「発達障害者が受け取れる助成金や補助金はあるのだろうか」
「受給資格や手続きの方法が知りたい」
この記事では、発達障害を抱える当事者やその支援をする方のために、発達障害者が受け取れる手当や助成制度、補助金について解説します。
また、障害年金の概要や受給方法についても解説します。
発達障害をおもちの方が賢く助成金や補助金、手当を受け取るための情報が満載です。ぜひじっくりとお読みください。
「発達障害」に含まれる障害とは
この記事内で解説する支給の対象は「発達障害者」です。
発達障害者支援法においては、「発達障害」は以下のように定義されています。
”自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの”
(出典:厚生労働省「発達障害の理解のために」)
助成金や補助金、手当の受給要件は制度や自治体によって異なりますので、自治体や各省庁から出ているお知らせをよく読むようにしましょう。
発達障害者が受けられる手当・助成制度
発達障害のある方が受けられる手当・助成制度には以下のようなものがあります。
-
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 特別障害者手当
- 自治体独自の手当
一つずつ解説します。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、20歳未満の精神または身体に障害のある子どもを育てる保護者が受けられる手当です。
精神又は身体に障害を有する児童について手当を支給することにより、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的にしています。
支給月額(令和5年4月より適用)は以下の通りです。
1級 53,700円
2級 35,760円
以上の額が、原則として毎年4月、8月、12月に、それぞれの前月分までが支給されます。
1級・2級の目安は以下の通りです。
-
- 1級=療育手帳A・身体障害者手帳1、2級
- 2級=療育手帳B・身体障害者手帳3級または4級の一部
障害者手帳は必須ではなく、取得していなくても特別児童扶養手当の支給対象になる場合があります。お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
この「特別児童扶養手当」には所得制限があります。
受給資格者(障害児の父母等)もしくはその配偶者又は生計を同じくする扶養義務者(同居する父母等の民法に定める者)の前年の所得が一定の額以上であるときは手当は支給されません。
支給手続きは、お住まいの市区町村の窓口へ申請してください。
(参考:厚生労働省「特別児童扶養手当について)
障害児福祉手当
障害児福祉手当は、心身に重度の障害がある在宅の20歳未満で、日常生活において常時介護を必要とする児童に支給されます。
重度障害児に対して、その障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当を支給することにより、特別障害児の福祉の向上を図ることを目的としています。
上記の「特別児童扶養手当」が児童を養育する方への手当なのに対し、こちらの「障害児福祉手当」は障害をもつ本人への手当です。
支給要件は「精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者」です。
支給を受けられる目安は「おおむね身体障害者手帳1級・2級程度、療育手帳のA程度」とされていますが、最終的には自治体が認定するものです。
支給月額(令和5年4月より適用)は15,220円で、原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
特別児童扶養手当と同じく所得制限があります。支給の手続きは、お住まいの市区町村の窓口へ申請してください。
(参考:厚生労働省「障害児福祉手当について」)
特別障害者手当
特別障害者手当は、精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に支給されます。
「精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の方」が対象です。
支給月額(令和5年4月より適用)は27,980円で、原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
特別障害者手当にも所得制限があり、受給資格者(特別障害者)の前年の所得が一定の額を超えるとき、もしくはその配偶者又は受給資格者の生計を維持する扶養義務者(同居する父母等の民法に定める者)の前年の所得が一定の額以上であるときは手当は支給されません。
上述した2つと同じく、この「特別障害者手当」の手続きも、お住まいの市区町村の窓口へ申請する形になります。
(参考:厚生労働省「特別障害者手当について」)
自治体独自の手当
上記の3種類の他、自治体によっては独自の手当制度を設けているところがあります。
以下はその一例です。
東京都重度心身障害者手当…月額60,000円
(参考:東京都福祉局「東京都重度心身障害者手当」)
川崎市特別障害者手当…月額27,980円
(参考:川崎市「特別障害者手当等」)
手当の支給要件や額、受給方法は自治体によって異なります。
お住まいの地域であなたに合った制度があるかもしれませんので、役所の窓口で問い合わせてみましょう。
発達障害者が受けられる控除・補助
国や自治体からの手当以外に発達障害者が受けられるものとして、控除・補助や共済制度などがあります。
-
- 障害者控除
- 障害者扶養共済制度
- 自立支援医療制度
詳しく解説します。
障害者控除
「障害者控除」は税金に関する控除です。
納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。
所得税控除の金額は以下の通りです。
-
- 障害者…27万円
- 特別障害者…40万円
- 同居特別障害者(※)…75万円
(※)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。
所得税の計算の際、16歳未満の扶養親族がいても所得控除はされません。
しかし障害者控除は、扶養親族が16歳未満の場合でも適用されます。
(参考:国税庁「障害者控除」)
住民税についても同様に控除があります。
所得税の障害者控除を適用して確定申告をすれば、住民税については自動的に適用されます。住民税の控除額は以下の通りです。
-
- 障害者…26万円
- 特別障害者…30万円
- 同居特別障害者…56万円
また、相続税についても控除があります。
相続人が障害者であるときは、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者のときは20万円)が、障害者控除として相続税額から差し引かれます。
(参考:国税庁「障害者と税」)
障害者扶養共済制度
「障害者扶養共済制度」は、障害者の保護者が毎月掛金を納めることで、保護者の万が一の際、障害のある方に対し一定額の年金を一生涯支給するというものです。
(参考:厚生労働省「障害者扶養共済制度」)
障害者扶養共済制度は、都道府県・指定都市が実施している任意加入の制度です。
加入者が別の自治体に引越した場合も、転出先の自治体で手続きをすることで加入期間を通算できる全国共通の制度となっています。
自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、障害の治療における医療費の自己負担を少なくする制度です。
通常、医療費は原則3割負担となっています。しかし自立支援医療制度を利用することで、原則1割の負担で済むようになります。
自立支援医療制度には、以下の3種類があります。
-
- 精神通院医療(精神疾患のある方)
- 更生医療(身体障害のある方)
- 育成医療(身体障害のある子ども)
こちらの制度を利用する場合、所得によって自己負担の上限額が異なります。
また、自立支援医療制度を利用する場合の必要書類は 自治体によって異なります。
各自治体の申請窓口や、お住まいの地域の精神保健福祉センターに問い合わせてみるとよいでしょう。
(参考:厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」)
発達障害者の障害年金
発達障害のある方にとってもうひとつ大事なのが「障害年金」です。
ここでは、障害年金の概要や受け取り方法について解説します。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代も含めて受け取ることができる年金です。
「先天的な障害は適用外なのでは」と思うかもしれませんが、そうではありません。発達障害など20歳前に発症する障害でも、支給の要件を満たすと判定されれば受給が可能です。
また、「年金」と聞くと「高齢になってから受給するもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし障害年金は、原則として20歳から65歳になるまで(65歳の誕生日の2日前まで)請求できるものであり、若い方でも受給要件を満たしていれば受け取ることができます。
障害者手帳の有無や、働いているかどうかも関係がありません。
したがって、「障害者手帳を持たずに」「現役で働いていても」要件に合っていれば受け取ることができる年金です。
障害年金には以下の2種類があります。
-
- 障害基礎年金…病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合や、診断を受けた初診日が20歳前(年金制度に加入していない期間)であった場合
- 障害厚生年金…病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに厚生年金に加入していた場合
障害年金を受け取るには、本人または代理人による年金の支給申請の手続きが必要です。
障害年金の審査は書類のみで行われ、申請する人の状況や障害年金の種類によって必要書類は異なります。
日本年金機構の「ねんきんダイヤル」(ナビダイヤル0570-05-1165)に問い合わせたり、年金事務所や年金相談センターなどで相談してみましょう。
(参考:厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方]第12 障害年金」)
まとめ
発達障害の方が受けられる助成金・補助金や手当て、障害年金について解説しました。
一般に「障害が軽度の場合は受給できないのでは」と思われがちな制度も、調べてみると発達障害者が対象になっているものが数多くあります。
ここで紹介した制度の他にも、障害者手帳を取得することで受けられるサービスや補助もあります。
詳しくはこちらの記事をお読みください。
障害者手帳のメリットとデメリットを徹底比較!申請方法は?国や自治体の制度を賢く利用することで、さまざまなサポートを受けることができます。
普段からアンテナをはり、気になった制度については自治体の窓口で問い合わせてみましょう。
執筆者プロフィール