障害者雇用計画書の作成命令が来た。作らないと社名公表…どうすればいい?

障害者雇用計画書の作成命令が来た。作らないと社名公表…どうすればいい?

もし、障害者雇用計画書が来たらどう対応すればよいでしょうか。

企業の担当者様や経営者様の中には「障害者雇用計画書を作成する理由」や「作成しないとどうなる?」「法的な根拠は?」など疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、法定雇用率に関わる障害者雇用計画の作成命令が出る制度の内容や仕組みを解説していきます。

万一、障害者雇用計画書の作成命令が来ても一定期間内に法定雇用率を達成すればペナルティはありませんので、計画書作成から雇用率達成までの期間やルールに則って、慌てず障害者雇用率を達成していきましょう。

障害者雇用計画書の作成命令の理由

障害者雇用計画書とは、雇用すべき障害者数を達成できていない企業に対して作成が命じられる計画書です。

企業は一定の従業員数になると、雇用する障害者の数を報告しなければなりません。

結果、一定数の従業員を雇用する企業で国の定めた障害者雇用率を著しく下回ると、障害者雇用納付金の支払いと併せて障害者雇用計画書の作成を求められるのです。

【出典】独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者雇用率が未達成だった場合、納付金を納めれば済む話ではなく、障害者雇用率が未達成で一定基準を下回る結果だと、障害者雇用計画書の作成命令や軽視できないペナルティが課せられます。

なお、障害者雇用納付金や常用雇用労働者の計算方法については以下の記事で解説しています。

障害者雇用納付金の申告が必要になる会社の要件と基準

雇入れ計画の作成命令が出る対象企業、社名公表に至るまでの流れ

もし、あなたの勤めているまたは経営している会社で「障害者の雇入れ計画作成命令」が出ていたとしたら、厚生労働省が定めている以下の基準に達していなかったためと考えられます。

雇入れ計画作成命令基準
  1. 実雇用率が前年6月1日の全国平均実雇用率未満で不足数が5人以上だった
  2. 「1.」に関わらず、不足数が10人以上だった
  3. 法定雇用数が3人または4人の企業で、雇用する障害者数が0人だった

一般のメディアでは、「障害者雇用できなければ企業名公表」を殊更に強調して書かれていることもあります。

確かに障害者雇用率が著しく低く、障害者雇用計画書を作成しても改善されないと社名公表のリスクはありますが、実際は計画通りに障害者を雇用できないからといって否応なしに企業名公表に至るわけではありません。

障害者雇用の企業名公表までには以下のようなステップを踏むようになっています。

上記フローの「雇入れ計画の適正実施勧告」と「特別指導」の行政指導が行われる基準は以下の通りです。

雇入れ計画の適正実施勧告の基準(以下いずかに該当する企業)
  1. 計画の実施率が50%未満である
  2. 計画開始後1年目の12月1日の実雇用率が、計画開始前の6月1日時点を上回っていない
特別指導の基準(以下いずかに該当する企業)
  1. 計画期間終了時の実雇用率が、計画1年目の6月1日時点の全国平均実雇用率未満である
  2. 「1.」に関わらず、不足数が10人以上である
  3. 法定雇用数3人または4人の企業で、雇用障害者数が0人である

障害者雇用計画書どおりに障害者雇用を進められないと即社名公表に至るわけではありませんが、あまりに怠慢な状況であれば指導も厳しくなります。

そもそも障害者雇用計画書の作成命令が出ること自体、法律に則った正式な行政指導です。

(一般事業主の対象障害者の雇入れに関する計画)

第46条 厚生労働大臣は、対象障害者の雇用を促進するため必要があると認める場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が法定雇用障害者数未満である事業主(中略)に対して、対象障害者である労働者の数がその法定雇用障害者数以上となるようにするため、厚生労働省令で定めるところにより、対象障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずることができる

厚生労働大臣は、第一項の計画が著しく不適当であると認めるときは、当該計画を作成した事業主に対してその変更を勧告することができる

厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときは、第一項の計画を作成した事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる

第47条 厚生労働大臣は、前条第一項の計画を作成した事業主が、正当な理由がなく、同条第五項又は第六項の勧告に従わないときは、その旨を公表することができる

【引用】e-Gov

この記事をお読みの担当者様や経営者様の会社に、もし障害者雇用計画の作成命令が出ているとしたら、恐らく「文書」で命令が出されているはずです。

実は文書で命令をすることも、障害者雇用促進法の施行規則で定められた正規の手続きなのです。

【出典】労働政策審議会障害者雇用分科会資料

障害者雇用計画書の記入例・見本

【出典】大阪府 雇用状況報告及び雇入れ計画(様式)

障害者雇用計画書の作成命令は各地域のハローワークから出されますので、障害者雇用計画書のテンプレートや所定の様式があるかどうかは各地域のハローワークや各自治体へ直接確認されたほうが良いでしょう。

作成の見本として大阪府が開示している記入例がありますが、各項目の書き方やルールが細かく少しボリュームが大きいため、大阪府 雇入れ計画書 記入例を参考になさってください。

障害者雇用計画書の作成と雇用率達成のタイムリミット

さて、障害者雇用計画書が作成できたとしても、実際に計画通りに障害者雇用を進めていかなければなりません。

障害者雇用率達成のタイムリミットは障害者雇用計画書作成から2年間。つまり、障害者雇用作成を命じられた翌年1月から2年間の中で、障害者雇用率を達成しなければならないのです。

また、先ほど障害者雇用計画書を作成した後の社名公表までの流れをご紹介しましたが、各段階において行政からチェックされるタイミングがあります。

では、実際に各段階で行政やハローワークが起こすアクションを見てみましょう。下図は平成29年における厚生労働省の企業名公表までの流れを抜粋して作成したフローです。

【参考】厚生労働省 平成29年度 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について

行政による障害者雇用の水増し問題もあったため強制的な障害者雇用に納得いかないという声もありますが、今回ご紹介したように障害者雇用計画から企業名公表に至るまでのプロセスが決して厳しすぎることはありません。

少なくとも2年という期間が設けられており、最終的に企業名の公表に至るのも障害者雇用計画に対して状況が全く変わらない企業のみとなっています。

障害者雇用計画の作成を命じられたとしても、その先の特別指導までに行政に相談したり改善するチャンスは多くあります。

適切な障害者雇用計画の作成と真摯な取り組みがあれば、障害者雇用による社名公表リスクに悩まされることもないと言えるのではないでしょうか。

「障害者の雇入れに関する計画」作成と様式、書き方と行政指導の基準を解説

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