発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)には、集中力が妨げられやすい・スケジュール管理が苦手などの傾向があります。在宅での勤務は自己管理が重要なため、テレワークに苦手意識をもっているADHDの人も多いのではないでしょうか。
しかし、ADHDの特徴や苦手を理解して工夫すれば、テレワークでも効率よく仕事を進められます。
この記事では、テレワークに集中できずに悩んでいるADHDの人が、集中して仕事に取り組むための対処法を紹介します。ADHDの特徴や苦手を理解して、集中して仕事に取り組める環境を整えましょう。
テレワークに影響しやすいADHDの特徴
ADHDの人が集中してテレワークに取り組むためにも、障害の特徴を理解しておきましょう。ここではテレワークに影響しやすいADHDの特徴を紹介していきます。
1.集中力が続かない
個人差はありますが、ADHDには集中力が続かない、もしくは過度に集中しすぎてしまうなどの集中力に悩む人が多い傾向があります。集中して業務に取り組んでいても、メッセージの通知などで集中力が途切れてしまったり、仕事中に別の業務が気になってしまったりなど、業務に支障をきたす場合があります。
2.忘れものが多い
忘れものをしたり、必要なものをなくしたりするのもADHDの人に多くみられる特徴です。テレワークでも目の前の仕事に追われてミーティングの時間を忘れたり、書類をどこかになくしたりして、トラブルにつながる場合があります。
3.スケジュール管理が苦手
スケジュール管理が苦手なのもADHDに多く見られる特徴です。ADHDの傾向がある人の多くは、仕事を順序立てるのが苦手です。そのため、期限内に仕事を終わらせられなかったり、約束の時間や頼まれた仕事自体を忘れてしまったりする恐れがあります。
ADHDがテレワークで陥りやすい悩み
周りに同僚がいる会社での勤務とは違い、テレワークで仕事をするからこそ陥る悩みがあります。会社でなら同僚に指摘してもらえるようなミスでも、自分で気づいて対応しなくてはいけません。
ここでは、ADHDの人がテレワークで陥りやすい悩みを紹介します。
1.集中できず仕事が進まない
ADHDの人がテレワークで陥りやすい悩みとして「集中できずに仕事が進まない」ことがあげられます。外部からの情報によって集中力が途切れやすいのが、ADHDの特徴です。生活空間である自宅にはテレビやマンガなどの誘惑が多くあります。また、同僚の目がないため、スマホを確認したついでにSNSを見てしまい、気づいたら1時間以上経過していたなどの事態にもつながりかねません。集中の妨げになるものを視界にいれないなどの工夫が必要です。
2.ミーティングの時間を忘れてしまう
ADHDの傾向がある人は、目の前の仕事に集中しすぎて、ミーティングなどの約束の時間を忘れてしまう場合があります。職場であれば同僚が指摘してくれますが、自宅で勤務するテレワークでは誰も指摘してくれません。上司や同僚が気づいてメッセージをくれたとしても、集中しすぎてメッセージに気づかない場合も考えられます。アラームを設定して予定を忘れないように対策しましょう。
3.集中しすぎて疲れる
職場であれば決められた休憩時間がありますが、テレワークでは自分で休憩をとる必要があります。しかし、ADHDの人は仕事に集中しすぎて、休憩を取り忘れてしまうことがあります。休憩を取るのを忘れると疲れすぎてしまうだけでなく、体調不良にもつながりかねません。集中しすぎないように休憩時間にアラームを設定しておくと安心です。
4.気持ちの切り替えが難しい
オン・オフの切り替えが難しくてなかなか仕事モードになれないのは、自宅で勤務するテレワークではよくある悩みです。しかし、集中するのが苦手なADHDの人は、特に作業に取り掛かるための切り替えに苦労する場合があります。集中して仕事にとりかかるために、仕事用の環境を整えましょう。
ADHDがテレワークで集中して働くための方法
ADHDの人がテレワークで集中して働くためには、苦手に合わせた対策が必要です。個人差があるため、必ずしもすべての人に有効とはかぎりませんが、参考にしてみてください。
1.誘惑を避ける
「集中力が続かない」「仕事以外のことに気を取られてしまう」などの集中力に関する悩みには、集中を妨げる誘惑になるものを排除するのがおすすめです。具体的にはスマホの電源を切る、デスクの周りにものを置かないなどの方法があります。連絡手段としてスマホが必要な場合は、勤務時間だけSNSなどのアプリを削除してしまいましょう。仕事に関係ないものを視界に入れないことで、集中力をあげる効果が期待できます。
2.仕事専用の空間をつくる
気持ちが切り替えられない悩みや、仕事中に気が散りやすい悩みには仕事専用の空間をつくるのがおすすめです。家の中に仕事専用スペースがあれば、気持ちが切り替えやすくなります。自宅にスペースがない場合は、パソコン周りを仕切りで囲むなどして視界を生活空間から切り離してみましょう。
3.仕事用の服装に着替える
自宅で勤務するテレワークですが、出勤するのと同様の準備をしてから仕事を始めるのがおすすめです。出勤する時と同じ行動をすることで、自宅で仕事をするテレワークでも「これから仕事を始めるのだ」とスイッチが入り、気持ちの切り替えをしやすくなる効果が期待できます。仕事用の服装に着替える、メイクをするなど、出社時と同じ習慣を実践してみましょう。
4.アラームを設定する
「予定を忘れてしまう」「集中しすぎる」などの対策には、アラームを設定する方法があります。会議の前や書類の提出期限、休憩時間などを設定しましょう。過集中でアラームに気づかないような場合は、スマホと連動して振動するスマートウォッチを活用するのもおすすめです。
5.コワーキングスペースを活用する
どうしても自宅では集中できない場合は、コワーキングスペースを活用してみましょう。適度に人がいるコワーキングスペースなら、自宅よりも気持ちの切り替えがしやすく、過集中を避ける効果も期待できます。ADHDの人は仕事で使う書類などを忘れやすい傾向があります。コワーキングスペースに出かける前に、忘れものがないか確認してから家を出ましょう。また、退出する際にも書類や私物の置き忘れがないか注意が必要です。
苦手を理解して働きやすい環境をつくろう
ADHDには集中力が途切れやすい不注意や、過度に集中しすぎる過集中などの特徴があり、テレワークに苦手意識をもつ人が多くいます。テレワークで快適に仕事をするためにも、なにが問題なのかを理解して対策を考えましょう。苦手に合わせた対策を考えて工夫を続ければ、障害があってもテレワークは可能です。また、テレワークに慣れるまで、人に協力してもらうのも効果的です。例えば、家族や同居人にミーティングの時間や休憩時間に声をかけてもらえば、約束の時間や休憩時間を忘れる心配を減らせます。一人暮らしの場合も、同僚や上司にお願いすることで、協力を得られるかもしれません。ミーティング前に連絡をもらう、一緒に資料を確認するように頼むなど、周囲の協力を得られないか確認してみましょう。
自分でできる対策や周囲の人に協力してもらうなどして、集中して働ける環境をつくってテレワークに取り組んでみてください。
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