障害者をマネジメントする為に管理職に求められるスキルとは?

障害者をマネジメントする為に管理職に求められるスキルとは?


障害者の雇用にあたって、会社全体での受け入れ体制の構築や職場環境の改善のために「管理職によるマネジメントスキル」が重要な役割を果たします。

マネジメントスキルと一言で言ってしまえば簡単ですが、障害者を雇用する場合、業務を確実に遂行するためのテクニカル面でのスキルだけでなく、雇用定着を促すためのヒューマンスキルも必要となります。

これは障害者雇用に関わる話に限ったことではないものの、特に障害者の雇用の場合は合理的な配慮というものも必要になりますから、どのようなスキルが求められるかを把握しておきたいところです。

そこで今回は、障害者を採用する段階から雇用後の離職を防ぐために必要なスキルを解説します。

障害者雇用の現場では、管理職だけが障害者雇用の知識を深めるだけでは足りず、既存社員に障害者雇用を理解してもらうためのスキルも求められますので、是非この機会に覚えておきましょう。

障害の種類と症状について知る

障害者雇用を始めるとなれば、障害の種類と症状に関する知識が必要です。なぜなら、障害の種類や症状によりできる仕事とできない仕事があるためです。

障害の種類は大きく分けて身体障害、精神障害、知的障害に分けられますが、それぞれ出来る仕事と出来ない仕事は以下のように異なります。

【身体障害】
体を動かす仕事が向かない分、事務や問い合わせ対応などその場でできる仕事に関しては健常者と同等に対応できる場合も多い
【精神障害】
接客やイベントの運営などマルチタスクが要求される仕事には不向きだが、事務やIT関連、農業などでマイペースにできる仕事に比較的向いている
【知的障害】
コミュニケーションに難はあるが、ライン作業や清掃、簡単な文書整理など、単調な作業を繰り返し行う仕事に向いているとされる

上記はあくまで一例であり、例えばプレッシャーに弱く、疲れやすいなどの特徴がある精神障害の方でも、言語や文字認識に問題はないため、ノルマのないルート営業などを任されるケースもあります。

仕事の切り出し方や配属を決めるために、まずは雇用者側が「障害の種類や症状を知る」ことから始めるとよいでしょう。

障害者雇用の理解促進のためのプロデュース力

障害者雇用は社内で特定の人や部署だけが理解・把握していればよいものではなく、社内全体の理解も促進する必要があります。障害者雇用促進のための専門部署を設置するからといって、その部署に任せきりにしてはいけません。

例えば、障害者雇用を行う現場が以下の4つのセクターに分けられているとします。

・経営陣
・障害者雇用を進める人事担当部門
・障害者を受け入れる部署
・障害者と関わることの少ない部署

基本的に全ての部署での共通認識と理解が必要ですが、まずは各セクターの管理職らが集まって社内理解を促進するための施策を考えるのが良いでしょう。その際に必要とされるスキルが「プロデュース力」です。

具体的には、「支援機関や専門家による社内研修の企画」「実習生として障害者を受け入れる部署の募集」「社内報の発行」などのことで、既存社員と障害者が安心して働ける職場環境を実現するために大事なスキルと言えます。

適切な仕事を切り出すためのマッチング能力

ここまでを障害者の採用から受け入れ準備とするなら、実際に障害者が働き始めた後の仕事の切り出し方や業務管理などについても考えなけれなりません。そこで労働者と仕事の「マッチング能力」のスキルが求められることになります。

例えば、精神障害者はマルチタスクの仕事に向かないにも関わらず、次々と難題を突きつけられる顧客対応などを任せてしまうのは好ましくありません。

よって、作業工程の決まった簡単な事務や清掃管理など、シングルタスクの仕事を割り振ったほうが良いと言えます。これを行うために必要なスキルがマッチング力です。

これは障害者雇用のみに必要なスキルではありません。管理職の場合、既存社員への業務の割り振りやスケジュールを管理するケースなども少なくないかと思います。

これらも前章で解説した障害の種類や症状に合わせた仕事の切り出しや既にある仕事から最適なものを見つけることも障害者雇用で求められるスキルです。

ただし、業務指示や管理を行うためには障害へ配慮しながらのコミュニケーションが必要となります。その点は日頃の業務とは違うところですので、最後にコミュニケーション能力の必要性について解説します。

障害者雇用の定着率を上げるためのコミュニケーション能力

障害者の方が採用されたら、それで終わりというわけにはいきません。障害者の離職率は障害の種類や程度にもよりますが、健常者よりも高くなる傾向にあり、職場環境や人間関係で悩んで退職してしまう障害者は少なくないのです。

せっかく雇用した障害者の退職を防ぐためにも管理職が率先して積極的にコミュニケーションを取りながら障害者の些細な変化に気づくことが重要になります。

事実、厚生労働省の「平成25年度障害者雇用実態調査結果」では、精神障害者の方の前職を退職した理由は「個人的理由」が最も多く、内訳は以下のようになっています。

職場の雰囲気・人間関係 33.80%
賃金、労働条件に不満 29.70%
仕事内容が合わない 28.40%
疲れやすく体力、意欲が続かなかった 28.40%
症状が悪化(再発)した 25.70%
作業、能率面で適応できなかった 25.70%
家庭の事情 8.10%
出産・育児・介護・看護 1.40%

【参考】厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査」

賃金や労働条件に関しては管理職レベルでは自由に変更できないことも多く、役員や経理、人事などの決裁が必要になる事も少なくありません。ですが、職場の雰囲気や仕事への適応、本人や周囲の変化など気づけることはあるはずです。

気兼ねない声がけはもちろん、業務の進捗や職場での悩み事などがないか、さりげなく聞いてみるのも良いでしょう。日頃からのコミュニケーションは、障害の有無に関係なく、社員の離職を防ぐことにも繋がります。

まとめ

今回は障害者雇用における管理職に求められるスキルという観点で解説しましたが、ビジネス的な考え方をすれば、「知識を深める」「企画を立ち上げる」「商談の場の提供」「アフターフォロー」といった流れで捉えられるかもしれません。

障害者雇用には当然ビジネスの側面はありつつも、雇用の促進と定着雇用があってこそです。管理職が障害者雇用に関するスキルを高めるのは、障害者の方が長く安定して働ける環境を作るためであり、それを実現して初めて自社の戦力として障害者が活躍できる企業と言えるのではないでしょうか。

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