相談支援事業所なしでは使えない?就労系障害福祉サービスの使い方

相談支援事業所なしでは使えない?就労系障害福祉サービスの使い方

障害のある人が「働きたい」と考えても、いきなり一般就労をするには不安がありますよね。
このような人は、まず就労系の福祉サービスを利用するのがひとつの方法です。
就労系福祉サービスを使うときに、必ずと言っていいほど「相談支援事業所」を利用することになりますが、なぜ相談支援事業所を同時に利用する必要があるのでしょうか。
本記事では、就労系福祉サービスを利用する際、なぜ同時に相談支援事業所を使うのか、2つのサービスの関係性についてお話しします。

就労系福祉サービスとは何か?

就労系障害福祉サービスには主に3つあります。
就労移行支援事業所就労継続支援A型事業所就労継続支援B型事業所です。
就労移行支援事業所とは、障害のある方が一般企業への就職を目指すための支援を提供する施設です。
職業訓練や就職活動のサポート、職場定着の支援などを行い、働き続ける力を身につけることを目的としています。

就労継続支援A型事業所とは、障害のある方が雇用契約を結んで働くことができる福祉サービスです。
一般企業での就労が難しい方に対し、最低賃金が保証された環境で働く機会を提供し、福祉職員が利用者について職業スキルの向上を支援します。就労継続支援B型事業とは、障害や難病のある方が、一般企業での雇用契約を結ばずに働くことができる福祉サービスの一つです。A型事業所とは異なり、雇用契約を結ばないため、最低賃金の保証はありませんが、利用者は自分のペースで働くことができ、作業の対価として「工賃」を受け取ることができます。

対象者は、いずれも18歳~64歳の身体・知的・発達障害の人と難病のある人です。
障害があっても「働ける可能性のある人」が対象になります。

参照:就労移行支援サービスとハローワークの違いとは?メリット・デメリットを解説 – 福祉.tv NEWS – 福祉を考えるメディア
参照:就労継続支援A型事業所とは?支援内容やB型事業所との違いなどを解説 – 福祉.tv NEWS – 福祉を考えるメディア

サービス利用のために必要なもの

就労系障害福祉サービスを利用するためには、まず「障害福祉サービス受給者証(受給者証と略します)」が必要です。
受給者証をもらうためには、「サービス等利用計画」という、「あなたが就労系障害福祉サービスを利用するための計画」が欠かせません。
この「サービス等利用計画」を作るのが相談支援事業所になります。

相談支援事業所の役割としては、以下が挙げられます。

・最初に受給者証をもらうための「サービス等利用計画」を作ること
・障害福祉サービスの支援を見守っていく(「モニタリング」と言います)こと
・ほかの障害福祉サービス(たとえばグループホームの利用や訪問看護)などをコーディネートし、地域のサービスとの連携の中心になること

参照:相談支援事業所って何?どんなサービスがあるの? – 福祉.tv NEWS – 福祉を考えるメディア

なぜ「相談支援事業所」が必要なのか?

なぜ就労系福祉サービスを利用する際に、第三者である「相談支援事業所」が登場するのでしょうか。

相談支援事業所は「本人中心の支援」を守る制度

障害福祉サービスは、「障害者本人中心」の利用計画を立てて進めていく制度です。
よくある誤解として、「自分で申し込めば障害福祉サービスが利用できる」といったものがありますが、就労系障害福祉サービスが本人に対して不利益な支援をしたり、支援が偏らないように、サービスがしっかりとなされているか見守る立場を置くことになっています。
そのため、公平で中立的な支援を保障する立場として、第三者である相談支援事業所が置かれています。
ただし、自治体によっては相談支援事業所の予約がいっぱいで数ヶ月待ちというところもあります。
そのため、一時的に「セルフプラン」といって、自分で立てた利用計画を役所に提出して就労系障害福祉サービスをスタートする人もいます。
ですが、原則「相談支援ありき」となっています。
「セルフプラン」をつけて受給者証をもらっても、あとで相談支援事業所にサービス等利用計画を作ってもらい、計画の見守りをおこなってもらう形をとる自治体がほとんどです。

相談支援事業所と就労系障害福祉サービスとの連携の例

【B型事業所からA型事業所へ、段階的な就労支援】
精神障害のあるCさん(30代)が、長期間ひきこもっていましたが、親の死をきっかけに障害福祉サービスにつながりました。
最初は訪問介護からサービスを開始したCさんですが、状態が安定してきて、生活リズムの構築と日中活動の幅を広げることを目的にB型事業所を使うことを相談支援専門員が提案しています。
B型事業所への通所を通じて、Cさん自身の生活リズムが改善し、就労意欲も出てきました。
定期的な見守り(モニタリング)を通じて、Cさんは、自分で少しでも稼げるようになりたいと話していました。
そこで、相談支援専門員がB型事業所と連携しながらステップアップのタイミングを探っていきました。
B型事業所に通所して1年経ったとき、CさんはA型事業所に移ります。
CさんはA型事業所への週5日勤務が可能になり、将来的には一般就労も視野に入れられるようになりました。
相談支援事業所は継続してCさんの見守りをおこなっています。
タイミングをみて、Cさんは障害者雇用で働いてみることも検討したいと話しています。

相談支援専門員と関係を築いておくメリット

相談支援事業所の相談支援専門員は、地域の障害福祉サービス等とつながっています。
相談支援専門員と関係を築いておくことのメリットは以下が挙げられます。

・就労系サービス以外でも障害者本人が地域の訪問看護、ヘルパー等が必要であればそのサービスを組み込むことができる
・一人暮らしをしたい場合は、グループホームの紹介も可能
・就労系でもサービスからほかのサービスへ移行するときに無理なくステップアップするお手伝いができる

このように、相談支援専門員と関係を築いていくことで、障害者本人が地域で望む生活に近づけていくことができるのです。

最初の一歩を踏み出すために:相談先と進め方

相談支援事業所との出会い方

①就労系障害福祉サービスを利用するときに、直接、市区町村の障害福祉窓口に行くよう言われます。
ここで利用できる相談支援事業所の一覧をもらって、相談支援事業所を探すことになります。

②就労の相談をすると、障害者就業・生活支援センターから地域の相談支援事業所とつながることを提案されます。

③学卒の場合、学校の先生などから相談支援事業所につながることもあります。

相談支援専門員と面談時に話すポイント

相談支援専門員にお話ししておいた方が良い点について、お伝えします。

・現在困っていること。どんな目標で進めていったらその困りごとが打開できるか。
・将来の希望。どんなふうに自分の希望をかなえていきたいか。

あらかじめこの2点を伝えておくと、相談支援事業所ではこのニーズが満たせるかどうか検討してくれます。
ニーズが満たせそうであれば、地域のどんな資源を使えば良いのかも考えてくれます。
相談支援事業所は「地域の資源と障害者本人のパイプ役」となってくれることでしょう。

就労系障害福祉サービス利用までの流れ

①就労系障害福祉サービスに見学に行きます。

②受給者証発行のための調査を役所でおこないます。

③サービス等利用計画を作るために、相談支援事業所を利用し、ニーズや目標の確認をおこないます。

④受給者証が手元に届いたら、就労系障害福祉サービスと契約し、就労系障害福祉サービスへの通所スタートとなります。

まとめ

就労系障害福祉サービスを使うには、原則「相談支援ありき」となっています。
「障害者中心」の支援を守るための制度として、相談支援事業所が中立的な立場で支援をします。
就労系障害福祉サービスの支援を相談支援事業所が見守り、滞りなく支援が進んでいるか一緒に見てくれることになります。
そして、就労系障害福祉サービスが就労の部分をみるのであれば、相談支援事業所は障害者が地域で過ごしていくために全人的に支援していくという役割分担を担うことになるのです。
相談支援を軸に、ぜひ地域生活の中で、自分らしい働き方を一歩ずつ探していきましょう。

執筆者プロフィール

TOPへ