軽度知的障害児の高校進学はどうする?進学先や学校選びのコツを解説

軽度知的障害児の高校進学はどうする?進学先や学校選びのコツを解説

「高等特別支援学校と特別支援学校の違いは何?」
「チャレンジスクールってどんなところなんだろう?」
進学する高校について調べていると、さまざまな情報が出てきてどうしたらいいかわからなくなってしまうかもしれません。
進路先を選ぶときには、それぞれの高校の特徴をつかみ、子どもの特性にあった高校を選ぶことが重要です。
この記事では、軽度知的障害児の進路先やその特徴とメリット、進学先を選ぶときのポイントについて解説しています。

軽度知的障害とは?

軽度知的障害は、知的障害の中でも最も軽い段階です。しかし、実年齢よりも知的発達に遅れがあり、知能指数(IQ)が50~70未満の範囲にあります。
日常生活に必要な会話や動作はできるものの、抽象的な内容の理解や複数の人が関わるコミュニケーションが苦手な場合もよく見られます。
障害があることが見えにくく周囲に気づかれにくいですが、学習の遅れやコミュニケーションの困難さ、自己管理能力の低さなどの課題を抱えているケースも多いです。

境界知能との違いは?

境界知能とは、IQが70〜84くらいの間にある方々を指して使われる言葉です。
境界知能の方は、平均的な知能(IQ85〜115)と知的障害(IQ70以下)と診断される知能の境目に属しています。
境界知能の子どもは、日常生活での困り感が見えにくく本人でさえも気づいていない場合も多いです。そのため適切なサポートが受けられず、不登校やうつなどの二次障害を引き起こしてしまう場合もあります。

軽度知的障害児のおもな進学先は?

中学校を卒業した後の進学先にはさまざまな選択肢があります。ここでは、おもな進学先とその特徴やメリットについて解説します。
まずは、それぞれの高校の特徴をつかんでいきましょう。

特別支援学校高等部

特別支援学校高等部は、知的障害のある生徒に対し、障害の程度に応じた教育を行います。

■特徴・メリット
学ぶ教科は、国語や算数、家庭科などの他にも、自立活動といった障害に基づく生活上の困難を克服するための授業も組み込まれています。また、就労に必要な知識やスキルを身につけるための授業や実際に企業や福祉施設に現場実習に行くこともあります。
特別支援学校では、個別の教育支援計画が作成されます。一人ひとりの障害の程度や特性に合わせたきめ細やかな指導が受けられるのがメリットといえるでしょう。

高等特別支援学校

高等特別支援学校では、軽度の障害をもつ子どもを対象に、一般的な就労を目指した職業教育を行います。

■特徴・メリット
特別支援学校の高等部は、小・中学部と同じ敷地内にある場合が多いですが、高等特別支援学校は、単独で設置されています。
学校によっては、専門学科があったり、インターンシップなどの職業実習が充実していたりするなど、社会的・職業的な自立を重視しています。
就職に向けて必要な知識やスキルを身につけたいと考えている方には向いているといえるでしょう。

通信制高校

通信制高校は、毎日学校に通う必要がなく、郵送やWebを活用して学習を進めていく高校です。

■特徴・メリット
通信制高校の中には、知的障害や発達障害のある子どもへの理解がありサポートに力を入れている学校もあります。
サポート内容は学校により異なりますが、知的障害のある子どもへ適切なサポートをしてくれる学校を選べば、通信制高校への進学も可能でしょう。
通信制高校を卒業するには、以下の条件を満たす必要があります。

①3年間在籍する
通信制高校を卒業するには3年以上在籍する必要があります。多くの通信制高校は単位制で一年間に修得できる単位には上限があります。1年生、2年生で多くの単位を修得しても3年以上在籍しないと卒業は認められません。
②74単位を習得する
卒業には、必修科目を含む74単位以上を修得しなければなりません。通信制高校で単位を修得するには、レポートの提出やスクーリングへの参加、テストを受けて合格する必要があります。
③30単位以上の特別活動への参加
通信制高校でも特別活動への参加が必要です。特別活動とは、ホームルームや体育祭、清掃活動などの学校行事の事です。これらの特別活動はスクーリングがある日に合わせて実施される場合が多いです。
上記の卒業要件を満たすためにも、子どもの特性に合ったサポートが受けられる通信制高校を選ぶ必要があると言えるでしょう。
【参考】
高等学校の卒業に関する法令|文部科学省
通信制高校に関する関係法令等(抜粋)|文部科学省

チャレンジスクール・クリエイティブスクール

新しいタイプの高校としてチャレンジスクールやクリエイティブスクールがあります。

■特徴・メリット
チャレンジスクールは、おもに小中学校で不登校だった生徒や高校を中退した生徒を受け入れている都立高校です。4年間かけて学ぶことを基本としていますが3年での卒業も可能です。
少人数での科目授業や社会的なルールやマナーについての授業もあるなど、きめ細やかな指導を受けながら自分の適性に応じた環境で学習できるでしょう。
東京都が行っているチャレンジスクールと同じような取り組みをしている自治体もあります。
神奈川県が行っているクリエイティブスクールもその1つです。
このような新しいタイプの学校では、内申点や学力試験が必要なく、学校や学校生活に対する意欲を重視した入試が行われています。
現在は数が少ないですが、今後このような新しいタイプの高校は増えてくるかもしれません。

【参考】
多様なタイプの学校の紹介|東京都

その他の選択肢は?

その他の選択肢としては以下のような高校があります。

全日制高校・定時制高校

全日制高校は、朝から夕方にかけて一日授業が行われるいわゆる一般的な高校です。入学には内申点が必要であるため担任の先生などに相談する必要があるでしょう。
また、公立・私立ともにさまざまな学力レベル・校風の学校があります。高校を選ぶ際には、特徴についてよく把握してから選ぶのがおすすめです。
通級指導教室がある公立高校もありますが数は少ないです。全日制高校では、大勢の生徒を指導しなければならないため、障害に対する配慮はあまり受けられない傾向にあります。
定時制高校は、昼間または夕方などの時間帯に授業を受けます。1日4時間程度と短い学習時間であるため、卒業までに4年かかる場合もあります。
定時制高校は、不登校だった子どもや高校中退した子どもなど多様な生徒が多いです。障害に対しても配慮してくれる定時制高校も増えてきているので、気になる高校に問い合わせてみるのもよいかもしれません。
【参考】
都道府県からの報告 *「生徒の多様な学習ニーズに応える特色ある取組」に関する調査を踏まえた私見 |文部科学省

高等専修学校

高等専修学校は、実践的な職業教育を受けられる学校です。工業・農業・医療・社会福祉・服飾など幅広い専門教育が受けられます。
職業につくために必要な知識や技能が得られますが、資格やスキルを身につけるためにはしっかり学ぶ必要があるでしょう。
学校によっては、不登校だった生徒や知的障害や発達障害を抱えている生徒を受け入れてサポートしてくれる学校もあります。

高校進学先を選ぶときにおさえたいポイント

中学校卒業後の進路を選択する際には、子どもの特性に合った進学先を選ぶことが重要です。
そのためには、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • 子どもの特性について整理しよく理解します。
  • 子どもの得意なこと・苦手なことを紙に書きだすなどして整理しましょう。

そのうえで、それぞれの進路先の特徴をつかんでいきます。インターネットやパンフレットだけでなく、時には学校見学や体験をしてみるのもよいでしょう。
また、子供の意思を尊重することも必要です。どの進路が自分に合っているか子供と話し合う時間を設けてみるとよいかもしれません。
どうしても進路に迷ってしまう場合には、学校や支援機関に相談してみる方法もあります。
担任の先生から学校での様子を聞いたり、支援機関に相談して専門家からアドバイスをもらったりするとまた違った一面が見えてくるかもしれません。
進学先に迷った時には一人で抱えこまずに相談してみるとよいでしょう。

子どもに合った進路先を見つけよう

軽度知的障害児の進路を選ぶときには、子どもの特性に合った学校を選ぶことが重要です。
それぞれの高校によって特色があるため、まずは、子どもの得意なことや苦手なことを整理してその特性をつかみます。子どもと進路について話し合う時間を設けたり、必要に応じて学校や支援機関に相談すると新たな一面が見つかるかもしれません。
子どもの特性をつかんだ上で、学校の情報を収集するなどの準備を進めていくと、その子どもに合った進学先が見つかるでしょう。

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