働く障害者の不安と本音。障害者が魅力的と思える雇用条件は?

働く障害者の不安と本音。障害者が魅力的と思える雇用条件は?


厚生労働省が5年ごとに行っている「障害者雇用実態調査」という統計があります。

その中で「働く障害者への将来に対する不安について」という項目があり、その質問に「ある」と答えた人が「身体障害者70%」「精神障害者81.9%」「知的障害者47%」という結果になっています。

さらに同調査では、前職の退職理由についても調査しており、最も多い回答が「個人的理由」で、非常に多くの人が不安を抱えながら仕事をしていることが分かります。

一体、働く障害者の方は何を不安に思い、どんな会社で働きたいと考えているのでしょうか。

今回は、厚生労働省の障害者雇用実態調査から見えてきた、障害者の方にとって魅力的と思える会社と雇用条件について考えていきます。

障害者が感じている「将来的な不安」

せっかく障害者を雇用するなら、会社の貴重な戦力として、そして職場の仲間として是非活躍してもらいたいと考えるのは、どの会社でも同じではないでしょうか。

しかし、何の不安もなく働いているという障害者はそう多くはありません。

まずは障害者雇用実態調査データから、働く障害者が実際に不安に感じていることを抜粋してご紹介します。

〈身体障害者〉
老後の生活が維持できるか 63.9%
仕事を続けられるかどうか 60.7%
障害が重度化するのではないか 46.0%
〈精神障害者〉
仕事を続けられるかどうか 71.5%
老後の生活が維持できるか 68.1%
病気が再発、悪化するのではないか 51.5%
〈知的障害者〉
親がいなくなったら生活を助けてくれる人がいなくなる 37.3%
いまの仕事をつづけていけるかどうかわからない 23.0%
わからないがなんとなく不安 22.8%

【出典】厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査結果」

いずれの障害者も「今の仕事を続けていけるのか」、そして「自分の老後や障害について不安」に思っている人が多いことが分かります。

障害者を雇用する側の会社としては、せめて「仕事を続けられるかどうか」という不安を排除できるように工夫したいところです。

しかし、仕事を続けてもらうためには、まず働く障害者が会社や仕事に対して何を不満に思っているのかを理解しなければなりません。

そこで、次の章で障害者が望んでいる会社への改善点などについて見てみましょう。

障害者が望む会社への「改善点や要望」

働く障害者の多くが「仕事が続けられるか」と不安に感じていることが分かりました。

では、その不安を少しでも解消すべく、障害者の方が一体何を望んでいるのかを見てみましょう。

下記は障害者雇用実態調査データから、働く障害者を対象に行った「会社に改善してもらいたいと思っていること」「会社に対する要望」というアンケートで、最も回答の多かったものです。

〈身体障害者が会社に改善してもらいたいと思っていること〉
能力に応じた評価、昇進・昇格 28.0%
調子の悪い時に休みを取りやすくする 19.6%
コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置 18.0%
〈精神障害者が会社に改善してもらいたいと思っていること〉
能力に応じた評価、昇進・昇格 31.2%
調子の悪い時に休みを取りやすくする 23.1%
コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置 20.4%
〈知的障害者の会社に対する要望〉
今の仕事をずっと続けたい 52.3%
職場で困った時に相談できる人が欲しい 12.3%
他の仕事もしてみたい 12.2%

【出典】厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査結果」

全体的に見ると、「能力に応じた公平な評価」「障害を理由とした休暇」「コミュニケーションへの配慮」「相談できる支援者が欲しい」と考えている障害者が多いことが分かります。

裏を返すと、「安心して働ける環境さえ整っていれば、仕事への意欲は強い」とも言えるのではないでしょうか。

知的障害者の質問内容が他と異なっているものの、やはり「働き続けたい」という仕事への意欲の強さでは共通しています。

働く障害者が魅力的だと感じる雇用条件

では、ここまでの調査結果を踏まえて、「障害者にとって魅力的な職場とは何か」を考えてみましょう。

働く障害者の不安や会社に思っていることを改めて挙げると以下のようになります。

  • 長く働き続けたい
  • 仕事内容に応じて評価や昇給などしてほしい
  • 障害に配慮してもらいたい
  • 相談できる人や支援者にいてもらいたい

つまり、働く障害者にとって良い会社とは、「長く安心して働くための職場環境と、仕事内容に応じた評価制度のある会社」と言えそうです。

ただ、これは障害者の方だけでなく、健常者にとっても最低限必要な雇用条件です。

今回ご紹介した障害者雇用実態調査によって、障害者にとって最低限の雇用条件が満足できる水準にない職場が多いことが明らかになりました。

社会保険や有給休暇などの福利厚生、業務実績による昇給制度など、健常者には当たり前に完備された環境が障害者にとっては大変貴重な会社であり、残念ながらそういった会社は多くないのが現状なのです。

障害者枠で正社員・昇給・福利厚生が揃った採用情報もある

健常者には当然の条件で障害者も雇用する、つまり障害の有無に関わらず雇用条件を均一にするという考え方を「ノーマライゼーション」と言います。

何も障害者の方が特別な処遇を求めているわけではなく、「仕事の評価をしてもらいたい」「安定して長く勤務したい」「できるなら老後の安心も得たい」など福利厚生や評価制度を望むことに障害の有無は関係ありません。

ここで実際に障害者採用を行う会社で上記までの職場環境が整っている会社をご紹介します。

以下はベネッセホールディングスのグループ会社である「株式会社ベネッセビジネスメイト」の障害者採用枠ですが、一般の求人募集と全く遜色ない条件になっています。

株式会社ベネッセビジネスメイト「採用情報(障がい者採用)」

〈募集職種・仕事内容〉
OAセンター     :コピーやデータ入力
アシスタントサービス:データ出力、会議のテープ起こし、アンケートの入力、書類のファイリング、イベント使用の小物作成などの軽作業
メールサービス   :自社オフィス内の、郵便物や社内便の仕分けと各フロアへの配達
オフィスサービス  :入退室カードの管理、ビル管理の窓口、消耗品の在庫管理など
クリーンサービス  :ビル内の清掃と廃棄物の分別、機密文書のシュレッダー処理、会議室のセッティングなど
〈雇用形態〉
契約社員(正社員登用制度あり)
〈雇用期間〉
一定の雇用期間を定めつつ、契約更新の可能性もある
〈勤務地〉
新宿、多摩
〈勤務時間〉
9:30~17:30/7:30~15:30/8:30~16:30(昼食1時間休憩含む)
〈給与〉
社内規程による賞与、時間外勤務手当、通勤手当
〈給与〉
土日祝日、有給休暇、夏季休暇、年末年始
〈待遇〉
厚生年金保険、健康保険組合、雇用保険、労災保険
〈応募資格〉
・障害者手帳を持っている
・基本的なPCスキルを持っている

ベネッセビジネスメイトでは、障害の有無よりも個々の能力により評価する等級制度を導入しており、等級ごとの要件を満たせば昇格や昇給(年2回ほど評価の見直し)の機会があるようです。

この仕組みや取り組みは障害者雇用の好事例としても評価されており、働く障害者の中には当初のOAセンターからベネッセ本部にあるプラネタリウム施設の運営に異動になったケースもあり、まさに障害者雇用の手本のような会社とも言えるのではないでしょうか。

まとめ

障害者の方が魅力的と思える雇用条件は何も贅沢な事を言っているわけではなく、多くの企業が当然のように完備している雇用環境があればそれで良いのです。

ただ、障害を理由に遂行できない業務があったり、コミュニケーションに難があるなど、配慮や工夫が必要になる場面があるのも事実です。

記事内でも触れましたが、健常者と障害者が分けられることのない社会を目指す「ノーマライゼーション」という考え方があります。

行政と企業一体となって働く障害者への理解や配慮を行い、障害があっても安心して働ける職場をみんなで作っていくことが、ノーマライゼーションを実現するためにも必要なことなのです。

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