新型コロナウイルスの影響で私たちの生活は大きな変化を余儀なくされています。
未だ効果的なワクチンや治療薬が確立していないことから誰にでも感染する可能性が高く、心配がつきものでしょう。
このようなゴールが見えない毎日への不安や自分に対する感染の恐怖から、パニック障害に陥ってしまう方も増えてきています。
そこで今回は、パニック障害の特徴や治療法などについて、詳しく解説していきます。
パニック障害の原因
パニック障害とは、不安障害のひとつに含まれる精神疾患のことです。
多くの場合、突然、激しい動悸に襲われたり、目の焦点が合わなくなったりの他、ふらつきを感じる、息苦しさが数分程度続くなどの症状が現れます。
パニック障害の原因は不明ですが、有力な要因としては脳の神経伝達物質の働きの異常やストレスの影響によるものだと考えられています。
私たちの脳は特に不安を感じる出来事があると神経伝達物質が過剰に分泌されますが、それが基となってパニック障害が引き起こされるのです。
このようにパニック障害は、大きな不安を抱えるなどのストレスから生じる可能性が高いことが分かっています。
現在私たちは新型コロナウイルスの恐怖にさらされた環境下にいるため、パニック障害の発生と密接な世の中になっているとも言えるでしょう。
また、パニック障害は単独で現れることもありますが、うつ病や適応障害などと併発することも少なくありません。
パニック障害の症例
パニック障害は、激しいパニック発作が起こる疾患というイメージを持っている方が多いでしょう。しかし、それだけではありません。以下にパニック障害の3つの症例をご紹介します。
- 1.パニック発作
- パニック発作は、パニック障害の中で主に現れやすい症状だと言われています。その内容としては、突然、息苦しさや激しい動悸、めまい、汗を大量にかくなどの状態となり、大半の人が「このまま、自分は死んでしまうのではないか」と感じてしまうような発作が起きるのです。しかし、この発作は長くても数十分で収まることが多いため、1日中や数日間も続くことはありません。また、パニック発作は、原則的に時間や場所に関係なく襲ってくるケースがほとんどです。
- 2.予期不安
- 予期不安は、「パニック発作」がまた起こるのではないかと不安を感じる症状のことです。何度かパニック発作を体験すると、再び発作が来るのではないかと、いつでも恐怖を抱えるようになってしまいます。これがひどくなると、仕事を辞めてしまったり、外出も最小限にしてしまいがちになる場合があるのです。
- 3.広場恐怖
- 広場恐怖は、発作が起こるのが心配で、特定の場所に行けなくなる症状のことを言います。例えば、以前発作が起きてしまった場所を、必要以上に避けるケースなどがあります。
また、電車やバス、飛行機などの公共交通機関などは一度乗ったらすぐには降りられないため、「その場で発作が起きたらどうしよう」という不安にかられ、利用しないか、乗るにしても各駅停車が可能な乗り物しか利用できなくなるパターンも多いようです。
パニック障害の治療法
パニック障害は、薬物療法と心理療法(カウンセリング)での治療が一般的となっています。治療を受けることのできる診療科は、精神科や心療内科ですので、覚えておきましょう。
初診の場合、まずは薬物療法が使用されます。処方される薬物としては、不安を緩和させる抗不安薬や脳内の伝達物質の働きをスムーズにさせる、SSRIなどの抗うつ薬が主となります。
また、パニック発作は、薬である程度改善が見られることが多いですが、予期不安や広場恐怖は、物事の捉え方や考え方のゆがみなどが影響していることも少なくありません。
そのため、不適切な考え方を修正し、効果的な考え方に変化させていくために、薬物と併用して、心理療法を行うこともあります。
ただ、注意したいのは、薬物療法で症状が軽減すると、「薬はもういらない」と感じ始める方がいることです。そうなると、服薬を辞めてしまうケースもあります。
しかし、パニック障害は再発しやすい疾患です。「もう大丈夫」と思っても、自己判断で服薬を中断するのではなく、必ず主治医と相談のうえで薬の調整を行うことが大切です。
なお、パニック障害は、医師による治療だけではなく、パニック障害を抱える方の家族や友達など周囲の人のサポートも重要となります。
周りがパニック障害についての知識をしっかりと持ち、本人に発作などの症状が現れても、あわてずに対処する方法を身に着けることが必要です。
パニック障害で命を落とすことはない
パニック障害は治療が十分に可能な疾患ですが、一度パニック発作が起こると、今にも死んでしまいそうな感覚に襲われる方が多いのも事実です。
たしかに、パニック発作は急に訪れるうえに、身体的にも大きな負担がありますが、長時間発作が続くことはなく、パニック障害で命を落とした例はないため、まずはそれを知っておくことが重要です。
「パニック障害」=「死ぬことはない」と理解しておくだけでも、発作が起きたとき冷静さを保つことができるようになるでしょう。
【出典】
パニック障害と適応障害 医療法人社団慶神会「武田病院」 / パニック障害・不安障害 厚生労働省
執筆者プロフィール
精神保健福祉士、社会福祉士、認定心理士、心理カウンセラー
カウンセリングセンターや精神科病院に勤務。うつ病などの患者やその家族に対するカウンセリング・相談や支援を経て、現在はメンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。