学習障害(SLD)でもできる仕事は?向き不向き・業務の切り出し方など

学習障害(SLD)でもできる仕事は?向き不向き・業務の切り出し方など


障害者雇用で障害がある人を雇ったものの、どういった仕事を担当してもらえばよいのか迷うケースは少なくありません。本人が納得できる仕事を任せたいと思ってはいても、どの程度までの仕事が担当できるかの判断は難しいでしょう。

この記事では、学習障害がある人に向いている仕事や業務の切り出し方について解説します。学習障害がどのような障害かを理解して、障害特性に配慮しながら適した業務を切り出しましょう。

学習障害の特徴や必要な配慮

学習障害は発達障害のひとつです。言葉のイメージから学ぶことが苦手だという印象を受けるかもしれませんが、学習障害は基本的に知的な遅れはなく、業務に対する理解力などに問題はないでしょう。

まずは、学習障害の特徴と必要な配慮について説明します。

学習障害の特徴

学習障害(SLD)は、「読み書き」「計算」「聞く」「話す」のいずれか、もしくはその複数が苦手です。苦手とする特定分野以外では知的能力に問題はありません。学習障害は、主に以下の3つに分類されます。

読字障害(ディスレクシア) 読みの困難
書字表出障害(ディスグラフィア) 書きの困難
算数障害(ディスカリキュリア) 算数、推論の困難

困難があるといっても、国語が苦手、算数・数学が苦手といった学習上の問題ではありません。学習障害の場合、文字や数字の認知に大きな問題があります。

たとえば、識字障害の場合、「ぬ・め」「ろ・る」などの形が似ている文字の区別が困難です。症状の出方は人によって異なっており、文字が逆さまに見えたり文字として認識できなかったりといったケースもあります。

算数障害では、数字そのものに対する認識に困難があります。具体的には、2つの数字のどちらが大きいか分からなかったり、桁の繰り上がりが理解できなかったりといったことです。時計が読めないといったケースもあります。

学習障害に必要な配慮

学習障害は苦手な部分が具体的ですので、必要な配慮も比較的分かりやすいでしょう。学習障害に対する配慮としては、大きくは以下の2点を心掛けます。

・苦手な部分をフォローできる業務説明
・苦手を補うツールの利用を許可

多くの場合、業務に関する説明はマニュアル配布や口頭説明で行うでしょう。しかし、読むことに困難がある学習障害は、マニュアルを読み込んで理解するのに時間がかかってしまいます。

そういった問題も、イラストや写真、図解で視覚的に分かりやすいマニュアルにすれば解決できます。字体を変えたり文字のサイズを大きくしたりするといった工夫も有効です。文字の認識に困難があっても理解できるマニュアル作成を心掛けましょう。

そして、マニュアルを配布するだけでなく口頭説明も行うなど、必ず2パターン以上の説明を行うことも重要です。複数の説明を実施すれば、読むことだけでなく、聞くことに困難がある場合も対応できます。2パターン以上の説明を社内で徹底すれば、障害の有無にかかわらず、誰でも業務を理解しやすくなります。

また、苦手部分を補うために、ノートパソコンやタブレット、ICレコーダー、電卓といったツールを、必要に応じてどこでも使えるようにしましょう。計算ができなくても電卓があれば問題ありません。本人が負い目を感じずに補助ツールを使えるような環境づくりも大切です。

学習障害でもできる仕事

学習障害以外の発達障害は、障害の特性上、苦手とする業務があります。自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションが苦手なため、人と密に関わる仕事は難しいでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)は注意力に問題があるためミスが許されない業務を任せるのは不安です。

それに対して学習障害は、苦手分野以外は特に問題がないため幅広い仕事を任せられます。何ができるというより、苦手分野に関わらなければ何でもできるため、学習障害に向いている仕事は本人の特性やスキルによって異なります。本人がやりたいと思う仕事の中で、苦手分野を避けて業務を考えましょう。

ただし、学習障害の場合、電話対応はあまり向いていません。聞いた内容をその場でメモするためには、聞く能力と書く能力が必要です。電話の場合は即時対応が求められるため、読む、聞く、話すのどれかに難があると対応は難しいでしょう。

読み書きや計算、聞くこと、話すことにまったく関わらない業務を見つけるのは難しいかもしれません。その場合、どの程度の困難があるかは人によって異なるため、まずはヒアリングして苦手とする度合いを聞き出します。

時間がかかっても対応できるのであれば、本人の負担にならない範囲で任せてもよいでしょう。ただし、電話対応のようにその場での対応が求められる業務を避け、本人が余裕を持って対応できるよう配慮してください。

障害者雇用した人への業務の切り出し方

一般雇用の場合、求人募集をかける時点では、すでに任せたい仕事が存在しているでしょう。しかし、障害者雇用だと既存の業務をそのまま任せるのが難しいため、今ある業務から、障害がある人に向けた仕事を切り出す必要があります。業務を切り出すポイントは、主に以下の2つです。

・急ぎの業務ではないこと
・業務量が安定していること

障害者雇用の場合、苦手分野に関わる業務には時間制限を設けないことが大切です。その場で判断しなければならない業務を避け、焦らずに仕事ができる環境をつくりましょう。

障害者雇用では、担当業務がないことをきっかけに社内ニート化したり、仕事にやりがいを感じられず退職につながったりするケースがあります。そういった事態を避けるためには、スポット的な仕事ではなく、安定して業務がある状態をつくることが大切です。

学習障害に限っていえば、できる仕事の幅は広いため担当業務も切り出しやすいでしょう。読み書きを苦手とする学習障害なら、頻繁にマニュアル変更が行われない業務が向いています。障害特性による苦手を避け、本人がやりがいを持ってできる業務を探しましょう。

学習障害でもできる仕事は多い

学習障害は、障害の中でも苦手とする部分が限定的です。そのため、ほかの障害に比べると、学習障害がある人に向けた業務は作り出しやすいでしょう。

学習障害がある人に向けた業務を切り出すときは、障害があるからこの業務という考え方ではなく、本人のスキルや希望で業務を決めることをおすすめします。そこから、苦手分野の対応をなくしたりフォローしたりといった体制を考えましょう。

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