近年、日本でもLGBTQやノンバイナリーについての話題が活発になっています。先日はAAAのメンバー與真司郎さんがゲイを告白して注目を集めました。メディアでも連日同性婚や芸能人のLGBTQに対する考え方や告白が取り上げられ、ジェンダーについて触れる機会も増えてきており、さまざまな考え方が問われる時代です。
ノンバイナリーについては、2021年6月にアーティストの宇多田ヒカルさんが、自身がノンバイナリーであることを明かし、注目されるきっかけの1つになりました。今回の記事では、まずLGBTQとノンバイナリーについて詳しく解説しながら、「ノンバイナリー枠」を用意しているスポーツイベントの事例を紹介していきたいと思います。
LGBTQとは
LGBTQという言葉を聞いたことがあるでしょうか。LGBTQとはLGBTに加え、次に説明するQ(クィア/クエスチョニング)というマイノリティーを加えた考え方です。
1.Q(クィア/クエスチョニング)という考え方
Q(クィア/クエスチョニング)は性的指向や性自認が定まっていない、または意図的に定めていないセクシャリティを示します。
LGBTQコミュニティの内外でよく使われるワードと意味
先にLGBTQについて解説しましたが、その言葉とアイデンティティーについてそれぞれに理解を持つことが重要です。
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- レズビアン(Lesbian):女性にひかれる女性。
- ゲイ(Gay):男性にひかれる男性。
- バイセクシャル(Bisexual):複数のジェンダーに魅力を感じる人。
- トランスジェンダー (Transgender):出生時に割り当てられた性別とは異なるアイデンティティを持つ人。
- シスジェンダー(Cisgender):出生時に割り当てられた性別に従って生きる人。
- インターセックス(Intersex):生まれながらに、典型的な「男性」「女性」に分類できない生殖構造や性的仕組みを持つ人、もしくは染色体のパターンを持つ人、そしてその両方を持つ人。
- パンセクシャル(Pansexual):全てのジェンダーに惹かれる人。
- アセクシャル(Asexual):他者に対して性的な魅力を感じない、本質的に性的欲求を感じない人。
ノンバイナリーとは
では次に、ノンバイナリーについて解説します。ノンバイナリーは性自認と性表現を表すセクシャリティのため、性的指向や身体的な性別は問いません。
1.ノンバイナリーという考え方
性自認が男性でも女性でもない人、または男性と女性が混ざり合っている人を示します。
2.ノンバイナリーとクィアの違いとは
「ノンバイナリー」は性表現を「男性・女性」という二つの枠組みに当てはめず、自分の性別を定義していません。「クィア」は性自認・性的指向の2つが定まっていない、あえて決めていない状態です。異性愛者、または、生まれたときの性と自身の性自認が一致している以外のすべての性的マイノリティを指す点で違いがあります。
「ノンバイナリー」が広がる世界
これまで、仕事や日常の暮らし、スポーツ競技などあらゆる世界で「男性女性」と区別してきましたが、それに当てはめることがない、ジェンダーの枠にとらわれないインクルージョンを推進するイベントも増えてきました。特にスポーツ競技において、2022年に開催された北京オリンピックにおいて、フィギュアスケートのペア競技に出場したアメリカのティモシー・ルデュク選手が、自認する性が男性と女性の枠にとらわれない「ノンバイナリー」であることを公表。オリンピックという最大の国際大会での公表はジェンダーの考え方について一石を投じるものでした。また、公の場でジェンダーの課題について触れるという面でも、発言する側、受け取る側ともに、ジェンダーについて考える良い機会を与えられたと言っても過言ではありません。ここではノンバイナリーの考えに基づいたイベントの事例を3つご紹介します。
1.ボストンマラソン
米国マサチューセッツ州で行われているボストンマラソンは、1897年に創始され、近代オリンピックに次いで歴史の古いスポーツ大会です。この歴史のある大会において、2023年から「ノンバイナリー」のカテゴリーが設けられることになりました。申し込み際に、男女のほか、「ノンバイナリー」を選択できます。ボストン・マラソンを主催するボストン・アスレチック協会は「全ての主催イベントでインクルージョンをさらに推進するため、ノンバイナリーのアスリートと話し合いを続けている」とコメントしています。
これまで競技は、男女の身体の物理的な個体差から生まれる身体能力の差などを考慮して別にエントリー競技を行っていました。現時点では、ノンバイナリーに関しては十分なデータがそろっていないため、現段階では女子のタイムが基準になります。しかし、主催者は「今後のレースに向け、ノンバイナリーのタイムは適宜更新される」としています。このような歴史のある大会が取り組みを行うことで、そのほかの大会に影響力が高まることが予想されます。
*【#歴史】「1967年のボストンマラソン」
… 男たちが初めの女性参加者のキャサリン・シュヴィツァーさんの行路を妨害している。
1960年代まで、アメリカでは女性差別、黒人差別が公然と行われていた。 pic.twitter.com/VNjWibASLu
— Hiroshi Matsuura (@HiroshiMatsuur2) July 21, 2023
2.当別スウェーデンマラソン2023
2018年にスタートした「当別スウェーデンマラソン」は、北海道石狩郡当別町で行われるハーフマラソンチャレンジカップです。2023年のエントリーから、ハーフマラソンのエントリーにおいて新たに「ノンバイナリー枠」を設置。ジェンダーフリーに誰もが輝ける場となることを願い、未来のために取り組んでいます。ノンバイナリー枠の設置により、男性・女性という性別にとらわれないエントリーが可能となります。性のあり方は多様であり、はっきりと分けられるものではないという考え方に基づいています。その豊かさを感じるとともに、すべてのランナーが自身の性のあり方に関わらず“自分”であることを誇れる大会づくりが進められています。
『当別スウェーデンマラソン2023』ハーフマラソンのエントリーにおいて、新たに「ノンバイナリー枠」を設置[10月22日・北海道] https://t.co/X4ODcCmxFi
— LChannel (@lchannel_) July 26, 2023
3.世田谷246ハーフマラソン
東京都の世田谷区スポーツ振興財団が主催する第18回 世田谷246ハーフマラソン。駒沢オリンピック公園で行われるマラソン大会で国内の中でも大規模な大会です。LGBTQなどに関する課題に取り組んでいる区議が、男女のどちらでもない枠の創設を求めたことに対し、2023年3月より「性別が男女どちらでもないと自認する人のための新たな選手枠」の検討が始まりました。そして、11月に行われる大会でハーフマラソンの部門に「オープン参加」という参加枠ができました。部門の説明として「性別・年齢による出場枠を望まない方や順位を競うことを望まない方」としており、部門別の順位付けは行わないため、入賞者の選定と表彰は行わないとしています。
\\✨ Information✨ //
第18回 世田谷246ハーフマラソン
2023年11月12日(日) 開催決定!世田谷246オンラインハーフマラソン
2023年11月4日(土)~11日(土) 開催決定!
『いま、あけゆく、つぎのみらい。』
🌐:https://t.co/EA1pxFGfBc
#setagaya246 pic.twitter.com/F0YxwgJFoo— 世田谷246ハーフマラソン (@setagaya246half) June 25, 2023
4.ロケットマラソン2023(東京・大阪)
ロケットマラソンは東京と大阪で開催されます。東大阪市の町工場が人工衛星を打ち上げることに成功したことになぞらえ「ロケットマラソン」と命名されました。革新的なチャレンジを、スポーツの世界で起こしたいという考えのもと開催され、参加費の一部は「ロケット」事業の発展のために寄付されます。2023年より、多種多様な人がスポーツに参加しやすくなり、心身の健康増進につながることを促すためノンバナリー部門の新設。更衣室、トイレなど、個室もしくは個別ブースが用意されていたり、ニックネームでの登録が可能です。また、各距離別成績優秀賞、年代別成績優秀賞の表彰が行われるなど、参加者に細かな配慮がなされた大会となっています。
大阪大会アンバサダー就任記念🎊#ロケットマラソン2023
10/21(土)10/22(日)#プレゼント
出走権 5名様当たります
→フル、30km、ハーフ、10km、5km、2km
【応募期間】
7/26(水)〜8/3(水)21時まで
【応募方法】
フォロー&本投稿をリツイート
【当選発表】
抽選結果→DM(8/17まで)#スポーツワン pic.twitter.com/5IXhvmmYwq— カンレキング@【公式】KANREKING日本縦断還暦マラソン2038 (@kanreking60) July 26, 2023
インクルージョンの広がり
今回は、ノンバイナリーについて、イベントも含め詳しく解説しました。これまで、自身のジェンダーについて違和感を感じていた人や、男性・女性という枠があることに疑問を感じていた人、その違和感を隠しながら生きる道を選んだ人もいることでしょう。特にスポーツ、競技の世界ではノンバイナリーから程遠い世界で戦う人もいます。しかし、そのような世界、発言に影響力を持つ人々がLGBTQ、ノンバイナリーについて発信をすることでインクルージョン(多様な人々が互いに個性を認め一体感を持って働いている状態)が広がっていくことでしょう。
執筆者プロフィール
WEBライター、キャリアアドバイザー、各種試験講師、研修講師
副業系、投資、キャリア、金融、経営、ライフデザイン、中学高校大学受験における各教科の勉強法、各種資格試験の勉強法などの執筆経験があります。執筆活動の他にも、翻訳や校正経験もございます。