療育について徹底解説。集団療育と個別療育はどっちがいいの?

療育について徹底解説。集団療育と個別療育はどっちがいいの?

療育って何?

療育とは、障がい児やその可能性のある児童に対して、現在の生活で困っていることを解消するとともに将来の社会適応を目指して発達を援助する取りくみのことです。それぞれの児の発達段階や特性に合った支援を行います。

元は身体障がいのある児童への「治療」と「教育」を複合的に行うことを「療育」と呼んでいましたが、現在は障がい児の発達を支援するアプローチの総称として用いられています。

児童発達支援と放課後等デイサービスの違い

療育には「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」があります。両者の違いは対象とする年齢です。未就学児は「児童発達支援」の制度を使い、就学児(小学生、中学生、高校生)は「放課後等デイサービス」の制度を使います。未就学児には挨拶や受け答えができるようにといった生活の基礎的なところを中心にアプローチを行います。年齢が上がってくると学習支援をすることが多くなりますが、提供しているサービスに大きく違うところはありません。

ただし、放課後等デイサービスは「就学」が条件になります。高校に進学しなかった場合や、高校を中退した場合は、就学していないので、利用するサービスは児童発達支援です。また高校を卒業延期になったり、不登校となっている場合でも、20歳までは放課後等デイサービスを利用します。

また、児童発達支援は令和元年10月から利用者負担が無償化されました。満3歳になって初めての4月1日から3年間は無償でサービスを受けられます。ご活用ください。

いつから通わせるべき?始めるタイミング

療育施設を利用するのには抵抗がある、という親御さんも多いでしょう。できれば使わずに様子を見たい、という気持ちもありますよね。しかし、集団生活に入り、一斉指示が聞けない、離席してしまう、お友達と上手くいかないなどの体験をする前に、なるべく早く療育施設の利用を検討することをことをおすすめします。例えば、発達障害のあるお子様が自分の特性を知らずに成長するとしましょう。周囲の理解のないままに、園や学校生活でトラブルを起こし、叱られたり非難されたりすることが予想できます。上手く行かない経験をする前にサポートすることで、自信を無くすことを防げるでしょう。

早くから専門家のサポートが入ることで不登校やうつなどの二次障害を防ぐことにも繋がるといわれています。ぜひ、早めに相談し、適切な支援を受けましょう。

集団療育と個別療育はどっちがいいの?

療育は「集団療育」と「個別療育」に分かれます。

集団療育はグループでの活動を通して、集団でのルールやソーシャルスキルを獲得することがねらいです。グループ内で行動する力や他児との関わり、感情コントロールなど、保育園や学校など集団生活に欠かせない社会性やコミュニケーション力を培うことを目指します。他の子どもと協力して物事を進めていくことや、自分の意見を伝える練習を行う場です。プログラム内容は、サッカーをはじめとするスポーツや農作業、動物の飼育、お料理など、それぞれのデイサービスによって特色があります。お子様が楽しく通えるプログラムがある事業所がいいですね。

対して、個別療育とはスタッフと1対1で行う療育です。プログラムの内容は対象児の障がいや年齢によって個別にカスタマイズされます。例えば、幼稚園生活で先生の話を聞くことができずに立ち歩いてしまうといった悩みがあったとしましょう。どのタイミングで立ち上がろうとするのか、どうすれば集中して先生のお話を聞くことができるかを分析します。その上で、座って聞くために必要な指示の方法を考えたり、アドバイスを行います。

小学生になると学習につまずく児が多くなってきます。聞き取りができていないのか、読み取りができないのか、集中力がないのか、鉛筆を上手く扱えないのかなど、あらゆる角度から考察します。何処に問題があるのかを個別に分析しながら解決していくのが、個別療育の特徴です。

1.集団療育のメリット、デメリット

集団療育のメリット・デメリットは以下の通りです。

集団療育のメリット

  • 順番を守る、周りに迷惑をかけないなど、集団行動に必要な技能が身に付きやすい
  • 大人のサポートを受けながら、ソーシャルスキル・コミュニケーションスキルを学べる
  • 同年代の子どもたちの刺激を受けて、良いところをマネできる
  • 学校や園とは別の安心できる所属先となる
  • 学校や自宅への送迎サービスを行っている事業所が多い

集団療育のデメリット

  • プログラムが決まっているので、気分や体調によって参加が出来ずに終わることもある
  • 他児の行動によって疲れたり不安になる児にはストレスになる
  • 集団に所属することが苦手な児童は、その苦手意識がより強くなってしまうこともある。

2.個別療育のメリットデメリット

個別療育のメリット・デメリットは以下の通りです。

個別療育のメリット

  • 当日の体調や気分に応じて臨機応変に内容を変更できる
  • 細やかな評価に基づき、苦手な部分の底上げや得意な部分を伸ばす取り組みを行うので、力を伸ばしやすい
  • 苦手なプログラムにもレベル感を合わせて取り組め、成功体験を積みやすい
  • スタッフとの信頼関係が結びやすい
  • 個別に時間が確保されているので保護者やスタッフとの情報共有がしやすい

個別療育のデメリット

  • 集団時のルールや対人スキルを学ぶ機会が減る
  • 周りの児童からの刺激を得ることが減る
  • 個別療育の事業所が少ない
  • 療育時間は1時間程度と短い

上記のようなことを踏まえて、お子様とご家庭に合った療育を考えてください。もちろん、施設や病院、市町村の窓口に相談されるのも良いでしょう。

療育の効果ってあるの?

療育では、障がいのある児童や発達に偏りのある児童を対象として、特性に合わせた関わりを行うことを大切にしています。子どもが本来持っている力を引き出し、自己肯定感を保って社会生活を送れるようサポートします。
療育は、劇的な効果があるというわけではなく、長期に渡って対象児の成長を促すものです。数週間で苦手なものを克服できるようにはならないかもしれませんが、スモールステップで目標を設定しクリアしていくことを目指します。小さな目標を達成することで、苦手なことがひとつずつ解消されます。療育での「できた!」という経験は、時間はかかりながらも確実に積みあがり、本人の感じる「生きづらさ」を緩和できるでしょう。

「療育」と「発達支援」の違い

対象児をサポートする取り組みとして、「発達支援」ということばも「療育」とほぼ同じ意味で用いられます。厳密に言うと、発達支援とは療育の概念を包括したもので、障がい児本人はもちろん、その家族、保育所や学校などの関係機関への支援を含めたものです。ですので、児童発達支援施設では「家族支援」も行います。療育施設は保護者が障がいや発達について相談できる身近な専門機関です。進学や就職などのお悩みも本人やご家族と一緒に考えます。

療育を受けている間、保護者が休養をとったり家事を済ませられるなど、お子様から離れる時間を提供することも、施設に求められている「家族支援」です。保護者が息抜きをしたり一休みすることは、気兼ねすることではありません。施設利用によって短時間でもご自身の時間を確保してください。
また、児童発達支援施設のスタッフは学校や保育園などに出向いて、「地域支援」も行います。クラスのみんなができることも、発達に偏りがあるお子様にとっては、理解できないことも多いです。例えば、幼稚園やおうちで紙に絵を描くと「上手にできたね」と褒められます。学校でいつものように絵を描くと、先生に怒られてしまいました。その紙はテスト用紙だったのです。今までの経験では紙には絵を描くものなので、怒られることがよくわかりません。
「配られた紙を1枚取って後ろに回す」という皆が当たり前にする行動が理解できない児童もいます。渡してもらったのだから全て自分のものだと思ってしまうようです。毎日毎日、わからないことがいっぱいで学校に行くのが嫌になってしまうのも無理はありませんね。
このような困りごとが起こった際に、何処に問題があるのかを、発達支援施設のスタッフと学校の先生が情報共有をして解決策を考えます。

集団療育・個別療育は児童の特性にあわせて選びましょう

障がい児や発達に凹凸のある児童は、それぞれの子どもに合った接し方や環境を設定することで、急激な成長が見られたり、困りごとが改善することもあります。集団療育のほうが向いているのか、個別療育のほうが向いているのか、見学して考えることも良いと思います。
「生活に必要なスキルが身につく」「学校生活を楽しめるようになる」というだけでなく、療育施設で成功体験を積み、自己肯定感を高めることはお子様にとって大きな力になるでしょう。
療育では、専門的な知識を持ったスタッフが保護者や学校の先生などと連携しながら、子どもの成長をサポートしています。最初は抵抗があると思いますが、ぜひ施設や市町村の窓口に相談してみてください。

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