発達障害の話題となると、アスペルガーやADHDといった言葉が多くみられますが、実は発達障害にも様々な種類の症状が多くあります。最近は子どもだけでなく、大人に当てはまる発達障害も話題として取り上げられることが多くなりました。
名前だけ知っている障害もあれば、症状だけ何となく知っていて正式な疾患名は知らないという障害もあるでしょう。そこで辞書代わりにご覧いただけるよう、このページでは発達障害と分類される疾患名を11種類まとめました。
①自閉症
自閉症は、先天的な障害であるため、親の教育や養育環境が悪いなどが原因ではありません。なお、現在では自閉症を単体の障害には分類しておらず、自閉症スペクトラム障害(ASD)として分類されています。自閉症の場合、以下4つの症状が見られます。
- 人との関わり合いに興味を示さない
- 相手の感情を察せられない
- 言葉の発達に遅れがあるためコミュニケーション能力が低い
- 常に同じ場所や行動に強いこだわりを持つ
②アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は、対人関係が難しく同じ行動を繰り返したり、特定の場所にこだわったりする、自閉症とよく似た特徴のある発達障害です。自閉症は言葉の遅れによるコミュニケーション能力に難がありますが、アスペルガー症候群に言葉の遅れはありません。近年よく聞く「大人の発達障害」が述べられる際は、冗談が通じない、暗黙のルールが理解できないなど、生きづらさが例として挙げられます。これは主に自閉症と共通する特徴ですが、言葉の遅れがないため発達障害のアスペルガー症候群として区別されます。
③小児期崩壊性障害(CDD)
小児期崩壊性障害(childhood disintegrative disorder:CDD)は、成長していく上で学んだ言語や対人関係、運動、排便などの能力が低くなっていく障害です。3歳ごろの低年齢期から症状が現れ、徐々に人と関わりを持たなくなり、繰り返し同じ行動をするなど自閉症の症状を示します。
④レット症候群
レット症候群は、自閉症の症状を始めとして、運動能力や言葉の遅れ、手もみを繰り返すなどの症状が見られる発達障害です。生後7カ月頃から現れる障害で、ほとんど女児にのみ起こります。また本人の意思とは無関係に体が動く不随意運動、てんかん発作、呼吸異常などの症状が現れることもあります。
⑤広汎性発達障害(PDD)
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)とは、「自閉症」「アスペルガー症候群」「小児期崩壊性障害」「レット症候群」「特定不能の広汎発達障害」の各症状をまとめた疾病の概念です。世界保健機関が定めた疾病の国際分類ICD-10に定義される障害の分類で、アメリカ精神医学会が作成したDCM-5では自閉症スペクトラムに分類されています。自閉症スペクトラムとほぼ同じ内容ですが、DSM-5の自閉症スペクトラムという分類の中にレット症候群は含まれていません。なお、特定不能の広汎性発達障害とは、自閉症などの症状は見られるものの広汎性発達障害の基準を満たさなかったり、一部のの症状が見られる障害を指します。
⑥注意欠陥・多動性障害(ADHD)
注意欠陥・多動性障害(Attention-deficit hyperactivity disorder:ADHD)は、「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」「混合型」の3種があります。昨今、大人になってからADHDと判明するケースも多くなりました。大人の発達障害としてのADHDは、主に「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「衝動的に発言する」などが報告されます。また、社会的に認められない生きづらさから、うつ病などの二次障害に陥るケースも少なくありません。ADHDには以下5つの特徴や症状が見られます。
- 注意力や集中力がなく、突然行動を起こすなど多動性の症状が顕著にみられる
- 7歳未満の子どもの頃から症状がみられる
- 家庭と学校など2つ以上の状況において困難が生じている
- 対人関係や学業、仕事などにおいて著しく困難が生じている
- 上記の症状が他の障害によるものではないこと
⑦限局性学習障害(SLD)
限局性学習障害(Specific Learning Disorder:SLD)とは、「読み書き」「計算」「推論」といった特定の分野における発達に遅れがある障害です。以前までは学習障害(LD)という分類名でしたが、現在は診断基準が変わって限局性学習障害(SLD)で分類されるようになっています。なお、学習障害自体は脳の発達バランスによる先天的な障害であり、精神遅滞である知的障害とは異なります。アメリカ精神医学会のDSM-5によれば、限局性学習障害(SLD)は以下のように定義されています。
- A. 学習に困難があり、人の助けがあっても以下の症状が1つ以上、6か月間持続している
・単語の発音や音読が遅く困難である
・読み物の意味することや深い意味まで理解できない
・母音や子音の間違いや句読点の間違いがあり使用が困難である
・数字の概念を理解できない
・数学的な推論が困難である - B. 年齢から考えられる学習能力が標準的な水準から乖離しており、生活に支障をきたしている
- C. 学習障害は学齢期に始まり、試験や締め切りなど必要なスキルの限界に達するまで明らかにならない
- D. 知的障害など他の障害による症状ではない
⑧発達性運動協調障害(DCD)
発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)とは、両手足を同時に動かすような協調運動がぎこちなかったり、全身運動や手先の微細な動きに不器用さがみられる障害です。幼少期には着替えや食事が遅かったり、靴の左右を間違えたりするなどの症状が見られます。また運動全般にも不器用さが現れるため、縄跳びやボール投げ、自転車に乗るなどの場面において困難を示します。
⑨トゥレット症候群
トゥレット症候群とは、まばたきや顔をしかめる、意味のない発音を定期的に繰り返すなどのチック症状が繰り返し続く疾患です。4~11歳の子どもの頃に発症するケースが多く、また大人になるまでに症状が消えるか軽くなるとされています。なおトゥレット症候群は、チックの症状が1年以上続くのが一つの診断基準とされています。
⑩サヴァン症候群
サヴァン症候群とは、発達障害や精神障害、知的障害のある人が、特定の分野で非常に優れた能力を発揮する症状です。天才的な数学能力や音楽や絵画などにおける能力、けた外れの記憶力など、世界中でサヴァン症候群の事例は数多くあります。ただサヴァン症候群は未解明の部分も多く、正確な診断基準などは定められていません。
⑪吃音症
吃音症(きつおんしょう)とは、言葉を流暢に話すことが難しく、1つの音を連発したりどもったり、言葉を伸ばして使ったりしてしまう症状です。発達障害、身体障害、精神障害で区別するのは難しく、現在のところ日本では発達障害に含まれるとされています。吃音症の発達障害がある有名人として、山下清画伯をモデルとした裸の大将という吃音症の特徴が描写されているドラマが有名です。実際のところ山下清に吃音があったかどうかは不明とされていますが、吃音症の症状を理解するのに分かりやすい例と言えるでしょう。
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