障害者雇用の助成金・奨励金と支給条件を一覧で解説

障害者雇用の助成金・奨励金と支給条件を一覧で解説
障害者雇用の助成金・奨励金と支給条件を一覧で解説

障害者雇用を検討する上で「助成金」や「奨励金」の存在は欠かせません。

助成金・奨励金の支給を希望する場合、厚生労働省が定めた要件や基準に沿って雇用状況に応じた適切な申請が必要ですが、障害者を雇用したという事実があれば簡単に支給されるわけではなく、また種類や支給要件も細かく分かれているため、どういった条件でどの助成金・奨励金が支給されるか非常に複雑になっています。

そこでこの記事では、助成金や奨励金を「雇用施設の準備」から「就労実習やトライアル雇用」「雇用の開始」「雇用の継続」という4段階に分け、分かりやすく一覧で解説いたします。

雇用施設の設置・雇用環境の管理に関する助成金・奨励金

障害者作業施設設置等助成金

障害者を労働者として雇用する事業主が、作業をスムーズに行えるように配慮された施設の設置や改築等を行う場合に、その費用の一部が助成されます。

なお、助成金は「第1種作業施設設置等」「第2種作業施設設置等(賃貸)」の2つに分かれています。

■対象事業者
  • 当該施設の設置や改築、賃貸等を行う事業主
  • 上記を行わなければ障害者の受け入れができないと認められる事業主
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 中途障害者
  • それら障害を持つ在宅勤務者
■支給条件
  • 支払対象となる施設であること
  • 設置等する施設が中古物件の購入、賃貸や自社購入、自社内の賃貸の物件ではないこと
  • 設置等が未着手であること(第1種作業施設設置等助成金のみ)
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■支給金額
第1種作業施設設置等助成金 支給対象となる障害者1人につき、施設の設置で450万円、設備の設置で150万円を限度額として、支給対象となる費用の2/3以内
第2種作業施設設置等助成金 支給対象となる障害者1人につき、月13万円、作業設備は月5万円を限度として、支給対象となる費用の2/3以内
■支給期間
第1種作業施設設置等助成金 上限3回まで
第2種作業施設設置等助成金(賃貸) 3年間

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度身体障害者、知的障害者、精神障害者を多数雇用し、継続・安定した雇用ができると認められた事業主でその施設の設置や整備を行う場合に費用の一部が助成されます。

■対象事業者
  • 対象となる障害者を10人以上継続して雇用していること
  • 雇用している労働者のうち、障害者の割合が2/10以上であること
  • 助成金の支給を受けた事業主で、支給決定から5年以上、対象の障害者を雇用すること(設置助成金)
  • 設置等が未着手であること
  • 賃貸以外で支給対象となる施設等の設置や整備を行う事業所
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 重度身体障害者
  • 重度知的障害者
  • 重度精神障害者
■支給条件
  • 支払対象となる施設であること
  • 設置等する施設が中古物件の購入、賃貸や自社購入、自社内の賃貸の物件ではないこと
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■支給金額
設置助成金 限度額5000万円として、施設設置費の2/3以内
利息支払い助成金 事業施設を設置等するために銀行融資を受けた金額の利息分のうち、支給対象の費用の7/30を掛けた額か1750万円のうちの低い方
■支給期間
(利息支払い助成金)5年か5年未満の借入期間以内

就労実習・トライアル雇用に関する助成金・奨励金

職場実習受入謝金

障害者雇用に不安があり、社内理解やノウハウが不足している会社において、障害者の受け入れをするための職場実習を計画し、その実習生となる障害者を受け入れる場合に謝金が支給されます。

■対象事業者
  • 過去3年間に障害者を雇用したことがない事業主
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 職業安定所に登録している障害者
  • 障害者の就労支援や生活支援センターで支援を受けている障害者
  • 過去3年間で実習や就労、適応訓練などを行っていない障害者
■支給条件
  • 実習期間が1週間~1か月で、実習日数が5日から20日以内、1日3時間以上
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■支給金額
職場実習受入謝金 日額5000円(年間50万円以内)
実習指導員の委託費用 支援時間4時間未満で8000円、4時間以上で16000円
保険料 実習生の怪我や事故などのために保険に加入した場合は、その保険料
■支給期間
1年に2回まで

トライアル雇用助成金

早期就職の実現や雇用機会の創出などを目的として、ハローワーク等の紹介で障害者を試行的に一定期間雇用した場合に支給される助成金です。

なお、トライアル雇用助成金は「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」で分かれています。

■対象事業者
  • トライアル雇用を行う障害者を過去3年の間に雇用していないこと
  • 該当の労働者より、ハローワーク等で提示した労働条件と実際の労働条件が違うと申し出がないこと
  • 該当の労働者が事業所の代表者等の3親等以内の親族ではないこと
  • 過去6か月の間に、該当の労働者を事業主都合で解雇していないこと
  • トライアル雇用を実施した後に、実際に雇用しなかった等の労働者の数が一定数を超えていないこと
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
継続雇用かつトライアル雇用を希望している障害者、または以下いずれかに該当する障害者
  • 経験のない職業に就くことを希望している
  • 2年以内に離職・転職が2回以上ある
  • 離職している期間が6か月を超えている
  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
※障害者短時間トライアルコースは、精神障害者・発達障害者のみ
■支給条件
  • ハローワーク等の職業紹介事業者の紹介で雇い入れること
  • 雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
■支給金額
障害者トライアルコース 対象者1人につき月額4万円(精神障害者は雇用から3か月間は月額8万円)
障害者短時間トライアルコース 対象者1人につき月額4万円
■支給期間
トライアル雇用開始から3か月間(精神障害者は最長6か月間)

雇用を開始する際の助成金・奨励金

特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)

中小企業による障害者雇用の促進を目的として、障害者雇用経験がない中小企業が障害者の雇用により法定雇用率を達成した場合に助成金が支給されます。

■対象事業者
  • 雇用する常用労働者数が45.5人~300人の事業主であること
  • 初めて障害者を雇用した日の翌日から起算して3か月の間に、法定雇用障害者雇用率を達成すること
  • 過去3年の間で対象となる労働者について雇用したことがない事業主であること
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
■支給条件
各雇用関係助成金に共通の要件等による支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■支給金額
120万円

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

高年齢者や障害者等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介で労働者を継続して雇用する事業主に対して助成金が支給されます。

■対象事業者
  • 雇用保険の適用事業主であること
  • ハローワーク等の紹介で雇用する事業主であること
  • 対象の労働者を雇用保険の一般被保険者として2年以上(短時間労働者以外の重度障害者は3年以上)継続して雇用すること
  • 対象労働者を雇用した日の前後6か月間で事業主都合での解雇をしていないこと
  • 対象労働者の離職率が一定の割合を超えていないこと
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
■支給条件
  • ハローワーク等の紹介で雇用すること
  • 雇用保険一般被保険者として、継続して雇用することが確実と認められること
  • 対象労働者の出勤状況や賃金支払い等の書類を整備、保管、提出または提示すること
■支給金額
身体・知的障害者の雇用 120万円
重度障害者等 240万円
重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者(短時間労働) 80万円
■支給期間
身体・知的障害者の雇用 2年
重度障害者等 3年
重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者(短時間労働) 1年

安定雇用や継続雇用に関する助成金・奨励金

障害者雇用安定助成金

職場への適応や定着が難しい障害者の援助を行う事業主に対し、助成金が支給されます。

■対象事業者
  • 雇用保険の適用事業主であること
  • その他支給対象外の要件にあたらないこと(不正、暴力団関係など)
■対象となる障害者
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 難治性疾患のある人
  • 高次脳機能障害のある人
  • 上記以外の障害者で、職場適応援助者による支援が必要と認められる人
■支給条件
対象の労働者が職場に適応するために、「高齢・障害・求職者雇用支援機構地域障害者職業センター」が作成する支援計画で必要な支援を、訪問型職場適応援助者か企業在籍型職場適応援助者が行う事で支給対象となります。
■支給金額
≪訪問型職場適応援助者による支援≫
支援計画に基づいて支援を行った日数 × 日額
(日額の規定)
1日の支援時間の合計が4時間以上:16000円(精神障害者は3時間以上で16000円)
1日の支援時間の合計が4時間未満:8000円(精神障害者は3時間未満で8000円)
≪企業在籍型職場適応援助者による支援≫
精神障害者で短時間労働以外 中小企業月額12万円/中小企業以外月額9万円
精神障害者で短時間労働 中小企業月額12万円/中小企業以外月額9万円
精神障害者かつ短時間労働以外 中小企業月額6万円/中小企業以外月額5万円
精神障害者以外かつ短時間労働以外 中小企業月額8万円/中小企業以外月額6万円
精神障害者以外かつ短時間労働 中小企業月額4万円/中小企業以外月額3万円
■支給期間
支援計画に基づく支給対象期間以内

まとめ

障害者雇用に関する助成金や奨励金はまだ他にもありますが、ルールや種類はここではご紹介できないほど多岐にわたっていますので、もし「こんなケースは助成金などを受け取れないのか?」と疑問に思うことがあれば、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に相談した方が良いでしょう。

それは「相談したほうが手っ取り早い」ということではなく、細かなルールに則っていないと助成金の支給要件を満たさないとか、禁止されている事項に抵触する可能性があるためです。

障害者雇用を検討される場合は、以下の高齢・障害・求職者雇用支援機構のウェブサイトなども参考にしつつ、直接相談されることをおすすめします。

【参考】独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
http://www.jeed.or.jp/index.html

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