障害者手帳のメリットとデメリットを徹底比較!申請方法は?

障害者手帳のメリットとデメリットを徹底比較!申請方法は?

「障害者手帳を所持すると、具体的にはどんなメリットがあるのだろう?」
「逆に不利になってしまうことはないのだろうか?」
「障害者手帳を取得したいけれど、申請の仕方がよく分からない」

この記事では、そんな障害者手帳に関する疑問にお答えしていきます。
障害者手帳のメリットやデメリット、申請の仕方について分かりやすく解説します。

この記事を読むことで障害者手帳の疑問が解消でき、申請に向けての行動につながります。
意外な割引・オトクな制度やおすすめのアプリ、申請がどうしても難しい時の対処法についてもお伝えしていますので、ぜひ最後までお読みください。

障害者手帳とは

そもそも、障害者手帳とはどのようなものなのでしょうか。
一口に「障害者手帳」といってもその種類や使い方はさまざまです。
障害者手帳の3つの種類と等級について
障害者手帳には、以下の3つの種類があります。

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

それぞれの種類の特徴と等級について解説します。

(参考:厚生労働省「障害者手帳について」)

1.身体障害者手帳

身体障害者手帳は身体障害のある人に交付される手帳です。
身体障害者福祉法の規定に基づいています。

以下のような障害の種類が該当します。

  • 視覚障害
  • 聴覚・平衡機能の障害
  • 音声・言語・そしゃく機能の障害
  • 肢体不自由
  • 心臓機能障害
  • 腎臓機能障害
  • 呼吸器機能障害
  • ぼうこう・直腸の機能の障害
  • 小腸機能障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
  • 肝臓の機能の障害

原則更新はありませんが、手帳の交付から一定期間を置いたあと、再認定が実施されることがあります。
障害の状態の軽減など、変化が予想される場合です。

身体障害者手帳の等級は、1級から7級まで分類されています。
分類条件は等級によって異なり、1級に近いほど障害の程度が重く、7級に近いほど障害の程度が軽くなります。

2.療育手帳

療育手帳は療育手帳制度に基づいて交付されるもので、知的障害があると判定された方が対象です。
東京都や横浜市での「愛の手帳」など自治体独自の名称を用いている場合もあります。

療育手帳の交付にあたっては、以下の施設で判定を受ける必要があります。

  • 児童相談所(18歳未満の場合)
  • 知的障害者更生相談所(18歳以上の場合)

子どもの頃に取得する人が多いですが、実は成人してからの取得も可能です。

この療育手帳をお持ちの方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや、各自治体や民間事業者が提供するサービスを受けることができます。

療育手帳の等級は、基本的には重度「A」と、重度以外の中軽度「B」に分けられています。
自治体によっては、「A1」「B2」のようにより細かく区分している場合もあります。
なお、東京都では1度から4度という数字で区分されており、1度に近いほど障害の程度が重く、4度に近いほど障害の程度が軽くなります。

3.精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患により生活に支障がある人に対し、精神保健福祉法の規定に基づいて交付される手帳です。
交付の対象となる障害の種類には、以下のようなものがあります。

  • 統合失調症
  • うつ病、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物依存症などの中毒精神病
  • 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
  • 発達障害
  • そのほかの精神疾患

上記の障害により生活に制約が出ている場合に交付の対象となります。

精神障害者保健福祉手帳は、1級から3級まで分類されています。身体障害者手帳と同様に、1級に近いほど障害の程度が重くなります。発達障害で知的にも遅れがある場合は、どうなるのでしょうか。そのような場合は、療育手帳を取得するのが一般的です。
知的な遅れの定義は自治体によって異なります。
厚生労働省では「IQ70以下」を「知的障害」と定義しており、同じ基準を採用している自治体が多いようです。
(参考:厚生労働省「知的障害(精神遅滞)」)

障害者手帳のメリット

障害者手帳の概要がお分かりいただけたでしょうか。ここからは、障害者手帳をもつことで得られるメリットのうち、代表的なものについて解説します。
受けられる支援の内容や申請方法は地域や障害の等級によりますので、自治体の窓口で確認してください。

1.障害者雇用枠での就労

「障害者雇用枠」への応募する場合、障害者手帳は必須です。障害者雇用では、障害や特性への理解・配慮を得ながら働くことができます。
また、就職にあたってさまざまな支援制度を利用することができます。雇用の機会が広がり、社会参加が促進されるというメリットがあるのです。

2.就労支援~失業・再就職時の福祉サービス

障害をもつ人のための就労支援(就労に関するサポート)を受けることができます。就労移行支援事業や地域障害者職業センターの利用には、障害者手帳は必須ではありません。
しかし障害者手帳があると手続きや利用がスムーズにできることがあります。「失業時や再就職時に福祉サービスを受けたい」という場合にも、障害者手帳は役立ちます。

3.税金の「障害者控除」

所得税や相続税、住民税、贈与税などの税金が軽減され、経済的な負担が軽くなります。障害によって特に困難が多い場合には、「特別障害者」として通常の障害者控除よりも高い控除を受けることができます。
障害者控除を受ける際の手続きは以下のとおりです。

  • 会社員の場合……年末調整で「扶養控除等の申告書」を提出する
  • 個人事業主、年末調整対象外の場合……確定申告の際に申請する

詳細はお住まいの地域の税務署にお問い合わせください。

4.医療費助成

心身障害者医療費助成や自立支援医療により、医療費の一部が助成されます。地域や障害の等級によりますので、自治体の窓口で確認してください。

5.自動車税の減免

自動車税が減免され、車の所有における負担が軽減されます。
条件は以下のとおりです。

  • 障害者手帳の本人、もしくは本人と生計をともにする方が所有する車
  • 以下に該当する場合
  • ①障害のある本人が運転する場合
  • ②本人と生計をともにする方が、本人の通院や通学・通勤などのために運転をする場合

6.公共交通機関・携帯料金やレジャー施設などの割引制度

公共交通機関では、以下のような割引や減免が受けられます。

  • JRや私鉄各線での運賃の割引、減免
  • JAL、ANAなど航空会社の「身体障害者割引運賃」の適用
  • バス会社各社での「障害者割引運賃」の適用
  • タクシー料金の割引

公共交通機関やレジャー施設を利用する際便利なのが、「ミライロID」というアプリです。カバンや財布から取り出していた障害者手帳を、スマホで提示することができます。飲食店やレジャー施設でお得に使える電子クーポンなどが利用できるので、外出時に便利です。
また携帯各社でも、障害者手帳を提示することで割引が受けられる場合があります。お使いの携帯会社を調べてみることをおすすめします。

7.公営住宅の優先入居

障害者手帳をもっていると優先的に公営住宅に入居できる場合があります。詳細は自治体によって異なりますが、以下の2点を実施しているところが多いです。

  • 抽選確率の優遇:抽選で入居者を決める際、障害者手帳をもっている方が優遇される
  • 障害者専用住宅の整備:身体障害者手帳を所持している人などがバリアフリー住宅に優先的に入居できる

自治体によって制度や申込み方法が異なりますので、気になる場合は問い合わせてみましょう。

8.保育に関わる配慮(入園基準、保育料)

保護者もしくはお子様が障害者手帳をもっている場合、保育施設での入園基準や保育料が優遇されます。入園選考では、自治体それぞれに基準が設けられています。障害者手帳の所持により、点数が加算されたり選考で有利になったりする自治体が多いようです。
また保育料(※)についても、自治体によって障害者手帳所持の方が減免されます。
※0〜2歳児の場合。幼児教育無償化により3〜5歳は無料となっています。

9.補装具の助成※身体障害のみ

身体障害者手帳をお持ちの方は補装具費(交付と修理)の支給を受けることができます。こちらは所得に応じて一定の負担上限があります。また生活保護世帯を除きます。
(参考:厚生労働省「補装具費支給制度の概要」)

10.住宅改造費の補助※身体障害のみ

身体障害者向けの住宅改造費が一部補助されます。具体的には、手すりや段差解消などを目的としたリフォーム費用の助成が受けられます。

障害者手帳のデメリット

前項では、障害者手帳のメリットについて見てきました。
一方、障害者手帳をもつことで生じるデメリットはあるのでしょうか。結論からいうと、障害者手帳を持っていることによるデメリットはほとんどありません。
以下に詳しく解説します。

1.周囲の目が気になる

「障害者手帳をもっていると、世間体が気になる」という人もいます。しかし、障害者手帳を取得したことを周囲に知らせる必要はまったくありません。友人や親戚などには何も言わなくて良いのです。
ただし職場では、仕事上の必要から障害者手帳の有無を尋ねられる場合があります。しかしその場合も、「開示を求める際には利用目的を明示すること」「開示を求めるのは必要な情報のみにとどめること」「個人情報の取扱いには十分注意すること」などが厚生労働省によって定められています。
必要に迫られて開示する場合も、プライバシーが尊重されることを知っておくと安心ですね。
(参考:厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」)

2.職場に障害があることがバレるのではないか?

障害者雇用の枠で就労していたり、障害があることをあらかじめ会社に知らせて就職(オープン就労)したりする場合、障害があることは当然企業側に伝わります。一方、障害があることを伏せて就労する「クローズ就労」の場合は、前述のとおり障害者手帳の有無を会社に開示する義務はありません。障害者手帳を所持していることを会社側に明かさず働いている人もたくさんいます。ただし障害者控除を受けている場合、年末調整の際に会社側に知られる可能性はあります。自分で確定申告をすれば年末調整の書類に障害者控除のことを書く必要はありませんが、翌年度の住民税の「県市民税特別徴収税額通知書」によって知られてしまうことがあります。
障害者手帳とはやや違う話になってしまいますが、「絶対に障害のことを会社には知られたくない」という方は、この「障害者控除」についても知識を得ておくと良いでしょう。

3.生命保険に入れないのではないか?

障害者手帳を取得したことによって、生命保険の加入に影響する場合があります。保険法では「告知義務」というものが定められています。これは、保険契約者又は被保険者になる方が生命保険契約をする際、保険事故の発生の可能性に関する重要な事項のうち、保険会社から告知を求められたものについて事実を告知しなければならないというものです。知的障害、身体障害及び精神障害の有無もこの「告知義務」に含まれる場合があります。
しかし、障害や持病があっても入れる保険もあります。保険料が多少割高になる場合が多いですが、必要性を感じる場合は保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。

4.申請における煩雑さが気になる

後述しますが、障害者手帳の申請や更新は大変なものではありません。しかし忙しい方や手続きが苦手な方にとっては、煩雑と感じることもあるでしょう。
申請に対するハードルが高い場合はどうすれば良いのでしょうか。お金はかかってしまいますが、行政書士や社労士に手続きを代行してもらうことが可能です。

  • 忙しくて申請に時間を割くことが難しい
  • 申請しているところを決して人に見られたくない
  • 書類を書いたり提出したりすることが苦手で、心理的なハードルが高い
  • 得られる金銭的メリットを考慮すると、有償で依頼しても損することはなさそう

以上のような方は、申請代行を依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。

障害者手帳の申請方法

上記で述べたように、「障害者手帳の申請は難しいのでは」と不安に思う方も多いようです。しかし、申請自体はそれほど難しくはありません。
以下に詳しく解説します。

1.身体障害者手帳の申請方法

身体障害者手帳の申請は以下の手順で行います。

市区町村窓口で「診断書・意見書」の用紙を受け取り、必要書類を準備する
都道府県知事が指定した指定医に診断書を書いてもらう
必要な書類を市区町村窓口に提出する

申請に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 申請書
  • 診断書
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)
  • 本人確認ができる書類
  • マイナンバーが分かる書類

2.療育手帳の申請方法

療育手帳の申請方法や手順は、自治体によって異なります。まずはお住まいの地域の担当窓口に相談・確認をしましょう。
代表的な流れは以下のとおりです。

市区町村窓口にて相談、申請する
指定医に診断書を書いてもらう
判定が下りる

前述の通り、判定を行う機関は申請者(障害のあるご本人)の年齢によって異なります。
知的障害判定を受ける面接が行われます。

  • 18歳未満:児童相談所
  • 18歳以上:知的障害者更生相談所

申請に必要な書類も自治体によって異なります。
代表的な必要書類は以下のとおりです。

  • 申請書
  • 印鑑
  • 本人確認ができる書類
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)

上記に加え、母子手帳や幼少期の様子が分かる資料の提出を求められる場合もあります。

3.精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳の交付には、初診から6ヶ月以上経過していることが必要です。
初診から日が浅い場合には、6ヶ月以上経ってから申請しましょう。また主治医に診断書を書いてもらったら、3か月以内に書類を提出しなければなりません。
申請の手順は以下のとおりです。

  • 精神科の受診
  • 6ヶ月以上経過後、市区町村窓口で用紙をもらう
  • 主治医に診断書を書いてもらう
  • 診断書作成から3ヶ月以内に、市区町村窓口へ書類を提出する

申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 申請書
  • 診断書
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)
  • 本人確認ができる書類
  • マイナンバーが分かる書類

まとめ―障害者手帳は、あなたと社会をつなぐ架け橋

障害者手帳を持つことには、料金割引や税金優遇などの多くのメリットがあります。
また、障害者雇用制度を利用することで就職の選択肢も広がります。

生活や仕事の幅を広げるために、障害者手帳を検討してみてはいかがでしょうか。世間の目ではなく、自身の幸せを考えて取得を検討することが重要です。

障害者手帳を取得することが、あなたの可能性と選択肢を広げるきっかけとなれば幸いです。

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