一時話題になることも多かった拒食症や過食症。テレビで過酷な体験談が紹介されることもあり、何となく摂食障害について知っているという方も多いでしょう。
しかし、昨今「オルトレキシア」という新たな摂食障害が注目されています。オルトレキシアは、まだ医学的にも正式に認められていない新型の摂食障害。体に良いものを食べようとするあまり、逆に精神的な障害を引き起こすという皮肉な精神疾患の一つです。
今回はあまり聞きなれない「オルトレキシア」について解説。オルトレキシアを体験した方のブログも紹介しますので、この機会にオルトレキシアとは何か学んでみてはいかがでしょうか。
摂食障害を引き起こす精神疾患オルトレキシアとは?
オルトレキシアとは体に良くない食べ物を極端に避けようとするあまり、重度の摂食障害にもなる精神障害です。ギリシャ語の「ortho(オルソー=正しい)」「rexia(レキシア=食欲)」が言葉の語源であり、一般に知られる拒食症とは別の疾患として解釈されています。
厚生労働省が運営しているメンタルヘルス総合サイトでは、以下のような調査データを公表しています。
そもそも拒食症に関連する疾患は精神障害の一種であり、上図の通り摂食障害は爆発的に増加しています。なお「神経性食欲不振症」が一般的に言われる拒食症にあたる疾患です。それに対し過食症は「神経性過食症」が正式名称。
オルトレキシアは「特定不能の摂食障害」であり、一部では「新型摂食障害」とも呼ばれています。事実オルトレキシアは、アメリカ精神医学会が作成する精神疾患の定義であるDSM-5にも記載されていません。一人の研究者が提唱した精神疾患として認知されている程度というのが現状です。
オルトレキシアと拒食症の症状や原因に違いは?
オルトレキシアの症状や原因を知るには、まず基本として摂食要害が多くなった原因を知る必要があります。まだ詳しい原因は明らかになっていませんが、以下3つが主な要因とされているのが現状です。
社会的背景 | 文化的な背景として軽い体重や細い体系を推奨するようになった |
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心理的背景 | 自尊心の低さや強い完璧主義などの心理的な要因 |
家族や家庭環境 | 両親の不仲や虐待、親の過度な期待、家族がダイエットを始めた影響など |
良く知られるのは、「痩せなければ」という強迫観念が精神的な負担となり、身体が食事を受け付けなくなるという症状です。体重が減ることを良しとして、うっかり物を食べて体重が増えると過度なダイエットを続けてしまうという悪循環に陥ります。
ではオルトレキシアの原因は何でしょうか。上記の一般的な摂食障害が「痩せることが目的」だとするなら、オルトレキシアは「正しいものを食べるのが目的」です。
つまり、健康に良いとされる食べ物だけに極端に偏る精神状態がオルトレキシアと考えれば良いでしょう。オルトレキシアの具体的な症状に関する情報は多くありませんが、主に以下のような症例があるとされています。
- 添加物などが含まれる食材を極端に「不健康だ!」と決めつけて徹底的に避ける
- 第三者の食事や健康に関する価値観を共有できず人間関係に影響が出る
- 不健康なものを摂取した精神的な不安から嘔吐したり不安を抱いたりする
食べることはできるものの、口にする食材を極度に制限しようとするのがオルトレキシア。症状が悪化すると、身体が食べ物を受け付けなくなる嘔吐などの症状が出ることもあり、軽視できる病ではないと言えるでしょう。
【実例ブログ】オルトレキシアを体験し克服した「ステップあや」さん
さて、未だ未解明な部分が多いオルトレキシアですが、実際にオルトレキシアの体験談を綴るブログがあります。
【出典】ダイエット依存・生き辛さからラクになる『本物のダイエット』~18年の摂食障害を越えて
「ダイエット依存・生き辛さからラクになる『本物のダイエット』」というブログを運営する「ステップあや」さん。高校生で拒食症になり、一時は体重が30キロ台になったとのこと。
その後、なんと18年という長い時間で拒食と過食、健康食への依存を繰り返し、現在はダイエットカウンセラーや栄養コンサルタントとして活躍されています。
ブログのボリュームは十分にあり、一部を読むだけでも摂食障害の恐ろしさが分かります。拒食だけでなく、その後の過食や過度な健康食品への依存が起こることもあり、到底一人では克服できない心の病なのだと感じさせられます。
18年もの摂食障害を克服したステップあやさんのブログを読み、摂食障害で悩んでいる方からは「かなり細かく書かれた他にはないブログ」と称賛されているほど。
オルトレキシアはもちろん、摂食障害全般についての様々な情報が得られブログです。摂食障害が気になる方は、上記出典のリンクから一度ご覧になってみてください。
オルトレキシアかも?摂食障害の兆候を確認する10の項目
まだまだ未解明な部分も多いオルトレキシア。あくまで一つの目安でしかありませんが、実はオルトレキシアかもしれないチェックリストが存在します。
アメリカの証券取引市場ナスダックにも上場している世界最大の医療情報サイト「WebMD」。WebMDでは、以下の質問2つ以上に当てはまるとオルトレキシアの可能性があるとしています。
・健康的な食事を考えて1日3時間以上過ごしていますか?
・今日は明日のメニューを計画していますか?
・食べることで得られる喜びよりも、食べるものについて感じる美徳のほうが重要ですか?
・食事の質が向上すると、生活の質は低下しましたか?
・あなたは自分にもっと厳しくなりましたか?
・あなたの自尊心は健康的な食事から後押しされますか? このように食べない人を軽んじますか?
・「正しい」食べ物を食べるために、一度楽しんだ食べ物をスキップしますか?
・あなたの食事はあなたが家以外のどこでも食べることを難しくし、友人や家族からあなたを遠ざけますか?
・食事から外れると、罪悪感や嫌悪感を感じますか?
・本来の方法で食べるとき、あなたは完全にコントロールされていると感じますか?
質問内容を見る限り、意外と当てはまりそうな項目が多いと感じた方は多いのではないでしょうか。まさに昨今の健康ブームやダイエット食品への傾倒は、オルトレキシアの可能性を高める一要因と言っても過言ではありません。
確かに体に良くない添加物が含まれた食品は多くあります。ただ食事への偏った考えもまた、健康や精神を不安定にさせる一要因となり得ます。
摂食障害は症状が悪化すると病院に行くことすら拒否感を示すようになると言われます。もし摂食障害への不安や疑いがあるなら、摂食障害に詳しい病院で診断を受けることを検討したほうが良いでしょう。
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