障害のある方が自分らしく働ける場として機能する就労支援事業所は、近年その取り組みの多様化が目覚ましいほど進んでいます。全国的に見ても、従来の単純作業を中心とした支援スタイルから脱却し、一人ひとりの個性や興味・関心に寄り添った独自プログラムを展開する事業所が増えてきました。
本記事では、札幌市内で特色ある活動を展開している4つの就労支援事業所の取り組みをわかりやすく解説します。
hibino shigoto:「小さな会社」として設計されたA型事業所

就労継続支援A型事業所「hibino shigoto(ヒビノシゴト)」は、単なる就労支援の場にとどまらず、「小さな会社」としての組織設計を全面的に採用したユニークな事業所です。「メンバー」として位置づけられ、努力と成果が明確に報酬や役割拡大につながる仕組みが構築されています。
働く意欲を高める緻密な評価制度の設計
hibino shigotoが特に注目される理由のひとつが、評価制度の充実ぶりにあります。半年ごとに業務査定が実施され、その結果が昇給や賞与という形で具体的に反映される仕組みです。また、毎月行われる「シフト検定制度」では、検定に合格することで勤務時間を段階的に延ばすことができます。
より責任ある立場で活躍したい方には「準社員登用制度」も設けられており、フルタイムでの月給制勤務という選択肢が用意されているのが特徴です。頑張った分だけ評価が返ってくるという循環は、前向きに取り組み続けるための大きなエンジンになっているといえるでしょう。
自分で選べる仕事が広げる可能性
hibino shigotoで取り組める仕事の幅は多岐にわたります。施設内では、官公庁や企業から受託したデータ入力・集計作業、名簿入力、DM発送といった業務に携わることができます。一方、施設外では民泊物件の客室清掃やポスティング作業のほか、ドーナツの製造補助・販売など実践的な業務にも参加できる機会があります。
各業務は自発的に選ぶことができ、未経験の仕事へ挑戦しやすい雰囲気が整えられているのも同事業所の持ち味です。「できなかったことができるようになる」という実感の積み重ねが、自信へとつながっていきます。チームで取り組む日もあれば個人作業の日もあり、その日ごとに変化する環境がコミュニケーション能力の向上にも寄与しているといえるでしょう。
多様な働き方を支える柔軟な制度設計
評価制度やシフト検定など、複数の仕組みが組み合わさることで、一人ひとりの状況に応じた働き方の選択肢が広がります。体調や生活リズムに合わせて勤務時間を調整できる点は、安心して通い続けられる環境づくりにつながっているようです。
藻岩山でのドーナツ販売催事など、施設外での活動機会も定期的に設けられており、いろいろな場面で経験を積むことができる環境が整っています。
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ジョブロジックA型:提携企業に出勤して働く企業実装型A型事業所

就労継続支援A型事業所「ジョブロジックA型」は、「企業実装型」という独自のアプローチで注目を集めています。一般的なA型事業所が事業所内での作業を中心とするのに対し、ジョブロジックでは提携する一般企業の職場に実際に出勤して働くスタイルを採用している点が大きな特徴です。
一般企業の現場に「出勤」するリアルな就労体験
ジョブロジックでは、集合後に職員と一緒に提携先の企業へ向かいます。勤務先は食品工場や物流センターなどで、野菜のカット・袋詰めといった食品工場での軽作業や、ピッキング・倉庫内軽作業などが主な業務内容となっているようです。
実際の企業環境に身を置きながら働くことで、職場の雰囲気や業務フローを肌で体感できます。事業所内にとどまらず、社会の現場に直接踏み出せるこのスタイルは、「働く」という感覚をよりリアルに味わえる環境を提供しているといえるでしょう。
職員が同行するから安心する段階的な参加スタイル
ジョブロジックの支援体制における大きな強みは、職員が提携先企業に必ず同行するという点にあります。作業中に不安なことやわからないことが出てきた場合も、その場ですぐに相談・確認することができます。「作業はできるところから分担し、不安なことはいつでも職員に確認できる」という安心感が、継続的な通所を支えているといえるでしょう。
すぐに雇用契約を結ぶことが難しい方には「非雇用型」という参加形態もあり、個々の状況に合わせた段階的なスタートを実現できます。体調や生活リズムに合わせて、無理のないペースで活動に参加できる環境が整えられているのが特徴です。
市内5拠点で広がる利用しやすい環境
札幌市内に5つの拠点を持つことで、自宅から通いやすい場所を選べる利便性があります。提携先企業も複数あり、業務内容や勤務地の選択肢が広いことも特徴のひとつです。
企業の現場で働くという経験は、実際の職場の雰囲気を知る貴重な機会となっています。職員の同行サポートがあることで、初めての環境でも安心して取り組める体制が整えられているようです。
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アシタハレルヤ:クリエイティブ×デジタルものづくりのB型事業所

就労継続支援B型事業所「アシタハレルヤ」は、札幌市東区に拠点を置くB型事業所です。デザイン・動画制作・イラスト制作・印刷業務といったクリエイティブ業務を軸に据え、「eスポーツ×クリエイティブ就労」という独自コンセプトで運営されています。ゲーム実況や動画制作への参加機会も設けられており、デジタルコンテンツへの親しみが強い方にとっても活動しやすい環境が整えられているようです。
大手企業との実績が裏付けるプロのものづくり
アシタハレルヤを運営する本社・株式会社特需プロジェクトは、有名企業と直接取引を行う広告制作会社です。年間100社以上の新規顧客を獲得する実績を持つ同社と連携する形で、実社会で使われる業務に参加できる環境が整えられています。
実際の業務実績としては、小樽・苫小牧などから東北・近畿方面にフェリーを運航する新日本フェリー様のエレベーター扉印刷・施工、フードデリバリーサービスWolt様の車両用印刷・施工、国家プロジェクトであるウポポイ(民族共生象徴空間)様の飛沫対策アクリル制作・全館施工、美唄市の市民バスのフルラッピング施工などがあります。
自分が関わった制作物が世の中に実際に使われるという経験は、大きな達成感と誇りをもたらしてくれるでしょう。
資格取得が工賃に直結する、明確な仕組み
アシタハレルヤでは、資格取得を後押しする仕組みが整えられています。取得した資格の内容に応じて工賃手当が発生するため、努力の成果が具体的な形で返ってくる仕組みです。また、アシタハレルヤはAdobe製品の資格取得試験会場にもなっており、デザイナーが使うソフトウェアの専門資格を事業所内で取得できる環境が整っています。
各自の個性や状況に合わせてスタートラインを決める方針を採っており、パソコンに触れることから始める人、デザインから挑戦する人、生活リズムを整えながらものづくりに取り組む人など、いろいろなペースでの参加が可能です。
個々のペースを大切にする多様な参加スタイル
地域との連携を重視した社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。2018年から毎年、YOSAKOIソーラン祭りへのチーム協賛を継続しており、2022年以降は「札幌市スポーツ少年団八人制サバンナカップサッカー大会」への協賛も行っているようです。
地域の祭りや大会を支える側に回るという経験は、「社会の一員として貢献している」という実感を育む場となっています。就労支援事業所が単なる「福祉の場」にとどまらず、地域コミュニティの一員として役割を担っているという点は、同事業所の大きな特色といえるでしょう。
モノコトラボ:ハンドメイド×サブカルチャーのB型事業所

就労継続支援B型事業所「モノコトラボ」は、札幌市中央区すすきのエリアに拠点を置くB型事業所です。ハンドメイドとサブカルチャーを組み合わせた独自の取り組みで注目を集めており、アクセサリー制作・雑貨造形制作・コスプレ衣装製作という3つの柱が事業所の個性を際立たせています。
「好き」を活かすアクセサリー・雑貨・コスプレ衣装製作
モノコトラボの大きな特徴は、「好き」や「得意」を活かせる作業内容にあります。アクセサリー制作では、ビーズをパーツに通す作業やレジン液をシリコン型に流し込む作業など、初心者でも取り組みやすい工程から始めることができます。
雑貨・造形制作ではいろいろな素材を組み合わせたオリジナル商品づくりに挑戦でき、コスプレ衣装製作ではミシンを活用した縫い物作業など、より専門的な技術を磨く機会もあります。製作した商品は実店舗での販売も行われており、自分の手で作ったものがお店に並ぶという体験は、かけがえのない喜びとなっているようです。
通所・在宅両対応の柔軟な参加スタイル
モノコトラボでは、通所による参加に加え、在宅での業務参加にも対応しています。体調や生活状況に合わせて参加形態を選べるこの取り組みは、通所が難しい日があっても活動を継続できる環境を生み出しているといえるでしょう。
ハンドメイドという作業特性上、在宅であっても同質の業務に取り組みやすいという利点があります。自宅という慣れた環境で、自分のペースでものづくりに向き合えるという点は、体調の波がある方にとっても安心して関われる条件のひとつとなっているようです。
すすきのの好立地で広がるものづくりの可能性
製作した作品は実店舗で販売されるほか、サブカルチャーに関心を持つ方々とのつながりも生まれています。ハンドメイドとサブカルチャーという組み合わせは、従来の就労支援事業所にはない独自の魅力を持っており、「こんな事業所があるのか」と新たな発見につながることもあるでしょう。
アクセサリーや雑貨、コスプレ衣装といった多様な制作活動を通じて、一人ひとりの「好き」を大切にしながら、ものづくりの楽しさを実感できる環境が整えられています。
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まとめ
今回ご紹介した4つの事業所は、それぞれが独自の哲学と取り組みを持ちながら、札幌市の就労支援を多彩な角度から豊かにしています。評価制度で働く意欲の好循環を生み出すhibino shigoto、企業の現場に直接出勤するジョブロジックA型、大手企業との実績を持つクリエイティブ事業所・アシタハレルヤ、そしてハンドメイドとサブカルチャーを融合させたモノコトラボ。いずれも、一人ひとりの個性や特性としっかり向き合いながら、その人なりの「働く形」を一緒に作り上げようとしている点が共通しているのです。
執筆者プロフィール

ウェブ・コピーライターとしてクライアントワークを中心に活動中。