ユニクロやメルカリなど企業事例から学ぶ!障害者雇用の先進的取り組み

ユニクロやメルカリなど企業事例から学ぶ!障害者雇用の先進的取り組み


障害者雇用を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。法定雇用率の達成を目的とした従来の雇用から、企業の成長戦略に組み込まれた戦略的な取り組みへと、その位置づけは進化を続けているのです。
本記事では、テレワークを活用した先進的な取り組みや小売業界における特徴的な事例、そして包括的な支援体制の構築から今後の展望まで、新しい時代の障害者雇用のあり方を紹介します。

先進企業の具体的事例


障害者雇用は近年、大きな転換期を迎えています。かつては法定雇用率の達成が主な目的とされていましたが、今や企業の成長戦略や価値創造の重要な要素として認識されるようになってきました。
特に注目すべきは、テクノロジーの進化による働き方の多様化と、業界特性を活かした独自の取り組みです。先進企業の事例からは、障害者雇用の新しい可能性が見えてきています。
ここでは、テレワークを活用した新しい雇用形態と、小売業界における特徴的な取り組みについて紹介します。

1.テレワークを活用した障害者雇用

テクノロジーの進歩により、障害者雇用の形態は大きく変化しています。特にテレワークの導入は、移動が困難な方々に新たな就労機会を提供し、より柔軟な働き方を実現しています。

SmartHRでは障害者雇用を法定雇用率の達成だけでなく、プロダクトの品質向上につなげているのが特徴的です。障害を持つ社員の視点を活かしてアクセシビリティの向上に直接貢献することで、事業価値の創出を実現しています。

マネーフォワードは週4日のテレワーク体制を導入しながら、朝礼や日報の活用、先輩社員による指導など、きめ細かいサポート体制を整備しています。オンラインでのコミュニケーションを積極的に活用して、社員の孤立を防ぎながら効果的な業務管理を実現しました。

メルカリでは、障害を持つ社員の可能性を最大限に引き出すことを重視し、業務のフォーマット化により、より多くの方がチャレンジできる環境を整備しています。継続的な成長機会の提供により、社内でのキャリア発展を支援し、障害を持つ社員の活躍の場を広げています。

以上の事例が示すように、テレワークを活用した障害者雇用は、単なる就労支援にとどまらず、企業の価値創造や組織の多様性向上にも大きく貢献しているのです。適切な支援体制と成長機会の提供により、障害を持つ方々が自身の能力を最大限に発揮できる環境づくりが着実に進められています。

2.小売業界における障害者雇用

小売業界は、障害者雇用において先進的な取り組みを展開している業界の一つです。特に大手小売企業では、店舗運営の特性を活かした独自の雇用施策を実施し、継続的な雇用を実現しています。

代表的な事例として、ユニクロでは2001年より「1店舗1名以上」という明確な目標を掲げ、障害者雇用を積極的に推進してきました。その結果、2012年以降は全国のおよそ9割の店舗で障害者雇用を実現し、従業員数1万人以上の企業の中で9年連続で障害者雇用率日本一を達成しています。また、障害者の能力を最大限に引き出すため、店長や社員向けの専門研修を実施し、相互理解と尊重に基づく職場環境の構築に努めています。

良品計画は2000年に障害者雇用を開始し、2009年には「ハートプロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトでは、一人ひとりの能力や特性に合わせた雇用管理や指導を行い、評価によるステップアップ制度を構築しています。特徴的な点として、障害の特性に応じて勤務時間を柔軟に調整できる制度を設けており、体調管理のための日誌記録など、きめ細かなサポート体制を整えています。

イオンリテールでは、クオリティキーパーや販売促進、商品管理、事務など、さまざまな部署での障害者雇用を実現させました。特徴的なのは、将来的な正社員登用の道を開いていることです。さらに、特例子会社「アビリティーズジャスコ株式会社」を通じて、就労移行支援事業や就労定着支援事業も展開し、就職後のアフターフォローまで一貫したサポート体制を構築しています。

このように、小売業界における障害者雇用は、単なる法定雇用率の達成にとどまりません。障害者の特性や能力を活かした職域開発や、きめ細かな支援体制の確立、キャリア形成支援まで、包括的な取り組みへと発展しています。

包括的な支援体制の構築


障害者雇用を効果的に推進するには、企業内外の包括的な支援体制の構築が不可欠です。

先進企業の事例を見ると、まず社内体制として精神保健福祉士の配置やカウンセリング体制の整備、専門家による定期的な勉強会の実施などが行われています。特にダイキンサンライズ摂津では、総務とカウンセリングを兼務する精神保健福祉士を配置し、個別の相談体制を確立して、きめ細かなサポートを実現しています。

また、シダックスオフィスパートナーのように、全国に定着支援員を配置し、「こころの相談室」を設置して日常的なケアを行う企業も増えてきました。「健康ノート」を活用した健康管理や定期的な面談による状況確認など、重層的なサポート体制を構築することで、長期的な雇用の安定化を図っています。

外部機関との連携も重要です。ハローワークや地域支援機関との継続的な協力関係を築き、就労移行支援事業所やジョブコーチ支援を活用することで、より専門的なサポートを得られます。

このような包括的な支援体制が、障害者雇用の成功を支える土台となっているのです。

企業文化と障害者雇用の融合


障害者雇用を真に成功させるためには、それを単なる法定雇用率達成の手段としてではなく、企業文化と融合させることが重要です。

ダイキンサンライズ摂津では、個々の能力に応じて管理職への登用を積極的に行い、部長や課長に昇進する社員も出てきています。また、全社員による資格取得支援を実施することで、作業効率が2倍に向上するなど、目覚ましい成果を上げました。
職場環境の面では、障害特性に応じた柔軟な業務配分や作業手順のマニュアル化、効果的なコミュニケーション方法の工夫など、きめ細かな配慮が行われています。これらの取り組みは、障害のある社員の働きやすさを向上させるだけでなく、組織全体の業務効率化にもつながっているのです。

また、社内研修による理解促進や情報共有の活発化により、職場全体で障害者雇用をサポートする文化が醸成されています。

企業文化と障害者雇用を有機的に結びつけることで、より効果的で持続可能な雇用が実現できているのです。

今後の展望と課題


障害者雇用は着実に進展していますが、さらなる発展に向けては新たな課題も見えてきています。特に注目すべきは雇用形態の多様化です。テレワークの活用拡大や短時間勤務制度の整備により、より多くの障害者が自身の状況に合わせて働けるようになってきています。また、地方在住者の雇用機会創出も重要な課題です。

業務開発の面では、障害特性を活かした新規業務の創出が求められています。SmartHRの事例のように、障害特性をプロダクトの品質向上に活かすなど、付加価値の高い業務への移行も進んでいます。特に、デジタル化の進展に伴い、新たな職域の開拓も期待されているのです。

長期的なキャリアパスの構築や評価制度の整備、支援体制の継続的な改善など、持続可能な雇用システムの確立も重要な課題です。これらの課題に取り組むことで、障害者雇用はより一層充実したものとなり、だれもが活躍できる社会の実現に近づきます。

まとめ

企業における障害者雇用は、法的義務の達成という段階を超えて、企業価値の向上や組織の多様性確保という新たなステージに入っています。テレワークの活用による柔軟な働き方の実現、小売業界における独自の雇用施策、包括的な支援体制の構築など、各企業は創意工夫を重ねながら障害者雇用を進化させています。

特に注目すべきは、障害特性を企業の強みとして活かす取り組みです。SmartHRのアクセシビリティ向上への取り組みや、ユニクロの店舗運営における障害者雇用の成功例は、障害者雇用が企業の競争力強化にもつながることを示しています。

今後は、テクノロジーの進化とともに、さらなる雇用形態の多様化や職域の拡大が期待されます。同時に、キャリアパスの構築や評価制度の整備など、持続可能な雇用システムの確立も重要な課題となっています。

これらの課題に取り組みながら、誰もが自身の能力を最大限に発揮できる職場づくりを進めることが、これからの障害者雇用の目指すべき方向性といえるでしょう。

【出典・参考文献一覧】
オリィ研究所「テレワーク×障害者雇用支援サービス「FLEMEE」スタートアップ3社の企業事例記事を公開」
デライトジョブ「障害者雇用を実践する企業の事例を紹介!具体例から成功のポイントを学ぼう」
チャレンジラボ「中小企業による障害者雇用 6つのポイントと事例紹介」

執筆者プロフィール

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