職場トラブルを回避する発達障害者とのコミュニケーションの取り方

職場トラブルを回避する発達障害者とのコミュニケーションの取り方


発達障害がある人を雇っている場合、コミュニケーションがうまくいかずに業務に支障が出てしまうケースがあります。

思ったような反応が返ってこない、会話がすれ違うなど、発達障害がある人とどうコミュニケーションを取ったらいいか悩む人も少なくはありません。

この記事では、発達障害がある人とのコミュニケーションの取り方についてお伝えします。

発達障害の特性について理解すれば、コミュニケーションの改善点が見えてきます。

この記事を参考にして、発達障害がある人とうまくコミュニケーションを取り、今の状況を改善しましょう。

コミュニケーションに難がある発達障害

発達障害には、主に以下の3種類があります。

・ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム障害)
・ADHD(Attention-deficit hyperactivity disorder:注意欠如・多動性障害)
・SLD(Specific Learning Disorder:限局性学習障害)

ASDはコミュニケーションや対人関係を苦手としており、人の言葉を理解することや自分の思いを伝えることが得意ではありません。

そのため、指示したことがうまく伝わっていなかったり、複数人で協力する仕事がうまくできなかったりします。

ADHDの場合、職場の集まりに積極的に参加する人も多く、表面上はコミュニケーションに問題がないように見えるでしょう。

ただし、感情のコントロールが苦手でカッとなりやすい一面があります。

SLDは読み書きや計算を苦手とします。中には聞くことや話すことを苦手とするケースもあり、伝達事項を理解できていない可能性もあるでしょう。

複数の症状が重なることもあり、発達障害の特性は人によって異なります。

すなわち、発達障害のある人すべてがコミュニケーションに難があるわけではありません。

コミュニケーションをうまくとるためには、発達障害という点ではなく、その人個人がどういった人なのか、どういった障害特性があるのかを知ることが重要です。

職場トラブルに発展するケース

それでは、具体的に発達障害の特性が原因でトラブルに発展した事例を見てみましょう。

トラブルといった結果だけに目がいってしまいがちですが、何故そうなったのかを考えると今後のヒントになります。

case1.業務に対する指示が理解できていない

発達障害のある人に業務指示を出したところ、その指示が理解できずに仕事が手付かずだったことはないでしょうか。

コミュニケーションに支障が出る発達障害の場合、業務指示を理解できていない可能性があります。

SLDの場合、そもそも業務マニュアルや口頭での説明が伝わっていないこともあるでしょう。

じっとして集中することが苦手なADHDの場合は、説明に集中できず、肝心なことを聞き逃していた可能性もあります。

日常的に使いがちな「できるだけ早く」「問題があったら調整して」といった指示は注意が必要です。

内容が曖昧で判断に困るため、ASDの場合は求められていることが読み取れません。

case2.関係性が理解できていない

先ほどお伝えしたように、ASDはコミュニケーションや対人関係が苦手です。

中でも、関係性を理解することが難しく、人によって対応を変えることに困難が生じます。

例えば、上司に対して、同僚に接するのと同じように話し掛けてしまうケースがあります。

上司に対して敬語を使わずに話したくらいであれば、軽く注意すればよいでしょう。

しかし、取引先相手に同じことをする可能性も無視できません。

発達障害者とのコミュニケーションの取り方

続いて、具体的にどのようにコミュニケーションを取ったらよいのかをお伝えします。

どれも難しいことではなく、意識すればすぐに実行できますので、ぜひ社内で実施してみてください。

具体的な指示を心掛ける

まず、発達障害がある人に指示をするときは、具体的な言葉を使いましょう。

曖昧な表現だと、意味をくみ取ってもらえず、仕事が手付かずのままになりかねません。

例えば、「できるだけ早く」「迅速に」「急ぎ」といった優先順位の分からない曖昧な指示は避けましょう。

できるだけ急ぎで仕事をしてほしい場合は、「今やっている仕事は明日に回して、今からこの仕事をやって、〇時までに終わらせてください」まで具体的に伝えてください。

人の言葉を理解することが苦手なASDの場合、どういう意味なのかを考える余地がないくらい具体的に指示した方が負担になりません。

いくつかのパターンで説明する

説明の方法を一種類に限定しないことも、発達障害がある人とのコミュニケーションには有効です。

口頭だけでなく、紙の資料を添える、メールを送るなど、複数のパターンで指示を確認してもらえるようにしましょう。

全体に対する指示なら、目に入りやすいように張り紙として大きく掲示するのも一つの方法です。

また、読み書きを苦手とするSLDの場合、文字だけのマニュアルだとうまく認識できない可能性があります。

文字だけのコミュニケーションにならないように、必ず口頭でも説明しましょう。

そして、マニュアル自体も、文字だけで説明するのではなく、イラストや図を添えて視覚的に分かりやすくなるように工夫できるとよいですね。

コミュニケーションに集中できるようにする

朝礼の場で全体に対して指示を出す場合、発達障害がある人については後から個別でフォローした方がよいでしょう。

一対多だと誰に対する指示なのか混乱する可能性があるため、なるべく一対一でのコミュニケーションを心掛け、話し掛けるときに名前を呼ぶのも有効です。

また、ADHDは、気が散りやすく、集中するのが苦手です。デスクにパーティションを設置し、周辺が視界に入って気が散るのを防ぐと仕事がしやすくなるでしょう。

発達障害者の特性を意識したコミュニケーションを

発達障害は症状によってさまざまな特性があります。その特性をフォローする形でのコミュニケーションを心掛けましょう。

発達障害がある人とのコミュニケーションの取り方として紹介したやり方は、どれも難しいことではありません。

そして、コミュニケーションの取り方が改善されると、発達障害がある人に限らず、多くの社員が働きやすくなるでしょう。

発達障害かどうかにかかわらず、多くの人は曖昧な指示や分かりにくいマニュアルには手間取ります。

社内全体で分かりやすいコミュニケーションを心掛けることで、業務効率が大幅にアップする可能性もあるでしょう。

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