【管理職必見】発達障害者・精神障害者をマネジメントする方法

【管理職必見】発達障害者・精神障害者をマネジメントする方法

「障害のある方を雇用しているが、指示や注意がうまく伝わらずスムーズに仕事に取り組めないようだ」
「他の従業員の理解が得られずトラブルが起こりがち。どうすればいいのだろう」

障害者雇用の現場で、発達障害者や精神障害者の方のマネジメントがうまくいかない……。
そんなお悩みを抱えていませんか。

この記事では、障害者雇用において障害者をより良くマネジメントするための5つの方法をお伝えします。

この記事を読んでいただくことで、以下のようなメリットがあります。

  • 障害のある従業員に効果的に接するヒントが分かる
  • 障害者雇用に起こりがちなトラブルを未然に防ぐことができる
  • 障害者雇用のノウハウが分かり、業務をスムーズに進めることができる

採用から業務、評価までを網羅してお伝えします。
ぜひ最後までお読みください。

障害者雇用の現場で起こりがちな問題と原因

「障害のある方をうまくマネジメントできていない」
そのような課題意識をもっている管理職のあなたは、問題の中身と原因を言語化できているでしょうか。

ここでは、「採用」「業務」「評価」の3つのフェーズに分けて、トラブルの中身と原因を解説します。
いずれも、このあと解説する「マネジメントの方法」と深い関連があります。

1.採用時の問題

採用時に考えられるトラブルは、「ミスマッチ」です。企業側が求める人物像と応募者の実態を十分にすり合わせないまま採用してしまう。
その結果、業務開始後にトラブルが起きてしまうことがあります。

ミスマッチの具体的な内容は以下のとおりです。

  • 応募者のスキルや能力を正当に評価できておらず、求める人物像とは異なる人を採用してしまう
  • 勤務時間や休暇、給与などの条件を双方が納得いくまですり合わせないまま採用してしまう
  • 配慮すべき事項を把握しないまま採用してしまう

これらの問題があると、いざ業務を始めるという段階になってから問題が起きてしまうので要注意です。

2.業務上の問題

障害のある方が業務に取り組む上で起こりがちな問題には、以下のようなものがあります。

  • 本人の能力やスキルが業務内容に適しておらず、業務の遂行が難しかったり、逆に物足りなさを感じたりしてしまう
  • 心や身体の繊細さ、不安定さに対応できず、人間関係のトラブルや欠勤、離職につながってしまう
  • 指示や注意が本人にうまく伝わらず誤解や混乱を招いてしまう

いずれも深刻な問題です。
これらの問題の原因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 上司や同僚の障害理解が不十分である
  • 本人が業務内容や注意事項を正しく理解できていない
  • 上司や同僚と本人のコミュニケーションが不足している
  • 特性に応じた対応ができないことで誤解を招き、本人が混乱したり感情を害したりしてしまう

裏を返せば、以上の原因を取り除くだけで解決できる問題も多いということです。

3.評価時における問題

評価時には、以下のような問題が起こる場合があります。

  • 業務が遂行できない場合に、その理由(能力不足?甘え?疲れによるパフォーマンス低下?)を正しく把握できず、正当な評価ができない
  • 本人の自己評価と上司からの評価にズレが生じ、給与や昇進に反映されないため、不満やモチベーション低下につながる
  • 反対に周囲が「障害があるからといって評価が甘すぎるのでは」と感じ、人間関係のトラブルに発展する

これらは「障害理解が不十分」「障害者雇用独自の人事評価システムが構築されていない」という原因から起こります。

障害者をマネジメントする5つの方法

では、どうすれば障害のある方をより良くマネジメントできるのでしょうか。

方法としては以下の5つが挙げられます。

1.採用時のマッチング
2.周囲の障害理解
3.ゴールの共有
4.業務の選定と切り出し
5.ノウハウとルールの明文化

一つずつ見ていきましょう。

1.採用時のマッチング

採用時には、入念にマッチングを行いましょう。求人をかける際には、採用したい人物像を明確にします。

  • 業務の具体的な内容・難易度はどれくらいか
  • 知的な水準や手先の器用さはどの程度のレベルが必要か
  • 職場の特性上、注意しなければならないのはどんなことか

これらを、求人をかける段階で明確に伝えなければなりません。応募する当事者はもちろんのこと、ハローワークや就労支援の担当者にもしっかりと伝えるようにしましょう。

その上で、応募してきた方とのすり合わせを行います。その方の障害の程度や特性、配慮してほしいことを細かく聞き取りましょう。
また、企業として取り組んでほしい業務内容や心がけてほしいことも採用活動の段階で伝えるようにします。そのプロセスを丁寧に行うことにより、ミスマッチを防ぐことができます。必要に応じてトライアル雇用を活用することも検討しましょう。

2.周囲の障害理解

採用が決まり業務が始まる際には、その方が抱えている障害や特性、配慮事項をできるだけ詳しく聞き、理解するように努めます。

障害や特性によって配慮すべきことは全く異なるからです。

  • 他者とのコミュニケーションに苦手さがある場合→対人業務を割り振る際は入念にサポートする
  • 手先がうまく使えない場合→細かい作業はできるだけ避ける。どうしても取り組んでいただく場合はツールを使ったり、スモールステップで取り組めるようにする
  • 疲れやすい場合→こまめに休憩が取れるように配慮する

以上のようなサポートはすべて、障害理解があってはじめて可能になるものです。

障害理解を深めるにはどうすれば良いのでしょうか。まず、採用時に本人だけでなく支援者からも詳しく聞き取りを行いましょう。
また採用後には定期的に面談の機会をもち、困っていることなどをヒアリングすることが大事です。

また、本人の情報は限られた担当者だけでなく、できる限り職場で一緒に働く人達で共有するようにしましょう。一人でも多くの人に理解してもらうことで、業務は一気にスムーズになります。

3.ゴールの共有

障害のある方が働く場合、「どこにゴールを設定するか」はとても大事です。成果を上げ昇給や昇格をめざす場合と、まずは安定的に通えることをめざす場合では、サポートの仕方は全く違ったものになります。
また、1年、半年、3ヶ月の目標も可能な範囲で本人と担当者で話し合えると良いでしょう。これらの「ゴール」は、本人はもちろん、一緒に働く上司や同僚も理解しておくようにするのがおすすめです。ゴールが共有できていないと、本人の能力を大きく超える要求をしてしまったり、反対に物足りなさを感じさせてしまったりすることがあるからです。

4.業務の選定と切り出し

働く方の障害や特性に合った業務を選んで配置することを「業務の切り出し」といいます。これがうまくいっていないと、苦手なことに従事させる結果になってしまいます。サポートに多大な時間と労力を割かれるだけでなく、トラブルや離職にもつながりかねません。
反対に業務の切り出しが適切であれば、障害のある方であっても自分の強みを活かして活躍することができます。

具体的には次のような例があります。

  • ASD(自閉スペクトラム症)など、対人コミュニケーションに困難があるが、手先は器用な方…一人で黙々と取り組める環境で細かい作業を割り振る
  • 不器用さがあるが言語でのコミュニケーションには問題がない方…電話での対応業務や窓口業務などの対人業務を割り振る

適切な業務の選定と切り出しによって障害者本人は生き生きと働くことができます。
また周囲も、サポートやトラブル対応に過度な負担を強いられずに済みます。つまり業務の切り出しがうまくいくと、誰にとってもメリットが大きいのです。

5.ノウハウとルールの明文化

最後に、ノウハウやルールは誰が見ても分かるように明文化し、ストックしていくようにしましょう。「担当者によって対応が違う」「年度が変わるとサポート体制も変わってしまう」ということがあると、障害者のサポートはうまくいきません。

特に明文化が必要なのは、「合理的配慮の仕方」と「人事評価システム」です。合理的配慮とは、障害者が健常者と共に働いたり生活したりする上で生じる困難を取り除くためのさまざまな配慮のことです。

「指示は口頭だけでなく文や図を用いて視覚的に行う」
「過集中による疲労を防ぐため、仕事中はタイマーを使用する」
「季節の変わり目は体調を崩しやすいので、スケジュールに余裕をもたせる」

など、個々のニーズに合ったサポートがあるはずです。
これらを担当者の経験則だけで行うのではなくマニュアル化することで、ノウハウが蓄積されます。担当者が代わったり人事異動が行われたりしても影響が少なく済み、障害のある方が安定して働き続けることにつながります。
人事評価システムも担当者個人の判断に任せるのではなく、企業として決まったルール・プロセスのもと行えるように構築しましょう。一気に作り上げようとすると負担が大きいので、複数の担当者で情報共有しながら、あなたの職場に合ったものを少しずつ作っていくのがおすすめです。

まとめ―障害理解と合理的配慮がカギ

発達障害・精神障害がある方が安定したパフォーマンスを発揮して働きつづけるためには、上司や担当者のマネジメントが欠かせません。

その方法としては以下の5つが挙げられます。

1.採用時のマッチング
2.周囲の障害理解
3.ゴールの共有
4.業務の選定と切り出し
5.ノウハウとルールの明文化

カギとなるのは「障害理解」と「合理的配慮」です。
障害のある方も健常な方も、お互いに気持ちよく働き続けることができるよう、マネジメント力を磨いていきましょう。

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