障害者手帳について調べると、どの手帳もそれぞれ多くの違いがあり、難しいと感じた経験はないでしょうか。
それもそのはず、障害者手帳の発行にあたっては法律による明確な定めがないケースもあり、自治体により発行基準等が異なるのです。
そこでこの記事では、障害者手帳を持つメリットや発行の必要性、申請から発行に至るまでの手続き、押さえるべきポイントを詳しく解説いたします。
障害者手帳を発行するメリット
まず障害者手帳には以下の3種類があります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳(知的障害者用の手帳)
この3つの手帳は各都道府県や市区町村が発行しますが、その中身は自治体により書式や記載事項が異なり、認定や発行基準も異なります。
記載内容は主に、本人の氏名や住所、既往歴、障害の特徴や症状、これまでの支援内容や相談歴などです。
実はこの障害者手帳、法律でしっかり定められたものとそうでないものがあり、障害者手帳の提示により受けられる福祉サービス等が地域等により異なります。
都道府県や市区町村での違いや比較となると膨大な量となるため、ここでは厚生労働省の通知等でも例として挙げられているものを中心にご紹介します。
障害者手帳を持っていると受けられるサービスや制度には、主に以下のようなものがあります。
- 各種手当ての支給
- 各種税金の控除や減免
- 公共料金等の割引
- NHK受信料の免除
- 公営住宅の優先入居
- 各交通機関の運賃割引
- 生活福祉資金の貸付
- 障害者職場適応訓練の実施
- 携帯電話料金の割引
- その他、地域や事業者毎のサービス
身体障害者手帳と療育手帳ではサービスが受けられても精神障害者手帳だとサービスを受けられないことが多く、例えばJRは精神障害者割引をしていないことで有名です。
どちらにしても、障害を理由に働けないとか社会活動に参加しづらいこともあると思いますので、障害者手帳により受けられる割引サービスや優待制度は存分に活用すべきでしょう。
障害者手帳を発行するための認定基準
ここまで何度か「障害者手帳は都道府県が発行するもの」とお伝えしていますが、都道府県による違いを理解しておくことは手帳の発行にあたっても大切です。
なぜなら障害者手帳の発行は国から都道府県に一任されているもので、発行や認定基準までもが都道府県や市区町村によって違うからです。
よって、以下に挙げる障害者手帳の発行対象となる障害や症状についても、あくまで障害者手帳を発行するための主な基準としてお考えください。
- 〈身体障害者手帳の発行認定基準となる障害や症状〉
-
- 視覚障害
- 聴覚や平衡機能障害
- 音声、言語、そしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓、呼吸器の機能の障害
- ぼうこう、直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
- 肝臓の機能の障害
- 〈療育手帳の発行認定基準となる障害や症状〉
-
- 児童相談所、知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者
- 障害の度合いはA判定とB判定に分かれているが、認定基準は都道府県により異なる
- 知的障害の判定は児童相談所、知的障害者更生相談所、地域障害者職業センターで行う
- 〈精神障害者保健福祉手帳の発行認定基準となる障害や症状〉
-
- 統合失調症
- うつ病
- 躁うつ病
- てんかん
- 薬物やアルコールによる急性中毒や依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害
- その他の精神疾患
以上を障害者手帳の発行基準としている地域が多く見受けられますが、詳しくはお近くの福祉担当窓口に確認していただくことをおすすめします。
では最後に、障害者手帳の発行方法や、発行にあたってのポイントや注意点を解説します。
障害者手帳の発行方法と注意点等
障害者手帳の発行方法についても各都道府県または市区町村により違いますが、例として東京都のルールを基に解説します。
【身体障害者手帳の発行申請方法】
- 〈必要なもの〉
-
- 発行から1年以内の身体障害者診断書と意見書(障害福祉担当窓口で入手して医師に作成してもらう)
- 申請者の写真(縦4cm×横3cm)
- 交付申請書(障害福祉担当窓口で入手)
- 〈申請から発行までの流れ〉
-
- 福祉担当窓口や事務所にて申請書等の入手と手続き説明を受ける
- 医師の診断を受けて診断書の交付を受ける
- 改めて福祉担当窓口や事務所に申請する
- 福祉担当窓口や事務所が都に申請する
- 都が交付決定通知を出す
- 手帳が交付される
- 〈注意点とポイント〉
-
- 有効期限はない
- 発行に最低1か月以上かかる
- 他県の指定医師が作成した診断書でも申請可能
【精神障害者福祉手帳の発行申請方法】
- 〈必要なもの〉
-
- 障害者手帳申請書
- 診断書(精神障害に係る初診日から6か月後の日に作成、申請日から3か月以内のもの)
- ※精神障害理由とした障害年金や特別障害給付金を受給していれば、それを証明する書類でも可能
- 本人の写真(縦4cm×横3cm)
- 交付予定日の通知を希望する場合は宛名が書かれたはがき
- 〈申請から発行までの流れ〉
- 特に開示されていないため、区市町村の担当窓口に要確認
- 〈注意点とポイント〉
-
- 2年毎に更新が必要
- 初診から6か月経過していないと申請できない
- 発行に1か月以上かかる
【療育手帳の発行申請方法】
- 〈必要なもの〉
- 心身障害者福祉センター、各児童相談所から知的障害の判定を受ける
- 〈申請から発行までの流れ〉
-
- 心身障害者福祉センター、各児童相談所へ判定予約を行う
- 心身障害者福祉センター、各児童相談所が判定と手帳発行の申請を行う
- 心身障害者福祉センター、各児童相談所に手帳を交付する
- 心身障害者福祉センター、各児童相談所が申請者に手帳を交付する
- 〈注意点とポイント〉
-
- 有効期限はないが、18歳未満は3歳、6歳、12歳で更新判定を受ける必要がある
- 発行に1か月以上かかる
上記の申請方法や流れは一例として考えていただき、詳しくはお住まいの市区町村の福祉担当課で確認した方が良いでしょう。
どの手帳も発行までが遅いという声が多く、時間がかかるようですので、障害者手帳の発行を検討されるのであれば、早めの相談と確認、手続きを行うことをおすすめします。
まとめ
障害者手帳について解説しましたが、簡潔にするため細かな点は省略している部分もありますので、詳しくは各自治体の公式サイトや市報、各窓口等でご確認ください。
また、受けられる福祉サービスは企業や団体が独自に決めているため、障害者手帳も万能ではないことは予めご理解ください。
できれば法律や政令等でもう少し具体的で詳細な定めがあれば良いのですが、現時点で利用できるサービスが少ないわけではありませんので、必要であれば障害者手帳を発行してお住まいの地域でどんなサービスが受けられるか一度確認してみてはいかがでしょうか。
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