発達障害は病院の何科にかかればいい?精神科、心療内科、神経内科の違い

発達障害は病院の何科にかかればいい?精神科、心療内科、神経内科の違い


もし、「発達障害の治療のために受診すべき診療科目は?」と聞かれたら、何と答えるでしょうか。

「精神科」と答える方が多いかもしれませんが、精神科と似たような名称の診療科目に「心療内科」や「神経内科」というものもあります。

心療内科は「心」という文字が入っていますし、神経内科の「神経」も精神と同じ意味でつかわれることがありますので、精神障害と何か関連がありそうな診療科目に思えます。

この「精神科」「心療内科」「神経内科」という3つの診療科目ですが、実はきちんとした違いがあります。

特に発達障害や精神障害の方は受診科目を間違えると、いくつもの病院で受診しなければいけなくなりますので、是非覚えておきたいところです。

今回は、「精神科」「心療内科」「神経内科」の違いと発達障害の方に適した診療科目について解説いたします。

「精神科」「心療内科」「神経内科」の違い

最初に精神科、心療内科、神経内科の違いを理解するために、発達障害の定義や症状を簡単に解説します。

発達障害とは…
「人の表情や行動から感情を読み取る能力が著しく低い(ASD)」「落ち着きがなく思い付きで行動する(ADHD)」「読み書きや計算などの能力が著しく低い(SLD)」など、社会生活において大事な脳の各機能の成長が生まれつき偏っている障害

この「生まれつき」というのが重要で、外部からの強いストレスや劣悪な生活環境などの影響による精神的な障害を指すのではなく、あくまで健常者と比べて先天的な能力差があるのが発達障害です。

つまり、発達障害者がうつ病やストレス性疾患などを診察してくれる病院へ行ったところで、専門外ということがあり得るのです。

そもそも「外科」と「内科」の違いすらよく分からない人も多いかもしれません。大まかには薬や点滴で治す場合は「内科」、手術やその可能性がある場合は「外科」になり、ケガや病気が同じでも治療方針により受診科が違います。

これと同じように、発達障害を始めとした精神障害も病の種類や症状へのアプローチ方法の違いにより受診科目は分かれます。一般的には以下のようになります。

精神科
心が原因で起きている精神的な症状(例:うつ、統合失調症、不安障害など)を中心に診療する
心療内科/心療科
ストレスなど心理的要因よる身体的症状(例:心身症、胃潰瘍、ぜんそく、過呼吸など)を中心に診療する
神経内科/神経科
脳や脊髄、筋肉など神経の異常に起因する身体的症状(例:脳梗塞、脳溢血、パーキンソン病、高次脳機能障害など)を中心に診療する

診療科目について正確な定義はなく、近年では「メンタルクリニック」や「こころのクリニック」などと掲げて精神科と心療内科の両方を診療していたり、心療内科や神経内科でも精神科が専門の心の病を診療するケースも多くなっていますので、上記はあくまで本来の一般的な解釈としてお考えいただければと思います。

発達障害や精神障害における診療の場合、神経内科は違うというのがお分かりいただけるかと思いますが、区別しづらいのが精神科と心療内科です。

心療内科は心の病がきっかけで起こる身体的な症状が専門ですが、うつ病や不安障害などについてももちろん相談することは可能です。

精神科もまた、心の病に起因する身体的症状があってももちろん受診は可能です。

ただ、心の病は複雑さを極める疾患ですので、同じうつ病でも症状の度合いや状況によって受診すべき診療科目は実際には相談して初めて分かるケースが多いようです。

何故こんなにややこしい?診療科目の表示ルール

一般的に迷いやすいと言われる内科と外科ですら素人では判断しづらい事を考えると、受診科目がハッキリしない発達障害ではなおさら選ぶのが難しいのではないでしょうか。

そこで、まず診療科目の表示ルールという基礎知識を学ぶことで少しは理解しやすくなるかも知れません。

病院の看板やホームページに記載される診療科目は、実は法律によるルールに則ったものだというのをご存知でしょうか。

「医療法施行令」では、歯科医以外の医業で表示してよい診療科目を以下のように定めています。

  • 内科
  • 外科
  • 内科、外科に以下を組み合わせた名称
    頭頸けい部、胸部、腹部、呼吸器、消化器、気管食道、肛こう門、血管、心臓血管、腎じん臓、脳神経、神経、血液など
  • 上記以外で、以下名称または上記と以下を組み合わせた名称
    精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科など

上記の診療科目やその組み合わせを「標榜可能な診療科目」と言います。

簡単にまとめると、「内科」と「外科」という単独の名称をベースとして、「呼吸器」「消化器」「神経」といった他の名称を組み合わせて使う必要があるということです。例えば、「呼吸器科」はNGだが、「呼吸器内科」ならOKといった具合です。

それでは、今回のテーマである「精神」「心療」「神経」という名称についてはどうでしょうか。

単独表示できるのは「精神科」の一つのみで、他は「内科」「外科」と組み合わせて使用しなければいけません。よって、以下のような組み合わせによる診療科目が存在することになります。

  • 心療内科
  • 精神内科
  • 精神神経科
  • 神経内科
  • など…

また、不合理とされる組み合わせも認められていません。例えば、「心療内科」はOKだが、「心療外科」は「心の病を手術で治す」という不合理が発生するため、表示できないということです。

では、上記までの基礎知識をもって、次の章で発達障害者に適切な受診科目が何かを解説します。

発達障害の人に適切な受診科目

発達障害について神経内科は違うというのはお分かりいただけたかと思いますが、精神科と心療内科のどちらを受診すべきという明確な区別がない上に、さらに「精神内科」「精神神経科」といった名称があったり、更には法律上認められていないはずの「心療科」「神経科」と表示する病院もあります。

これほどややこしくなっているのは、前章で解説した「標榜可能な診療科目」に明確な定めがなかった頃の名残があるためです。

先ほどご紹介した医療法では、「経過措置」以前から使用していた診療科目は変えなくてよいという決まりがあるため、今は認められていない「神経科」という診療科目を掲げる病院が存在するのです。

もはや区別するのが難しいと思われるかもしれませんが、一般的には以下のように区別されています。

精神科
心の病を診療する
精神内科 / 精神神経科
精神科と同じとされる
神経科
今は認められていないが精神科と同じとされる
心療内科
心の病が原因で起こる身体的疾患を診療する

上記を踏まえて、発達障害の人が受診すべき科はどれかというと、結論は「全てOK」となります。

結局は曖昧な答えに感じるかもしれませんが、そもそも医師により診療できる範囲は異なり、A病院の心療内科では軽度のうつ病までしか診療していないが、B病院の心療内科では発達障害までしっかり診てくれたりといったケースがあるのです。

まだ発達障害の専門的な診療を行っている病院はあまり多くなく、それが発達障害の受診科目が明確に定まっていない原因とも言われています。

もし発達障害の疑いがあるなら、まずは上記の診療科目を掲げる病院に受診可能かどうか電話などで確認してみることが、適切な医療機関を探す方法となります。

一部の病院で見られる「発達障害外来」

ここまで主に受診科目について解説しましたが、診療科目とは別に「〇〇外来」などと掲げる病院もあります。

実際、「思春期精神外来」や、よく知られたところで「禁煙外来」とった診療科目らしきものも見受けられます。

実はこの「外来」という言葉に関してはルールが定められておらず、医療機関の競争激化によって「より専門性を打ち出して差別化を図る」ことが目的となっているため、ここ最近で「○○外来」という言葉を多く耳にするようになったのです。

ただでさえ分かりづらい診療科目の多さに加えて、ルールのない外来まで…と思われるかもしれませんが、実はこの外来、発達障害に関しては光明となっている節もあります。

それは「発達障害外来」を掲げる病院が出てきたという事です。

例えば、「大人の発達障害外来」や「成人の発達障害外来」として専門的に診療する医療機関もあり、これまで診療してもらえる病院が少ないと言われていた中で、心強いと言えるのではないでしょうか。

発達障害外来では、主に以下のような診療とプログラムを実施しています。

  • 知的障害の有無の診断
  • 薬物治療
  • リワークプログラム
  • ソーシャルスキルトレーニング
  • その他就労支援プロブラム
  • など…

もし「会社でトラブルを起こしがち」や「他の人と比べて特定の仕事だけができない」といった発達障害が疑われる症状がある場合、まずは発達障害外来を受診してみると良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、発達障害について診療してもらえる診療科目について解説しましたが、発達障害の方で気を付けなければいけないのは、障害を理由に別の心の病を抱えてしまう二次障害です。

周囲に理解してもらえないとか、何をやっても上手くいかず他人に迷惑ばかりかけてしまうといった事に悩み、うつ病や不安障害などを抱えてしまうケースです。

もちろん、今回ご紹介した精神科や心療内科では、そういった二次障害についても相談ができます。

何よりも精神障害は全般的に自覚がないまま「気づいたら症状が出ていた」というケースも多いため、発達障害の方で仕事や日常生活において困難が多い方は、二次障害を防ぐためにも早めの医師の診断をおすすめします。

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