障害者雇用を検討中や障害者が入社予定の企業で「アスペルガーの人にどんな仕事を任せるべきか」とお悩みの採用担当の方は少なくないのではないでしょうか。
実はアスペルガーの人に向いている仕事は概ね決まっており、「ルールが決まっている」「繊細さが求められる」「集中力が必要」といった仕事が挙げられます。
ただ、実際にアスペルガーの人にどんな仕事を任せるかは、個人個人の症状や特性を理解しなければポイントがズレる可能性もあります。
そこでこの記事では、アスペルガー症候群の人に向いている「仕事内容」「職種」「仕事の教え方」について詳しく解説いたします。
アスペルガーの適職は「特性」を知ると見えてくる
まず障害者の採用担当者としてアスペルガー症候群に向いている仕事内容を考えるには、特性や症状を理解する必要があります。アスペルガー症候群は何か1つ特定のことだけが困難なのではなく、以下4つの困難があるためです。
- 【コミュニケーションにおける困難】
- ・人との適切な距離感が分からない
・上下関係なしに馴れ馴れしくしすぎる
・多人数の場で一方的に話してしまう
・敬語を使わないか逆に言葉が丁寧すぎる - 【想像力における困難】
- ・場の空気が読めない
・人の気持ちを察するのが苦手
・冗談が理解できず怒る
・社交辞令を本気で捉える - 【社会適応力における困難】
- ・曖昧な指示やルールを理解できない
・物事はハッキリさせないと気が済まない
・細かい事やどうでもいい事にこだわる
・興味のあることに没頭しすぎる
・臨機応変な対応が苦手 - 【感覚過敏における困難】
- ・光や音、感触などに対する感覚が過敏
・感覚的に馴染まない環境ではストレスが極端に溜まる
・1つの出来事に対して想像や妄想が膨らみすぎる
アスペルガー症候群はコミュニケーション力や想像力に乏しいため、取引先や上司の前で失態を犯してしまうケースも少なくありません。そして非常にデリケートでナイーブなため、几帳面すぎたり傷つきやすい一面もあります。
アスペルガーの特徴に見る得意・不得意な仕事内容
あなたの周りに妙に几帳面なのにコミュニケーションが下手すぎたり、少しのことでストレスを溜めてしまう人はいないでしょうか。もしかするとその人は「アスペルガーの気質がある」かも知れません。
では、アスペルガー症候群の人にはどんな仕事が適しているのか、先ほどお伝えしたアスペルガーの特性から苦手な仕事と得意な仕事を考えてみましょう。
- 【苦手な仕事内容】
- 場の空気が読めず集団行動が苦手 => チームワークが必要とされる仕事
相手の気持ちが想像できず相手との距離感が掴めない => 重要な商談や打ち合わせが必要な仕事
些細な事にこだわり曖昧な指示が理解できない => マルチタスクや臨機応変な対応が必要な仕事
音やニオイ、光に敏感すぎる => 人が多く出入りしたりニオイがキツい労働環境など - 【得意な仕事内容】
- 興味のある分野に没頭しすぎる => 継続的な集中力や高度な専門知識が必要な仕事
小さなことにこだわる => 高い品質や精度が求められる仕事
曖昧なことが我慢できない => 法律や規則等を特に順守する必要がある仕事
感覚的な変化に敏感 => 触感や音の変化、ニオイの嗅ぎ分けが必要な仕事
アスペルガーに限らず発達障害者は突飛な行動を取ってしまうケースが多々あるため、営業職やサービス業は向かないと言われています。
しかし、取引先やお客さんと親しい仲になれば結果が出せる場合もあるため、一概にアスペルガーには営業職やサービス業が向かないとは言い切れません。
アスペルガーの人に任せる仕事は、何が得意で何が苦手かを本人とよく話し合って決めるのがミスマッチを防ぐためにも大切です。
アスペルガーに向いている職業一覧
ここでアスペルガーに向いていると言われる職業を一覧で見てみましょう。ご紹介するのは一般的に向いているとされる職業ですので、あくまで参考程度にご覧ください。
・設計士
・整備士
・機械加工技能士
・ライン作業
・専門事務
・工芸家
・音楽家
・プログラマー
・デザイナー
・カメラマン
・ライター
・弁護士
・税理士
・会計士
・学者
etc
これらの職業を見ると、高い技術力や繊細さが求められる職業が多くなっています。また、アスペルガーは物事を論理的に解釈する能力が高いため、弁護士や税理士といった士業も向いている職業と言えるでしょう。
アスペルガーへの仕事の教え方のコツ
もし障害者の採用担当者がアスペルガーの症状や特性を知らないままなら、障害者雇用で入社したアスペルガーの方との間で最初に障壁になるのが「仕事の教え方」になるでしょう。
アスペルガーは「曖昧なことが理解できない」「マルチタスクが苦手」「1つの事を気にしすぎる」といった特性があるためです。よってアスペルガーに対する仕事の教え方は、「具体性」「1つずつ」「寛容さ」が大事になります。
・写真や画像を使って指示内容を具体化する
・必ずメモを取らせるようにする
・一度に多くの指示や説明をしない
・本人のペースに合わせて小さなこだわりにも付き合う
・不明点や相談はいつでも受けられる体制を整える
・大きな声で話したり叱ったりしない
・理解できなければ、方法を変えて何度でも説明する
・大勢の場で話すのではなく一対一で話せる場を作る
・社内で暗黙の了解になっている事は必ず伝える
アスペルガー症候群の人は決して仕事ができないわけではありません。むしろ得意なことには高い能力を発揮し、社内で誰も気づかない欠陥やミスなどを見つけてくれたりすることもあります。
また、アスペルガーの人のために作業をマニュアル化したりフローを見直したりすると、結果的に既存社員の作業効率もアップさせられるという効果もあります。
障害者雇用で社内の雰囲気が変わったという事例も数多くあるため、これを良い機会と考え、アスペルガーに向いた作業や仕事の教え方を社内で検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール