく道場(以下こんにゃく道場)」です。主に知的障害のある利用者が通うB型の事業所になります。
この事業所の特徴は「移動販売」を行っていることです。通常事業所で作った製品は、事業所内か市役所などで販売していることが多いでしょう。ですがこんにゃく道場では、移動販売車を使って利用者が積極的に地域に出て、販売しています。
スーパーやショッピングモール、また山形市外でもイベントがあれば土日でも参加します。
支援員がサポートしつつ、利用者が呼び込みや販売を行っています。人気が高く、昼過ぎには完売することが多いです。
移動販売では「玉こん」を販売しています。玉こんとは、大きな丸いこんにゃくを団子状にさして食べる、山形名物の1つです。
また2017年からは、利用者たちが栽培から加工までを手がける香辛料「やまんば」シリーズの販売も始めました。道の駅で販売したところ売れ行きは好調で、利用者の工賃も上がったとのことです。
購入者からも「1から手作りなので、安全安心に使うことができる」というメリットがあります。
さらに山形市役所とコラボした「やまがた市役所食堂カレーセット」も販売しています。山形蔵王産の唐辛子をルーに練り込んだレトルトカレーになっています。山形市役所で販売したところ、30分程度で完売したとのことです。
現在はオンラインショップでも販売しているので、気になった方は是非ご覧ください。
参照:みちのく屋台こんにゃく道場

株式会社ソーシャルトライ


2つめは、寒河江市にある「株式会社ソーシャルトライ」です。こちらの会社では、就労継続支援A、B型の事業所(以下むすび)があるだけでなく、障害を持っている人が一般企業で働く際の支援を行う「就労移行支援」や、規則正しい日常生活を支援する「生活訓練」のサービスを提供しています。
就労継続支援A型事業所むすび(以下むすび)では、農業や清掃洗濯など、利用者に合わせた
作業を提供します。この施設のユニークだなと感じた部分は「高齢者施設で清掃や洗濯を行う」ということです。
私自身特別養護老人ホーム(以下特養)で勤務した経験があるのですが、特別養護学校を卒業した、軽度の知的障害がある男性(以下Aさん)が入社しました。Aさんは平日勤務で掃除や洗濯などを行ってもらっていましたが、とても助かりました。
というのも、入居者の洗濯や畳み物は大変です。通常の介護業務に加えて、数十人の洗濯物を一気に回し、名前を間違えないように確認しながら畳むのは時間がかかります。ですがAさんは洗濯前、ちり紙や薬の袋がないか1つ1つ確認し、洗濯が終わった後は丁寧に畳んでいました。また落ち着かない入居者と一緒に洗濯物を畳んでくれるので、他の入居者のケアに集中して行うことができました。
このように、他事業所のニーズと利用者の特性に合わせて作業を提供してくれるのが、株式会社ソーシャルトライの特徴になります。遠方の人でも無料で送迎してくれるというのもメリットです。
参照:株式会社ソーシャルトライ

ユニオンソーシャルシステム株式会社


3つめは「ユニオンソーシャルシステム株式会社」です。この会社は天童市や新庄市など、山形県内の複数の市や町に「ピース」という名前で事業所を展開しています。
この会社のユニークな取り組みは「硬式野球ボールをリサイクルし、製造と販売をしている」ことです。
硬式野球ボールを縫合する工程は機械化されていないので、1針1針縫って作ります。細かく正確な作業が求められるので、決められた通りに黙々と作業を行うのが得意な発達障害者などに、向いているでしょう。
またピースでは、廃棄されていた使用済みの野球ボールを回収し、使える部分を再利用し「再生球」として販売しています。通常の硬式球よりも安値で販売しているので、小さな野球部でも新しい珠を使えるようになるという、障害者だけなく、野球に関わる人達にもメリットがあるのです。
遠方に住んでいても、無料で送迎してくれます。ピースの場合、銀行やお店だった空き店舗を改装しているので、駐車場が広く車椅子でも昇降が楽に行うことができます。
参照:ソーシャルユニオンシステム株式会社

就労継続支援事業所LUNA


4つめは南陽市にある「就労継続支援LUNA」です。B型の事業所ですが、ユニークな取り組みとして「車の整備」を行っています。タイヤやオイル交換、洗車など車の整備に関する作業を行うことができるだけでなく、希望者には一般企業への就労支援も行っているのです。
LUNAの代表者である加藤さんは、20代で筋ジストロフィーを発症しました。30代で車いす生活になり「諦めなくてはいけないことの多さ」を感じ、挫折を味わったそうです。
それから様々なことに挑戦し、2015年に筋ジストロフィー患者で初となる、車いすでのパラグライダーに挑戦しました。
そこから様々な事業を展開するようになりました。就労継続支援LUNAを立ち上げたのも、障害の有無に関わらず誰もが地域で必要とされ「やりがい」や「喜び」を感じられるような場所を作りたいという思いからだそうです。
体験実習も随時受け付けているので、自分に合うかどうかゆっくりと考えることができますよ。
参照:就労継続支援事業所LUNA

こんなものも作っている!?就労支援事業所で作っている物

山形県の就労支援事業所で作っている物は、様々あります。その中でも特徴的なのが「啓翁桜」の販売です。
山形市にある「メディアかがやき」というB型事業所では、パソコンを使った作業の他に、ポスティングや農作業などの軽作業も提供しています。
その内の1つとして啓翁桜の発送作業があります。啓翁桜とは山形県産の桜で、正月にも満開の花を咲かせるのが特徴です。学校の合格祝いや就職のお祝いなど、冬のお祝い事に需要が高まる一方、生花なので梱包作業は1つ1つ手作業で行う必要があります。
メディアかがやきではオンラインショップなどを使い全国に販売することで、利用者の工賃上昇に繋げているとのことです。
参照:メディアかがやき

まとめ

就労支援事業所と聞くと「事業所内で単純な作業を行う」というイメージを持つ人も多いでしょう。ですが上記のように、地域のイベントへ積極的に参加したり、他事業所のニーズに合わせた作業を提供している事業所が増えてきています。
「長年引きこもっていたから、働くのが不安」という人は、是非利用してみてください。

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